47話 シンデレラになれなくても生きていれば良い
事件が解決して、始めてブラッドリーにあった。
湖のそばで、私は転移者保護の仕事の帰りだった。相変わらず謎の男の行方は分からず、この問題についてはやっぱり忘れる事にした。変な男ではあったが、犯人が逮捕されて事件とは無関係である事は確定している。
「マスミ、久々だな」
「こんにちは、ブラッドリー」
私達は、湖の辺りのベンチに座る事にした。もう風が少し暖かくなっていたので、外で会話をしても寒くはない。空は高く、淡い水色である。いつの間にか、春になってきたようだ。
ブラッドリーは、少し痩せたようだ。オールバックの髪の毛もやめ、髪の毛はかなり短く切りそろえていた。似合っていない事はないが、野球少年のような幼い雰囲気が漂う。
「事件は大変だったね。調子はどう?」
私はわざと明るく言う。事件の話題ではあるが、あまり暗い雰囲気にはしたくない。やはり私は日本人のようで、空気を読んだり、変えたりしたくなったりする。せっかく気候も暖かくなってきたし、あまり暗くはなりたくない。
しかし、ブラッドリーの表情は重かった。やはり、事件を引きずっているようだ。
「まあ、あんまり元気ではないね」
「そう」
「うん。今回ばかりは反省したよ。僕の女癖の悪さが招いたような物だから」
「そうよ、最低」
思わず私の本音が溢れるが、意外ま事にブラッドリーが苦笑していた。
「へクターの気持ちには気づいていた? いくら女装していたからって、気づいてたでしょ」
ブラッドリーは、ちょっと泣きそうに顔を歪めて頷く。
「犯人である事も気付いていたんじゃない? 何で言わなかったの?」
ここで少し強い風が吹く。あまり寒くはないが、季節の変わり目で気候は安定していないようだった。
「ああ、気付いてたよ」
「やっぱりね」
「でも、そんなのバレたら、俺の女癖の酷さも世間にバレるだろ。ソニアとの結婚もダメになるかも知れない。なんとか穏便にしようとは思ってはいた」
ブラッドリーの自己保守をしている事にあまり気分は良くないが、泣きそうにそんな事をいう人間を責める気分にもなれない。
「きみが事件の調査をしてるって言うからさ、やんわりと事情を匂わせておこうかと思ったんだけどね」
「まさか、デートのように誘ってきたのはそのため?」
ブラッドリーはうなづいた。あれは、私のモテ期ではなかったようだ。拍子抜けしたが、これでよかったとも思う。これ以上、この男がソニアを傷つけるような態度をとってなくて、ホッともする。
「まあ、きみの事は美人だとは思うけどね」
「そんな事言わないで」
どうやらこの男は無自覚に人を褒めるような言葉を言うタイプらしい。おそらくへクターも誤解してしまったのではないだろうか。全く罪作りな男だが、隣で邪気なく笑っいると責める気分にもなれない。
「ところで、ホテルは計画通りちゃんと作るの?」
「ああ。でも本当にB&Bという感じで、森の環境もそう壊さない予定だよ」
「それだったら楽しみね」
この村は事件のせいですっかり人が減っている。この事で人も戻ってくると良いのだが、上手くいくように願うしかない。
「ソニアにもホテルを見せたかったなぁ…」
ブラッドリーは遠い目をして呟く。この言葉は嘘ではないようで、私を少し切なくさせた。女癖は酷いが、心の底から憎める人ではないようである。
「じゃあね、マスミ」
ブラッドリーは、そう言い残して帰っていった。おそらく仕事意外では、この村には二度と来ないだろう。私と会う機会もなくなるはずだ。
ロマンス小説では、ブラッドリーのような金持ち御曹子もイケメン御曹子と書かれていたが、実際はそう甘い展開にはならないようだ。ソニアだって立場的にはシンデレラみたいだったが、殺されてしまっては意味がない。
ソニアの事を思うと、やっぱり少し切ない。
村の女達には、嫌われていたが、根っから悪い人間ではなく、もっと親しくなりたかった。
ソニアは天国にいるだろうか。それは私にはわからないが、やっぱり彼女の死は悲しかった。
しか、いつまでもクヨクヨしてはいられない。
私が、ベンチから立ち上がり、転移者保護の仕事のために村に役所に向かった。




