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ジョシュアの受難「消えた妻の謎」

少しずつですが、更新していきます!

ジョシュアの番外編も佳境です。

屋敷の俺の書斎には、蝋燭の灯がほのかな光を放ち、この静かな空間を満たしていた。壁一面の書棚は重厚な書物で埋め尽くされ、中央の机は散らばる書類で溢れかえっている。ここは、ジャン・グリ・ノーマンの謎を解き明かす戦場だ。


「トビアス、集めてきた情報をもう一度確認するぞ」


俺は机に広げた書類に目を落とす。

トビアスは字が十分に書けない。

だから、コイツが港や酒場で収集したノーマンに関する情報を、俺が丹念に聞き取り、記録しているのだ。


「はーい、ジョシュア様! 僕が聞いてきたこと、ちゃんと漏らさずメモしてるか確認しますね~!」


トビアスはリラックスした様子で俺の隣に座ると、がりがりと黒パンをかじり始めた。


「おい、パンくずをそこかしこに落とすな! と、いうか食うな!」

「すいません、すいません~。でも、今日は倉庫で忙しくて、昼食を食べる時間がなかったんです」


トビアスは言い訳しながらも、パンを食べ続ける。


「まったく……あとでメイドに言って残り物を分けてやるから、食うのは後にしろ」

「はーい、分かりました! ちなみにジョシュア様、今日の夕食はなんだったんですか? 僕、ハムが……もがっ⁉」


トビアスが何か言いかけると、俺はコイツの口に黒パンを押し込んで黙らせた。


「ええい、静かにしろ! 始めるぞ! まず一人目の妻、ローザリン・フェアチャイルドからだ」


書類を一枚ずつ捲りながら、俺は心の中の苛立ちを抑えつつ、冷静に情報を読み上げた。

書類には、ノーマンの六人の前妻たちの詳細な情報が記されている。彼女たち一人一人の背景を調べることで、ルチカとノーマンとの接点が見えてくるはずだ。


この情報を集めるために、俺とトビアスは町中を駆け巡り、様々な人々から話を聞き出した。驚いたことに、間抜けにしか見えないトビアスの情報収集能力は、予想以上に高かった。その抜け目のなさに、俺は内心驚いている。


トビアスとの活動は、俺にとって意外な発見をもたらし続けている。

さて、あとはこの俺に対する尊敬を態度と言葉で示すように教育しなければな。


俺は心の中で彼女たちの経歴を再検討し、状況を理解しようとした。

それぞれの妻たちの物語は、ノーマンの過去に新たな光を当てている。

これらの情報が、謎解きの鍵となるだろう。


【一人目の妻】

・名前:ローザリン・フェアチャイルド

・簡単な経歴:大商人の娘で、深窓の令嬢。

・死亡原因:結婚後、二年で謎の病死。


【二人目の妻】

・名前:ソフィア・ドゥロワ

・簡単な経歴:庶民出身だが、その美貌で上流社会に入り込んだ女性。

・死亡原因:結婚後、一年も経たぬうちに転落事故で亡くなる。


【三人目の妻】

・名前:マルガレット・ウィンチェスター

・簡単な経歴:貴族の未亡人であり、彼女自身も政略と策略に長けている。

・死亡原因:結婚後三年目、自室で毒物による自殺。


【四人目の妻】

・名前:ヴェロニカ・ブラックウッド

・簡単な経歴:不遇の劇場の女優。センセーショナルで生き生きとした人物。

・死亡原因:結婚して半年後、不慮の火事で亡くなる。


【五人目の妻】

・名前:リリー・アッシュフォード

・簡単な経歴:有名な芸術家の娘。彼女はモデル。そして画家としても活動しており、ノーマンは彼らのパトロンだった。

・死亡原因:結婚して二年目、海辺で溺死。


【六人目の妻】

・名前:エリザベス・ディアーデム

・簡単な経歴:魔術師の貴族の一家に生まれたが、秘石の研究者となる。

・死亡原因:結婚して一年後、突如失踪し、後に遺体として発見される。


「うわあ~……こうやって集まった情報を改めてみると、みんな結婚して三年以内には死んじゃってるんですね~。ノーマン総裁、奥さん達に飽きちゃったんですかね?」


トビアスの軽薄な一言が室内に響く。

一人一人の妻たちの情報を丁寧に読み上げ終えると、トビアスの言葉に対する俺の反応は内に秘めた重い沈黙だった。


俺の心は、深い暗い海に沈んでいくかのように、不穏な波に飲まれていた。

特に、エリザベス・ディアーデムの名前が、強く心に刻まれて離れない。


秘石の研究者だった彼女は、他の妻たちとは一線を画す存在だ。

その他の女たちはノーマンの典型的な好みや社会的な利益に基づいて選ばれているが、エリザベスだけは、その知識と専門性で選ばれた可能性がある。


また、エリザベスの死因は「突如失踪し、後に遺体として発見される」という謎めいたものだった。

この事実は、他の妻たちが自然死や不幸な事故として片付けられているのと対照的で、俺の好奇心をさらに煽る。

彼女の死にはもっと深い理由、暗い秘密が隠されているように思えてならない。


そして、驚くべきことに、エリザベスの名字がディアーデムであることが、俺の関心を一層引く。

まさに一週間後に控えたディアーデム家の令嬢との食事会。その令嬢はエリザベスの姪だったのだ。


「……もしやノーマンは、秘石の秘密を探るために彼女と結婚したのか?」

「ふえ、秘石の秘密??」


秘石に関する謎が、彼女を選んだ理由の鍵を握っているのかもしれない。

そしてそれが、ルチカに結婚を迫った理由にも繋がっているとしたら。


「やることは一つ……か」


深く息を吸い込み、俺は令嬢からエリザベスの情報を引き出さなければならないという重い決意を固める。


「何をやるんですか~?」


トビアスが好奇心に満ちた眼差しで尋ねる。


「見合いだ」

「へぇっ⁉ お見合い~~~?」


トビアスの声が高く跳ねる。


「一週間後、俺は六番目の妻だったエリザベス・ディアーデムの姪との食事会がある。そこで俺はエリザベスの情報をその令嬢から引き出す」

「ジョシュア様がお見合い……え、じゃあその令嬢と結婚するんですか?」

「……どうだろうな。母上はそれを望んでいるようだが。もっとも、もっとよい条件の娘が現れれば、その限りじゃないだろうが」


俺は複雑な思いを隠しながら答える。


「へ~貴族の結婚も色々大変なんですね! でも、ジョシュア様。一番大事なのはジョシュア様の気持ちですよ!」

「ハッ! お前のようなガキが知った口をきくな! お前は引き続き、港でのノーマンに関する情報を集めてこい!」

「でもジョシュア様は……うーん、分かりました。調べておきますぅ」


ぶつぶつと何か言いたげなトビアスを無視して、次の一手を練り始める。

この戦いでは、どんな手段も選んではいられない。


俺は、俺の最も嫌う方法を武器に戦う覚悟を決める時が来たのだ。



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