33話 ムーンショット男?
ブラッドリーと別れて私は村中を歩く回った。あの謎の男が気になるし、もし本当に転移者がいたら保護しなければならない。
ブラッドリーの事を思い返すとイライラするが、ここで上手くいけば事件解決まで持ち込めるだろう。それにしてもソニアがいるのに誘ってくるなんれ、遊び人であるのは確定のようだ。
牧場や霧の森、商店街の方も行ってみたが、謎の男の姿はどこにもない。
ホッとしていいのかはわからないが、とりあえずミッキーのパン屋で田舎パンを買って店を出ると、ジミーに会った。
「こんにちは、ジミー。パンを買いに来たの?」
「ああ、うん…」
ジミーの顔は何故か冴えない。
「あとで伺うわ。今日の食事は何がいい?」
「いや、今日はマスミは来なくていい」
「どうして?」
こんな事は始めてだった。しかも、ちょと表情が重いのも気になった。
「いや、ちょと一人で考えたい事もあるし…」
「そうなの」
「マスミは事件について何かわかったか?」
ジミーが事件について聞いてくるのは珍しい。いつもはあまり興味がないのに。
「まあ、目星い人は一人思いついたところよ」
「そうか…」
ここでジミーは黙りこくってしまった。もしかして事件について何か知っているのだろうか。
「ジミー、何かわかった事あるの?」
そういうと、ジミーは慌てたようにミッキーのパン屋に入っていってしまった。
・ジミーが何か知っている?
今のジミーはヘクターと暮らしているし、何かわかったのだろうか?確かにヘクターはソニアには強い悪意を持っているようだが、モニカには無さそうなのでスルーしていたが。
しかし、今その事を考えても仕方ない。
私は、この後役所に直行した。
「はあ? 転移者がいるかもしれないの?」
マリーは、眉根を寄せながら呟く。転移者保護の仕事の上司は一応、マリーで役所の応接室で謎の男について報告していた。
「そうなのよ。どうも私と同じ日本人が来ている見たいなの。スーツ姿の30歳ぐらいの男。顔は私によく似て平たいね」
そう報告するとマリーはそばらく考え込んでいた。
「これは噂なんだけど」
マリーはそう前置きしながら話す始めた。
「確かローラも転移者みたいな男を見たって言っていたのよ」
「本当?」
「ええ。なんか自分の事を『ムーンショット男』って言っていたみたいなんだけど、どういう事?」
ムーンショット男?
あの男はそんな事は言っていなかったが、気になる単語である。元いた世界で聞いた事あるような単語ではあるが、思い出せない。確か杏奈先生のそんな事を言っていたような?しかし、彼女はもうお墓の中だし、もう聞く事はできない。
「まあ、転移者がいるかもしれないのは危険ね。マスミ、見回りを増やす事できる?」
「ええ、こうなってしまったら仕方ないわ。帰りにもう一度見てみる」
「そうして」
私は頷き、さっきミッキーのパン屋で買ったフルーツサンドをマリーにあげた。マリーの仕事が増えて不機嫌になると後々めんどくさい。一応賄賂のつもりである。
「あら、いいの?」
「どうぞ。そのかわり転移者らしき変な男にあったら情報教えてね」
「ええ、もちろんよ。あと謎の女については何かわかった?」
私は首を振る。フルーツサンドを目の前にしたマリーはやっぱり少し機嫌がいい。賄賂を与えていて正解だった。
「また謎の女を見たわ」
「いつ?」
私はその言葉に食いつく。
「さあ、いつだったかしらね。しかもソニアも一緒にいたわよ」
「ソニア?」
思っても見ない名前が出た。
「揉めてたりした?」
「そんな感じじゃなかったけど、謎の女はソニアにちょと怒ってたわね」
「それで?他に何かわかった事ある?」
マリーは残念そうに首を振る。これ以上は何もわからないようだ。
・謎の女はソニアとも揉めていた?
信じていいかわからないが、子供たちの情報ではブラッドリーとも親しげだったともいう。
謎の女に、謎の男。
犯人の目星はつきそうだったのに、再びわからなくなってしまった。
とにかくソニアは、謎の女に接触していたのは確かである。
私はマリーに報告をし終えると、ソニアのアトリエに向かって歩き始めた。




