7 高校1年生 5
「あ~あ、武志が幼馴染だったら良かったのに。」
その夜は美里の言葉が頭から離れなかった。
そうか、美里にとって俺は恋人どころか幼馴染の立場さえ認められないのか。
あの瞬間はショックが大きすぎて何も考えられなかったが、悔しさや怒り、悲しみなんかの感情はあったものの、それよりも何よりも美里への感情の変化が大きかった。
暖かかったものが急激に冷えていく感覚。
…うん、美里への恋心はなくなったみたいだ。
13年間温めてきた感情がこんなにも急速に冷えて行ってしまう事に驚いた。
これからどうしようか。もう頑張る理由も無くなった。千賀高校に通う理由が無くなった。
いっそのこと俺のレベルにあった学校に編入するか?ふとそんな事を考えると、とてもいい案のような気がしてきた。
親に話してみるか…。担任にも相談してみよう。少し気持ちが軽くなった。
次の日、担任に相談してみた。
「折角ウチに入れたのにもったいなくないか?」
「いえ、現状、俺には授業についていくのもキツイです。」
「そうか、でも親とよく話してみろよ?俺たちだって協力するし家庭教師とかやれる事もあるだろう?」
「はい、よく話し合ってみます。」
「なんだ?ダメ男君、教師に説教でも喰らったか?」
御堂が話しかけてきた。マウントでも取りに来たんか。暇な奴。
「お前には関係ねぇよ、放っとけ。」
「そーかよ、つまんねぇヤツ。」
チラッと美里と目が合ったが直ぐに逸らした。
もう気にすることもない。本当に関係ないのだから。
その夜両親と話し合った。俺が高校受験の頃から勉強漬けだったのを知っていたので、
「まぁ、アタシと父ちゃんの子供が県一番の進学校に受かっただけでもビックリしたし、アンタが頑張ってたのも知ってるから、アンタの好きにしな。」
「そうだな、小学校の頃は勉強が嫌いでどうしようもなかったのに、随分頑張ったよ。」
そんなことを言って俺の考えを理解してくれた。