表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/138

7.青いお茶と赤い瞳

「ルチカ! ここのところ他の任務が続いてばかりで一緒に行けず、すまなかったな! 今日はオスカー殿の看病に同行出来るぞ!」

「えっ……」


そろそろオスカーさんの所へ行こうかと身支度をしていた私の部屋に、フランソワが訪ねて来た。彼の明るい表情に対して、私は思わず気まずくて視線を逸してしまった。


「どうした?」


フランソワの眉が僅かに下がる。


「ごめんなさい、フランソワ。今日は一人で行きたくて。オスカーさんも、もう殆ど怪我も治ってるから私一人でも大丈夫だと思うの」

「そうか……わかった。それなら、オスカー殿によろしく伝えてくれ」

「本当にごめんね、フランソワ」


少し良心が痛むけれど、ミリアとの約束だからフランソワを連れて行く訳にはいかない。

部屋を出ていく彼の少し寂しそうな背中に罪悪感を覚えながらも、昨日花畑から採取したアストレラをカバンにそっと忍ばせ、部屋を後にした。



オスカーさんの看病も無事に終わり、私は駆け足でミリアの家がある森に向かっていた。

手に持つカバンの中からは、昨日摘んだばかりのアストレラの花の香りが漂ってくる。

その香りに心を和ませつつ、一瞬立ち止まり、花がしおれていないか確認しようと手を伸ばした所で、ルゥオの姿を見かけた。


一瞬、声をかけようかと迷ったけれど、前に会った時の微妙な空気を思い出し、今日は遠慮することにした。時間もないし、今はミリアが待っている。そう自分に言い聞かせ、そのまま森の深い緑の中へ駆けていった。


「ミリア! ごめんね、少し遅くなっちゃった」

「ルチカおねさん、ようこそ! お待ちしてました」


私が到着すると、ミリアがいつもの笑顔で私を迎えてくれた。


「アストレラの花、持ってきたよ! しおれてないといいけど……」

「まずは、おちゃしましょ! わたし、おいしいヤツあります」

「うん、ありがとう」


ミリアは優しいな。いつも家に来る私を精一杯おもてなししようとしてくれる。

椅子に腰掛けながら待っていると、ほどなくしてミリアがお茶を入れたトレーを持ってきた。


「青色のお茶……?」


カップに注がれたお茶は、透明な青色で、懐かしい海を思い出させる。

こんな綺麗なお茶、初めて見た。


「キレイですよね! さ、ルチカおねさん、のんでのんで!」

「う、うん」


何だか今日はやけにミリアがお茶を勧めてくる。それだけ美味しいお茶なのだろうか。

一口、飲んでみる。


「……ミリア、今日のお茶変わった味だね」


あまり好きな味ではないけれど、せっかく勧めてくれたんだから、最後まで飲まなきゃ。


「おねさんは、レザト様と何で婚約したですか?」


突然の質問。

まただ。ミリアはレザト様の話になると、いつもの柔らかさが欠けて、何か鋭い感じがする。


「……急にどうしたの?」

「あの男の妻になる事の意味、理解してるんですか?」


あれ、いつものミリアはこんなはっきりした喋り方じゃないのに。

それにしてもこのお茶、やっぱり苦くて飲みきれない……。


「ミリ…ア、どしたの? あなた、どこか変……」

「変? 変なのは人間のくせに獣人と結婚しようとするアンタです」

「それより…おちゃ…レザト様…クスリ…の…」


どうしてか呂律が回らない。体と頭がバラバラになっていくような感覚が強くなって、カップが手から滑り落ちる。


「知ってますぅ? バカにつける薬はないってこと」

「……ぁ…う…」


頭が混乱し、視界がぼやける。

ミリアの満面の笑みが、ひどく恐ろしく見える。

赤い瞳が段々と近づいてきて、私の意識は闇に飲まれた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ