「結婚記念日」(奈由編)
人は愛のために嘘をつく。
幸せになるために嘘をつく。
それで誰が傷ついたとしても、
自分を守るために嘘をつく。
誰かを守るために嘘をつく。
私の名前は関田奈由。
6年間付き合った彼氏と20歳で結婚。
みんなには「早すぎる」「奇跡の結婚」と言われ続けていた。
そして今日は結婚5年目。
夫の関田陽夜は仕事だ。結婚記念日だというのに。
「はぁ…遅いな…7時じゃん。」
いつもなら8時に帰って来ても何も思わないのに。こういう時に限って。
「ただいまー!ケーキ買ってきたよー」
「あ!おかえり!ありがとう!ケーキめっちゃ食べたかったの!」
「普通、こういうめでたい日には買ってくるでしょ!まあ食べたかったのは俺も一緒だけど(笑)」
「食べよ食べよ!」
「わかったわかった、そんな焦らないで(笑)」
私達夫婦は一見、幸せそうな夫婦です。
でも私の中で陽夜の存在が薄くなっていって、そして笑顔も作ってしまう。
私達は「幸せな夫婦を演じている」
愛が無くなってしまったのだろうか。
いや、恋心が愛に変わったのかもしれない。
そうであると、信じたい。
「ねえねえ、ご飯もう作ってあるから食べよう」
「食べよう」
「んー!美味しい!」
「………」
陽夜は最近美味しいも何も言わなくなった。
最初は言ってくれたありがとうも。
ただ美味しいと言っている私を見つめて笑うだけ。ニコッと笑うだけ。作り笑いをするだけ。
「ブーブーブー」
陽夜のスマートフォンにメールが届いている。
「陽夜、さっきからスマホ。メールじゃない?見ないの?」
「あぁ。いいんだ。今は。」
「そう。」
「俺ちょっとトイレ」
「はーい」
スマホは…置いてったと。
私は浮気をちょっと疑って見てみた。
すると
「え、未夢?しかも「明日も会える?」「またギューってしてよ」「会いたい」って…」
浮気…してんじゃん…。
「ふぅ。え、奈由顔真っ青だよ?大丈夫?」
陽夜のせいだよ…とは言えなかった
「別に!ほら、食べよ!」
一時間後。
「ふぅ。食べた食べた!」
「奈由食べすぎ。寝る時吐き気するよ?」
「大丈夫大丈夫!」
早く一日が終わって欲しかった。
結婚記念日なんて、もう嫌だ。