4.贖罪 <レザト> その③
レザト様がまたぶつぶつ悩んでます。
今回は短めです。
暗がりの中、窓から差し込む青白い月が寒々と周囲の輪郭を尖らせる。
その冷たい光は、私の心の中の懊悩と共鳴するかのようだ。
私は眠ることができず、一人窓辺に佇んでいた。
二人のデートは上手くいったようだと、監視役にやったチェシャから聞いた。
フランソワなら家柄も申し分ない、父親も兄も王国騎士団に所属している貴族の家系だ。
仮にルチカとフランソワが結婚することとなったら、真実がどうであれ団長の婚約者を奪った形になり騎士団での外聞も悪くなる。
そのため、異動させる必要がある。
フランソワなら王国騎士団にもコネがあるため異動は比較的容易だろう。
だが、そうなるとルチカとはもう会えなくなる。
「ルチカ……」
心が痛むほどのざわつきを抑えられず、彼女の名前が唇からこぼれた。
なんのために彼女が幼い頃から、ずっと見守って来たというのだ?
全ては彼女の幸せのためだ。
しかし、成長した彼女を見た時のあの衝撃が脳裏をかすめる。
息を呑むほど美しく、凛とした佇まい。
私を見つめる、透き通った湖面のような水色の瞳、そして切り裂かれた傷。
……思い出せ、己の罪を。
その傷は、他ならぬ私がつけたものだと!
私は月夜に向かって、その冷たい光の下で改めて誓いを立てた。
彼女への罪、その切っ先を私自身の喉笛に向け続ける覚悟を。




