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有り余る転生枠

作者: にー

俺は株式会社NEXTの営業部で働くごくごく普通の天使だ。

最近は今までで一番と言ってよいほど忙しい。

それもこれも上層部が転生枠を増やしすぎたことにある。

いくら今転生が流行っているからと言っても、人間の年間死亡数は約45,400万人、うちの会社の利用者数は約1,000万人ほど、更にその中で転生を選ぶ利用者は4分の1程度。

なのに上層部の奴らは「今年からもっと転生枠増やすから!」って大量に増やしたあげく余らせやがった。その責任を取るのは営業部だ。死にものぐるいで契約を取らなきゃいけねぇ。

今日も部署全体で契約を取りに行く。あぁ、めんどくせぇ。


今日、俺が向かったのは天国だった。天国には気前の良い客が多い。地獄とは大違いだ。

「天国22番街6丁目…ここか。」

羽を破れないようにスーツの中にしまい、チャイムを鳴らした。

ドアの奥から「はーい」と声がした。

「突然すみません〜NEXTの者です〜」

俺が外向きの声でそう言うとドアがガチャと開き、愛想の良い婦人が出てきた。

「あら〜NEXTさん!あぁ〜ごめんなさい!まだ息子来てないのよ〜」

申し訳無さそうな顔でそう言われるとつられて眉間にシワが寄る。

「大丈夫ですよ!今回は商品を紹介しに参っただけですので!今お時間大丈夫ですか?」

婦人がうんうんと頷くので、中にお邪魔し、バックから真っ白な板を取り出して、婦人に見せる。

「今、転生が流行ってるの御存知ですか?」

婦人が顔を傾けながら言う。

「はぁ〜。今、転生が流行ってるのね〜」

「そうなんですよ!特に異世界転生というのが流行っていて、その制度を息子さんにどうかな〜と思いましてぇ。」

真っ白な板に説明用の画像が浮かび上がる。

「今、加入していただいているのが、天獄パックでして、閻魔様が天国か地獄か決めるパックなんですけど、今回お持ちしたのは転生パックでして、」

婦人が顔をしかめて言った。

「息子に会えないんですか?息子と死後は天国でゆったり過ごそうと思ってたんですけど。」

俺は慌てて訂正する。

「いえ!もちろん天国で過ごされたあとに転生パックに加入されても構いません!」

婦人の安心したような顔を見て、説明を続ける。

「転生パックには2種類のコースがありまして、まず1つ目が現世転生コース。そして、2つ目が異世界転生コースになります。」

白い板を撫でると画像が変わり、図が出てくる。

「異世界転生コースは選べるオプションの種類が豊富でして、」

婦人の顔色をうかがいながら話していると少し曇ったのが分かった。

「…どうかなさいましたか?」

婦人は一瞬ビックリしたような顔をして、こんな質問をしてきた。

「あの…その異世界?っていうのは安全なの?天国にもその異世界から来たような方がいらっしゃるけど、ドラゴンとか魔法とか物騒な話をよく聞くから。」

天国と地獄はどの世界でも共通なので、いろいろな世界の人がいる。中にはもちろん魔法などがあるいわゆるファンタジー世界の人もいるのでそういうとこから話を聞いたのだろう。俺は精一杯の営業スマイルで答えた。

「ご安心ください!転生パックはお客様に安心して転生してもらうために保険込みとなっております。また、オプションでも安全性を高めることが出来まして、」

画像をタップして続きを婦人に見せる。

「1つ目のオプションが超能力オプション。こちらは、お客様が異世界に転生された際に何か一つ超能力を使うことができるオプションになっております。」

婦人が感嘆の声を漏らしたのを聞いて、続ける。

「2つ目が無敵オプション。こちらは先程お客様が心配されていたドラゴンなどの魔物でも毒などの魔法でも死ぬことがないオプションとなっております。」

婦人が目を見開いて驚いたのが分かった。

「そして、こちらは現世転生コースにも含まれるオプションなのですが、記憶はそのままで転生ができるオプションもございます。」

その他の説明も俺はテンプレートに従い、婦人に話した。婦人は興味津々で聞いてくれて、手応えのある営業となった。

そして、息子さんの意見を聞いてから、決めたいということで、また半年後来ることにした。


__半年後__

チャイムを鳴らすと、はーいと婦人とは違う好青年の声が聞こえた。

「どうもー!NEXTです!」

「あぁ!どうも!母から話は聞いています。どうぞ、上がってください。」

この天国には深いシワがついた死者が多いのだが、不慮の事故や病気などでこのように若い見た目の人も少なくはない。しかし、死因を聞くのは失礼とされているので、俺は営業スマイルを絶やすことなく、お邪魔します。と入った。

婦人からほとんど聞いているらしく、お金の話など細かいところを話した。

説明を終えると、5年後、息子さんは異世界転生する予定だと話してくれた。

ありがとうございます!と頭を下げ、俺は会社に戻った。帰る頃にはもう夕方になっていて、この頃ルーティーンになってしまったため息をして帰った。

明日は地獄にいかなければ…。

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