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4.邂逅

「今日、ジョシュアが屋敷に来るんですか!?」


朝食の席でのレザト様の言葉に、驚きのあまり思わず椅子から立ち上がってしまった。


「ええ。領地内での新規事業の件で、ローレンス家と話す機会がありましてね。手紙では話し合いにはローレンス家の嫡男であるジョシュア様が参加されるとのことです」


「ジョシュアが……」


ジョシュアの名前をレザト様から聞くと、何だか不思議な感覚に襲われる。

この屋敷での生活にすっかり慣れ、ローレンス家やジョシュアのことを思い出す機会が減っていたからかもしれない。

ジョシュアが新規事業に関わるということは、きっと順調に仕事をこなしているのだろう。そういえば、お見合いの件はどうなったのかな?

もしかして、もう結婚して新婚生活を送っていたりして……。


「もしお会いになるのに抵抗があれば、その時間帯はフランソワを連れてどこか出掛けては如何でしょう? 馬車をお貸ししますので、我が領地で最も活気のあるリタクロスの街に行かれるのもいいかもしれませんね」


レザト様は私の沈黙を察して、優しく提案してくれる。


「いえ、折角の機会なので私も同席してもいいですか? 王都の事や、昔一緒に仕事をしていた仲間の事とか、色々聞いてみたいんです」

「そうでしたか。もちろん、構いませんよ。色々と積もる話もあるでしょう。ゆっくり歓談なさってください」


レザト様がにこりと微笑む。その笑顔に、私の心は少しほっとする。


「ありがとうございます。あの、レザト様、花畑の事なのですけど……」


花畑という単語に、レザト様の眉がピクリと動いた。


「最近、領主の仕事も色々と忙しく、そちらはすっかりご無沙汰ですね。……申し訳ありませんが、暫くそちらに伺うのは難しそうです」

「そう、ですか……分かりました」


……しょうがないよね。

レザト様は騎士団長と領主という二つの重要な役職を兼任している。

今まで私と時間を作ってくれたこと自体が奇跡に近い。これ以上、レザト様を困らせちゃいけない。


「新規事業の件、良い方向に進まれるといいですね」

 

心のもやもやを悟られないように、レザト様に笑顔を向ける。

……私は、上手く笑えていただろうか。




昼も大分過ぎた頃、豪華な馬車がゆっくりと屋敷の前に停まる。

扉が開き、ジョシュアとトビアスが降りてくるのが見えた。

窓越しにそれを確認して、少し驚く。


あのジョシュアが誰かを同行させているなんて。

それもトビアスを……?

私が王都にいた頃には考えられなかったけれど、いつの間に二人は仲良くなったんだろう。


私がレザト様と過ごした時間と同じように、ジョシュアとトビアスも信頼が芽生えたのかもしれない。皆、同じ時間の中で変化していく。その事が少し嬉しく思えた。


レザト様はまだ騎士団の訓練場から帰って来ていない。

報せを受けてレザト様が来るまでの間、私が二人をもてなさなくちゃ。

背筋を伸ばし、心を落ち着かせて、二人を迎えに行った。



「わあ~! ルチカさん、一段と綺麗になりましたね。やっぱり愛されると人って輝くんですねぇ~」


トビアスの声が明るく響く。彼はいつも通り、元気で陽気だった。


「ふふっ、トビアスったらお世辞が上手なんだから。元気そうでよかった!」


私は心から再会を喜ぶ。

トビアスは変わらず、その明るさで周囲を温かくしてくれる人だ。

一方、ジョシュアは一歩後ろに控えていて、その表情は相変わらず硬い。


「フ、フン! たかが着ている服が上等になったくらいで大して変わらんだろう。おい、お前もトビアスの言葉を真に受けて調子に乗るんじゃ…」

「はいはい、ストーーーップ!」


トビアスが手を振ってジョシュアを制する。ジョシュアはこれ以上何も言い返さず、ぷいっとそっぽを向くだけだった。以前よりもジョシュアの扱いが上手くなっている。


「トビアス……ジョシュアをどうやってこんなにうまく扱えるようになったの?」


私は驚きながらも、その成長に感心する。


「あはは、いやぁ、ジョシュア様も結構素直になってきたんですよ~」


トビアスは笑いながら答える。


「扱いがうまいやら、素直になったって……俺は犬か何かか!? 主人が誰かも分かってない駄犬のお前こそ、ここに捨て置いてもいいんだぞ!」

「す、すいません、ご勘弁を~!」


怒鳴りつけるジョシュアの声には少しの温もりが感じられた。

明らかに今までと違う……。

でも、その変化は良い変化みたいで、それが私の心をほんのりと温かくした。

にこやかに見つめる私の視線に気付いたのか、ジョシュアが視線を私に移した。


「……久しぶりだな」

「久しぶり。ジョシュアも元気そうでよかった。何だかちょっと見ない間に、少し変わったね。丸くなったっていうか……」

「ハッ、お前は何一つ成長してないようだな。何の品格も感じられん」

「ふふふ、そのジョシュアの物言いも何だか懐かしいわ。レザト様はまだ騎士団のご用事で来るのが遅れるの。来て、応接間まで案内するね」




いつの間にかジョシュアの手綱を握っているトビアス…恐ろしい子!

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