14 それから
「和也、お弁当食べよ!」
その日の昼休みになると美里が声を掛けてきた。
「わかった。どこで食う?」
「うーん、屋上か中庭かどっちかかな?」
「じゃあ屋上行こうぜ。」
「うん!」
二人で屋上に弁当を広げる。
見た目は普通にうまそうだ。
「ど、どうかな?」
「うん、普通にうまいよ。」
「良かったぁ!これから凄くうまいって言ってもらえるように頑張るね!」
「あぁ。」
「…それでね?あの…。今まで沢山酷いこと言ってごめんなさい!」
畏まった様子で謝罪をする美里。
「昨日はもうどうでもいいって言われちゃったけど、私にとってはどうでもよくなくて!
本当にバカだった!本当に酷いこと言っちゃってた!」
まぁ、言われたときは確かに傷ついたけど。
「なあなあで済ませたくないし、ちゃんと改めて謝りたくて…。本当に和也の事傷つけてごめんなさい!」
「わかった。俺もちゃんといろいろ伝えるべきだった。ごめん。」
「和也は謝らないで!ちゃんと和也を見てたらわかったことだと思うの。
10年以上一緒にいた幼馴染ならなおさら。だから私が悪いの。」
「…美里の気持ちはわかったよ。恋愛感情はないけど、幼馴染としてなら付き合えると思う。」
「…うん、今はそれで十分だよ。これからは私の頑張り次第だし。ありがとね、和也。」
それから俺たちは4月に転校し、勉強も美里と一緒にするようになってからは俺の成績は随分上がった。
やっぱり勉強のやり方が悪かったのか…。
あれから美里は小学校の時のように俺にべったりになった。
部活も入らないで俺と一緒にいるようになった。
成績が落ち着いてきたので時間もとれるようになり、一緒に出掛けることも増えた、というよりほぼ一緒にいるようなものだ。
美里に対する負の感情はほぼ消えたと言っていいと思う。恋心は戻っては来ないけど。
これからどうなるかはわからない。ただお互いが胸を張って幼馴染でいられるような関係でありたいと思った。
あのおもちゃの指輪はまだ机の奥にしまってある。
最後まで読んで頂きありがとうございました。