8 高校1年生 6
翌日家族と話し合った結果を担任に伝えた。
「そうか、残念だが自分で決めて両親の承諾も獲たのなら仕方ないか。いつ編入する予定なんだ?」
「今からだと4月からが丁度いいと思うんですけど。」
「そうだな。まぁ、残り少ないが千賀高校での生活も楽しめよ。ウチは進学校だがなにも勉強ばかりが高校生活ではないからな。」
まぁ楽しめるような交友関係もないんだけどな…。
「ありがとうございます。」
担任はすごくいい人だったな。クラスメイトとはあまりいい思い出はないけど。
それから編入先の高校の下見に行ったり、編入試験と面接の準備など忙しく過ごしていたせいで美里の事はほとんど気にならなくなった。
転校の話を美里に言うべきか迷ったが、教室での美里を見ているとそんな気も起きなくなっていた。
そして編入試験当日、俺は学校を休んで試験を受けに行った。
その夜、美里が家にやってきた。
「なんで転校しちゃうの?!なんで勉強頑張ってること黙ってたの?!なんで私に酷いこと言われても言い返さなかったの?!」
部屋に入ってくるなり泣きながら問いかけてくる美里。
いや、そっちこそなんでそんなに必死なんだ?
「美里にはもう関係ないから。幼馴染として俺は恥ずかしいんだろ?幼馴染でないならただのクラスメイトだし。」
「それは!…あの時は和也が努力してること知らなかったから…。もっと和也に努力してほしかったから…。酷いこと言って本当にごめんなさい!」
「なんで俺が転校することとか勉強してた事知ってる?」
「それは…。さっきおばさんから…。」
母さん、しゃべったのか。まあいいか。
「そっか。美里から言われたことは傷ついたけどもういいよ。別に怒ってない。」
「本当?ごめんね?」
美里の顔が少しだけ明るくなる。
「うん、正直もうどうでもいいから。」