2 過去
中学の部活を引退した後ぐらいだったかな…。
俺が美里の後を追いかけるようになったのは。
小さい頃の美里は引っ込み思案で俺の後をついて回っているような子だった。
小学校低学年の頃はそうだった。高学年になると、大人しかったが容姿も整っており勉強もできた美里は男子、女子問わず人気者になっていった。
俺はといえば、勉強もスポーツも中の中。
でもその頃はそんなこと気にもせず、一緒にいた。
「大きくなったら和也のおよめさんにしてねっ!
この指輪はその時になったら私につけてね!」
そう言って小学校3年生の夏祭りの日に、屋台で買ったおもちゃの指輪を俺にくれた美里。
「うん!わかった!」
あの頃は純粋にお互いのことが好きだったと思う。
恋愛感情の有無はわからなかったけど。
中学に入ると、美里は自分に自信を持ち始め、明るくなり、クラスの中心にいるようになった。
俺は小学校時代からやっていたサッカーにハマり、そこそこ活躍できたおかげで美里の隣にいても引け目を感じることもなかった。
「和也はどこ受験するの?」
「うーん、美里は?」
「私は千賀高校受けるよ。」
千賀かぁ…俺にはかなり難関だな…でも…。
「俺も千賀高校にしようと思ってた。」
「本当?また一緒だね!」
「いや、受かるかどうかわかんねーよ。」
「大丈夫、大丈夫。楽しみだねー。」
この日から勉強漬けの日々が始まった。
友達からの誘いも断り、一日6~7時間勉強に充てた。
とにかく必死だった。
そして努力が実を結び何とか千賀高校に合格した。
この頃は、高校に入ったら美里との関係も高校生活も希望に満ちていた。
まさか美里と恋人になるどころか、俺が美里のことを好きではなくなるとは
思ってもみなかった。