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35話 26回目の殺人事件

「こんにちは。ソニア、いる?」


 私はアトリエのドアをノックした。


「ソニア、牧師の私も来ましたよ」


 牧師さんもちょっと大きな声で言うが、返事がない。物音もしない。アトリエの前の雪はかなり溶けて、ほとんど消えていた。


「変ね。どうしたのかな?」


 私はアトリエの窓の方ものぞくが、カーテンが締め切られていてよく見えない。


「鍵開いていますね」

「この村は鍵かけない人多いわよね…」


 こんな殺人事件が頻発するコージー村だが、防犯意識はかなり低かった。不思議な事に殺人事件はあるのに強盗はここ10年0件らしい。殺人事件もどうきがある犯行ばかりで、無差別殺人はないので住人達の意識が低いのはわかるが、もう少し性悪説で生きてもいいんじゃないかとも思う。


 とはいえ、鍵が開いていたので入る事にした。こうして村人が簡単に行き来できる環境も、防犯意識を妨げているのかもそれない。


 アトリエに入ると、電気が消えていた。昼間なので、灯りをつけなくても問題はないが、やっぱり少し暗い。


「ソニア、勝手に入ってしまったけど、いる?」

「私も来ましたよ。ソニア、どこですか?」


 一階を見て回ったが、ソニアはどこにもいない。心なしか描きかけの絵は減っている印象だった。結婚準備で片付けてしまったのだろうか。ジェイクの話でが、絵にもやる気を見せていたらしいのに、スケッチブックのラフ画なども消えている。絵の具などの画材は残っているようだが、肝心の絵が消えているので、いつも以上にアトリエが広く見える。何か、嫌な予感がした。


「上行ってみましょうか?」

「そうですね。行きましょう」


 なぜかまた牧師さんが前を行き階段を登る。これだとまるで私を守っているように歩いて見えるが、気のせいだろうか。


 しかし、嫌な予感はずっと続き冬だよよいうのに手に汗が滲む。


「あ、また」


 リビングに入ると、牧師さんは深いため息をついた。


「また?」


 牧師さんはあまり動揺していない。だからこそ、余計に過去の事を思い出す。犯人として疑われたマークの事件はともかく、杏奈先生の死体を目の当たりにしても全く動揺していなかった事を思い出す。


「マスミはあんまり見ない方がいいですよ」

「え?」


 その言葉だけで余計に私は牧師さんが「また」と言った意味を確信しまう。


 リビングでソニアが倒れていた。頭を銃で撃たれている。苦しんだ様子はなく、穏やかに眠っていたが、瞼は硬く閉ざされ、身体は一ミリも動かない。


 そばには、何か書かれた紙が散らばっている。


「そんなソニアが…」


 もういい加減にしてほしいと叫びたくなる。


 マークやカーラは、それほど親しい人ではなかったが、今回ばかりはかなり心も抉られる。


 もちろんソニアは、完璧な女ではなく癖が強い。最初はいい印象はなかったが、芋粥を食べていた笑顔を思い出すと、泣きたくなる。


「牧師さ〜ん!」


 私は涙目で牧師さんに縋り付いてしまった。意外な事に牧師さんはちっとも動揺せず、私の背をトンと叩く。杏奈先生の事件の時は、あの同時ない所にドン引きしたものだが、今はその岩のように動じないメンタルが頼もしかった。


「大丈夫。ソニアは天国にいますよ」

「そうですかね…」


 私涙と鼻水のせいで、牧師さんの服が汚れたが、彼は全く気にしていないようだった。


「ええ、ソニアはあれでも根っこでは信仰心はありましたから。意外と讃美歌も上手かったんですよ」

「そうだといいですね…」


 私は、牧師さんに縋り付いているこの状況に居た堪れなくなり、そっと身を剥がす。


 ちょうど、ブラッドリーもやってきた。


「は? どう言う事?」


 彼もかなり動揺して、その場の崩れおれてしまった。


「ブラッドリー、私はこれから一応保安官を呼んできます」

「そ、そんな…」


 牧師さんに話しかけられても、ブラッドリーはろくに言葉を出せないようだった。目の前でパニックになっているブラッドリーを見ていると、私は帰って冷静になってきた。それにさっき牧師さんに縋り付いたお陰で、だいぶ冷静になってきた。動揺いたとはいえ、その行為はちょっと恥ずかしかった。


「ブラッドリー、大丈夫?牧師さん、あとは大丈夫だからアラン保安官を呼んできて」

「マスミも大丈夫ですか?」

「大丈夫よ」


 私はちょっと大袈裟に言った。その表情に牧師さんは、安心したのかアラン保安官を呼びに行った。


 正直、あの無能な保安官は全く頼りにならないが居ないよりはマシだろう。


「あぁ、ソニア」


 牧師さんが言ってしまうと、ブラッドリーは再度絶叫し、私はただ宥める事しかできなかった。

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