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第4章

 サラは降りしきる猛吹雪の仲を歩いた。頬や手が冷たくなっていた。

 もうすぐすれば施設に帰り着く、それまでの辛抱だ。

 サラは学校からの帰宅途中だった。早く施設に戻って暖かいストーブにあたりたい。


 サラは孤児だった。物心ついてから既に児童養護施設にいた。サラは赤ちゃんの頃に施設の前に捨てられていたらしい。

 サラは施設に戻ると世話人のおばさんが「まあ、サラちゃん、こんなにビショビショになって、早く着替えなさい」と言った。


 やがて夕食の時間になった。決して豪華ではないが、粗末ともいえない、それなりに美味しい食事だった。

 その夜、サラは寒かったので布団に包って寝た。


 「サラ、外に出なさい」

 その声はサラの心の中に直接響いてきた。

 サラは寒かったがその声の言われるがままにした。

 外に出ると巨大な円盤が眩い程に光って宙に浮かんでいた。その円盤の中央の方から人と思しきものがエスカレーターのようにゆっくりと降りて来た。その人と思しきものは子供位の背丈しかなく、頭が大きく、目は黒目で大きくつりあがっていた。肌の色は灰色で、身体は貧弱だった。2人いた。

 「こっちに来なさい」

 またもサラの心の中に直接響いてきた。

 サラは言われるがままに近寄っていった。やがてその灰色の人物はサラの腕を掴み、エスカレーターのように上えと上がっていった。手の感触は冷たかった。


 その腕を掴んだ灰色の人物は言った。

 「私の名前はクリルという。今からお前に特殊能力を授ける」と言った。

 サラは手術台のようなベッドに寝かされ、天井のライトが突然光った。眩い程だった。光はサラの身体を包み込み、身体が温かくなり、火照りだした。

 やがて光はサラの身体から遠ざかり、サラは起き上がった。

 「これでお前に特殊能力を与えた。どういう能力かは息を止めてみることだ」とクリルは言った。

 クリルはサラの顔をじっと見つめた。その目を見るとサラは急激に眠くなりだした。


 サラは気が付いてみると施設のベッドの上に寝かされていた。朝だった。

 昨夜の出来事は夢だったのか?サラはまんじりとしないまま、朝食を摂るため食堂に向かった。

 厨房の職員達が、スープの入った皿を配っていた。女の子がスープ皿を持って自分の席に向かっていた。ところがその女の子は躓いてしまい、スープの入った皿を床に溢すところだった。サラは息を止めた。すると周りが静止画像のように止まってしまった。スープがこぼれるところもまるで写真の様に止まってしまったのだ。

 サラは息を吐きだした。すると周りの情景も再び動き出し、スープ皿はガシャンと音を立てて割れてしまった。

 その女の子は泣き出し、職員が雑巾を持ってきて床を拭いた。

 昨夜あった出来事は夢じゃない、本当だったんだ、とサラは改めてそう思うのだった。


 

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