表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/50

第24話 銀狐、悩む 其の四



「……っ」


 

 白霆(はくてい)の何気ない言葉に、灰銀黒の耳がぴんと立ち、嫌でも顔が熱くなる。そんな(こう)の顔を見て、良かったと、優しい口調で白霆が言った。


 

「顔色、良くなりましたね。本当に良かった」


 

 彼の手が、晧の様子を見るように頬に触れる。その熱さが心地良い。閉じた心の蓋が溢れそうになるのを晧は何とか堪える。

 ふと晧は思った。


 

「昨日、別室にしたのって……」  

「……ええ。同室にしてしまったら、貴方が私を気にして休めないと思いましたので」



 彼の言葉を全て信じたわけではないが、もしも本当なら白霆は自分のことを考えてくれていたのだ。そう思うだけで温かいものが心内を満たしていく。

 だが。


 

「もしかして……寂しかったですか?」

「なっ……!」


 

 そんな風に聞かれて、顔に更に朱が走った。


 

「寂しいわけ、ないだろうが!」 

  

 

 思わず、くわっと吠えながらそんなことを言う晧を、白霆は驚いていたが須臾の内にくすりと笑った。

 お見通しだと言わんばかりに。

 こんな自分はいつもの自分ではない。

 だが何の説明もなく目の前で心の扉を閉めるような真似は、二度とごめんだと思う自分がいる。



(いや……同室がいいとかそういうのではなく!) 



 湧き上がった感情が、図星だったが為の苛立ちなのかよく分からない。

 だが白霆が自分の体調を気にしてくれていたのは確かだ。 

 思えば自分の中の心の葛藤が齎した結果だ。

 白霆には何も関係がないというのに、彼の気遣いに対して八つ当たりをしてしまったようなものだ。



「……その……白霆は俺のこと心配してくれたのに……声を荒げて悪かった」

「……っ、いえ……」


  

 いつになく辿々しい口調の白霆が気になって、晧は様子を伺うように彼を見上げた。

 そこで見たものは、片手で口を覆いながら顔を紅潮させた彼の姿だ。


 

「……っ」


 

 どこか飄々とした印象を持っていた白霆の意外な姿に、釣られて晧の顔が更に赤くなる。

 お互いに何も言えないまま、ただただ見つめ合う。

 何かを言わなければと思うのに、言葉にならない。


 

「あ……」


 

 それでも互いの間に流れる空気を何とかしたくて、晧が何か言いかけたその時だった。



 

 ──……定です! 今朝麗海から届いた新鮮なお魚、お刺身でも焼き魚でも美味しいですよ! 豪華特別朝餉! 限定十食! はいあとニ食ですー!


 


 食事処の方向から聞こえる元気な声は、昨日の魔妖の少女のものだろうか。

 だがそれよりも。


 

「──ニ食! ニ食だって! 白霆! 豪華特別朝餉!」

「それはいけません。急ぎましょう、晧」


 

 いつの間にか普段通りに話すことが出来て、晧はほっとする。

 二人は食事処に向かって走り出したのだ。

  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ