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ジョシュアの受難「酒は飲んでも呑まれるな」⑦
月光が静かな夜道を柔らかく照らし出す中、俺たちは屋敷へと戻る道を歩いていた。
トビアスが携えたカンテラが揺らめく光に、美しい夜景が描き出されている。
しかし、俺はその美しい夜の光景を楽しむどころではなかった。
「大して陽気になるわけでもなく、ただ気持ち悪くなるだけなんて、あんまり面白くない酔い方ですね~」
「何が…オエッ…面白くないだ…ウグッ…オロロロロロ」
「わあ、また出た! 大丈夫ですか~?」
トビアスの気の抜けた声が、静寂な月夜に響く。
俺の背中を雑にさすりながら、へらへらした顔を浮かべるトビアスを横目で睨めつける。
トビアスがこちらに近寄ってきたからか、またあの独特の匂いが鼻を突く。こいつの服に染み付いた臭いだろう。服も変えねばだめか……。
その強烈な臭いに、気分は一層悪化する。
しかし不思議と、同時に俺はこんな風にも思っていた。
偽りと虚飾に満ち、甘ったるいむせ返る香水の匂いに包まれた貴族どもの世界より、こいつの人間臭さの方が幾分かマシだ、と。




