第6章
ケンとサラは気が付けば、コンピュータールームのような所で寝かされていた。
「どこなんだろう?ここ?」
ケンが振り返るとそこに宇宙人の様な人物が立っていた。目が黒目で大きくつりあがっており、頭は大きくて、身体は貧弱、肌の色は灰色だった。
宇宙人は言った。
「特殊能力をこんな事に使ってもらっては困る」
「ああ、あなた確かクリルさんだったね」
「我々はおよそ200万年前に人類を創生した。我々は君たちにとっては神も同然である」
クリルは2人を一瞥すると、その大きな瞳をさらに広げて言った。
「我々は火星人だ。君たち人類の指南役だ。人類史を裏で操って来た。今世界は資本主義陣営と社会主義陣営とに分かれている、我々はこの国、資本主義陣営の中心となっている、メリカン共和国の大統領と謁見し極秘に密約を結んだ。対する社会主義陣営の核となるローゲシア連邦の首脳は金星人である爬虫類型のレプティリアンと密約を交わしている。我々とレプティリアンとは対立関係にある。我々は君達人類を良心的に導こうとしているが、レプティリアンは人類を堕落させ、家畜化しようとしている。双方とも人類に戦争させ、核兵器による存亡を望んでない。それで我々は人類の指導書となるバイブルの巻末に恐怖の予言を残した。人類がハルマゲドン、つまり世界最終戦争によって滅亡し、選ばれた者だけで新しい世、エデンの園が迎えられるという。実際はこの予言も嘘だったのだ、そう、神のついたたった一つの嘘だったのだ!」
クリルは目を細め更に言った。「我々は、この恐怖の予言を残すことによって核戦争を防いでいる、今までにも核戦争の危機は何度かあったが全て回避されている。エデンの園というのはハルマゲドン無しでそうなるのだ」
「エデンの園、て一体何なの?」とサラが訊いた。
「科学技術の発展により、脳内にICチップが埋め込まれ、人々はそのネットワークで繋がる、つまり電脳世界、人々はバーチャルリアリティーの世界で暮らすことになるのだ。所謂エデンの園ということだ」
「それってクリルさん達もそうなの?」
「そうだ、我々もバーチャルの世界で暮らしている。今君達に見せているのは仮の姿だ」
「それであたし達に何をしろ、ていうの?」
「レプティリアンの計画する思惑を阻止して欲しい。彼らは人類を堕落させ、家畜化しようとしている。その為にスリーメイソンという秘密結社を作り、その計画を推進しようとしている」
「スリーメイソン、確か俺の親父がその秘密結社のメンバーだったんだ」とケンが言った。
「彼らは人類に悪い事を吹き込み、人類史を裏から操ってきた。自分たちの遺伝子を人類に注入させ、その遺伝子を受け付いた者はその能力により、物凄い発明や事業をこなしてきたのだ」
クリルは顔をあげた。
「私達は君達に特殊能力を与え、スリーメイソンに対する戦士として働いてほしいのだ!君達にある人物を紹介しよう」
奥の方から背の高い50代前半位の男性が現れた。
「彼の名前はサブローという。君達と同じように特殊能力を持っている人だ」
「初めまして」
「彼の職業は弁護士だ、君達は彼の自宅の2階に住んでもらう」
「あっ、初めまして」
「初めまして」
ケンとサラは夫々頭を下げ、挨拶をした。
「先ず君達にしてほしい事は、今まで奪った金を元に戻して欲しい」とサブローは言った。
「でも…」
「心配するな、私がかけあって謝罪する、それでいいな?」
「はい、わかりました…」とケンは渋々頷いた。