EP1-1.
第一章 ~ゲイルストライク プロジェクト(GSP)始動~
過去の大戦にて大きな損害を被ってしまった東洋の国々は、平和な世界を築いていくために協力し合う意志を固めた。各国はそれぞれ自治を維持しつつ国を統合し、新たな国「西太平洋連合国(Western Pacific Confederation:通称WPC」が発足し、国の発展に努めた。
WPCが出来た当初は、それぞれの国が話す言語を統一させるのに困難を極めたが、テクノロジーの進化により、すぐに意志疎通もスムーズに出来るようになった。
また、それぞれが持つテクノロジーを駆使して人々の生活に役立つ物を開発し、貧富の差を少なくする努力をコツコツと続けてきた。
現在、国が設立されて49年。半年後に行われる50周年祭に向けて、国中は大いに盛り上がっているところである。
そんな色々な物が発達した国のある都市から始まる物語である。
「日本支部 九尾那市」
東京から近いこの都市は、食住に注力してきた都市であり、自然との協調で環境もよく、また人も多く移住してきたことで、生活するには何も困らないほどに発展した都市である。
その都市では国にとって非常に重要な研究が行われているが、それらは内密に行われているので人々は知らずに生活をしている。
ドキューン、ドキューン!
建物の中で銃声が響き渡っている。だが人の悲鳴は聞こえない。
バン、バン、バン!と次々と銃弾が放たれ、爆発音も鳴っている。しばらく銃声と爆発音が鳴り響いた後に、ピロリローンという電子音が聞こえ、銃声が聞こえなくなった。
そう、音を発生させていたのはゲーム機からだったのだ。ゲーム機の画面は「HILEVEL CLEAR!」と表示されている。
「……もう終わりか。」
紺色のブレザーを着た男性がつまらなそうに呟いた。見た目で判断すると、高校生くらいの年齢に見える。
「すげえ、見たことないくらいのハイスコアだぜ。」
「俺なんて、このレベルをクリアする事だって出来ないのに。ノーダメージでクリアするなんて信じられない!」
男性のプレイ姿を見ていた周囲の人達がざわめいた。
「所詮はゲーム。本格的な物だと噂で聞いて興味を持ったが、やっぱりつまらない物だったか。」
男性は銃の形をしたゲームコントローラーを銃座に戻す。
「あの、もう一度見せてもらえませんか?今度はより実戦レベルの「SUPER LEVEL」で。」
後ろで見ていた女性が男性に声をかける。女性はとても興味津々な感じで、目が輝いていた。
男性はチラッと女性を見て、少し考える時間が流れる。
「いや、このゲームには飽きてしまったので続けません。」
「え?でも、もっと難しいレベルだったら、今回の様にはいかないかもしれませんよ?」
「スーパーレベルになっても結果は見えています。やっぱり実戦の方がいい…。」
男性はギャラリーから離れていき、ゲームセンターを後にした。
「あっ、スーパーレベルは俺がしてみようか?」
近くで見ていた男性が女性に声をかける。
「いえ結構です。あ~残念、せっかくすごいプレイ動画になると思ったのになぁ…。」
女性も肩を落としながらその場を離れた。
ゲームセンターがあるビルから出て、街を歩く男性。街ではスムーズに走り渋滞しない車、商品を沢山運びながら飛んでいるドローン、老人や子供達の手伝いをするロボットなど、様々なテクノロジーが発達して便利に利用されている。
「俺はこんな所にいたくない…。」
男性はそんな発展した光景を見ながら、自宅へと向かっていた。ビル街から遠ざかり、駅に近づいた所で男性は声をかけられた。男性は興味を無さそうに振り返り、姿を確認する。
「こんちわっ、咲原君。」
「あんた、いつもこの時間にこの辺りを歩いているのを見かけるけど、またゲーセン?」
咲原と呼ばれた男性に声をかけてきたのは、白のブラウスに紺チェックのスカートを履いた女子高生に見える二人組だった。
「篠塚 智里と水野 零奈。」
面倒くさそうに返答する咲原。
「うわ、きもい。フルネームで呼んでほしくないんですけど?じゃあ、私達も咲原 洋人と呼ぶわ。」
「勝手にすればいい。」
「零奈ちゃん、フルネームを毎回呼ぶのは辛いよ。」
「え?…確かにそうね。とにかく咲原君、名前で呼ぶことは禁止ね!」
零奈はビシッと洋人に指をさして話す。
「何でもいいが、特に用事も無いのにどうして呼びかけた?」
「同じ学校に通うクラスメイトだし、呼びかけるくらい良いでしょう?」
「問題は無いが、女子生徒が男子生徒に用が無く声をかけるのは日常では無い気がするが?」
「零奈ちゃんは咲原君が気になっているんだよ。ちょっとカッコいいって言っていたし。」
智里が少し小さい声で話す。
「コラコラ!そんな訳ないでしょう!」
「俺は恋愛なんて興味が無い。つまらない妄想はやめておけ。」
「なっ!?少し容姿が良いからって生意気な事言うじゃないの。いいわ、覚悟しておきなさい、絶対に興味を持たせてやるんだから!」
「おお!零奈ちゃんがやる気になった!」
「面倒な事には巻き込まれたくはないんだが…何を言っても聞かなそうだな。」
「ええそうよ。あんたが私を気にするまで付き合ってもらうんだからね!」
「やれやれだ、まあ勝手にしろ。」
「そうと決まったら作戦検討会よ!ちさ行くよ!」
零奈は智里の手をグイっと引っ張って、街中へと向かう。
「わっ、零奈ちゃんちょっと痛いよ。じゃあね咲原君、また学校で。」
智里は洋人に向かって手を振りながら、零奈に引っ張られていった。
「…久しぶりに日常的な会話をした気がするな。」
洋人は二人を見つめながら、そう呟いた。




