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第11話 銀狐、夢を見る 其の一



 きゅうきゅうと幼い竜の鳴き声が聞こえる。


  

 あれは確か里の近くの森へ、まだ小さかった白竜と一緒に遊びに行った時のことだ。

 とても美味しい果実の成っている木を見せたくて、食べてほしくて白竜を案内した。白竜は果実を見てそれは喜んでくれたが、なかなか竜爪ではうまく皮が剥けなかった。晧が代わりに皮を剥いて食べさせてやると、白竜は大層喜んだ。きゅる、と嬉しそうに鳴いて美味しそうに食べてくれる白竜が、愛おしくて可愛らしい。

 早く大人になって俺の元においでと願いを込めて、晧はまだ短い口吻に口付けを落とす。すると白竜はまた嬉しそうにきゅるきゅると鳴くのだ。


 だが森の中ではしゃぎ過ぎてしまったのか、もっと白竜の喜ぶ顔が見たいと頑張り過ぎてしまったのか、晧はその日の晩に熱を出した。

 本当ならずっと夜も一緒にいられるはずだった。一緒の寝台で色んなお話をしながら寝ようと約束をしていたというのに。熱が出てしまったせいで当然寝台は別だ。しかも里に数日滞在する予定だったというのに、明日には帰ってしまうのだという。


 久し振りに会えたというのに。

 晧は熱を出してしまった自分が嫌で仕方なかった。そして帰ってしまう白竜に、寂しくて悲しい気持ちが湧いてくる。

 泣いて泣いて泣き疲れて、晧はいつの間にか寝てしまった。ふと目を開けると、熱がうつってはいけないからと、この部屋に入ることを禁じられたはずの白竜が寝台の縁で眠っていた。晧が目覚めたことに気付いた白竜が、悲しそうにきゅうきゅうと泣く。

 

 大丈夫、大丈夫だから、ちび。

 ちび、だから泣かないで。

 俺まで悲しくなってしまう。


 ふたりで泣いてしまっては、大人達に見つかるのも時間の問題で……。



       

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