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31話 女々しくて女々しくて辛いよぉ〜♪

 夕方までクラウスはジェイクの医院に居座っていた。


 まあ、私も怪我をしていてろくに事件調査はできないし、退屈ではあったので仕方がない。カードゲームは熱中した。スマートフォンもパソコンもないこの土地では、カードゲームも結構な娯楽である。こうして人間同士でゲームをするのは悪くは無かったが、やっぱりクラウスには自分は過剰に懐かれているとは感じた。その理由はあまり純粋なものでもないのでやっぱり喜べない。こんな状況でも自分はロマンス小説のヒロインのように成れないと感じる。


 カードゲームは楽しかったが、クラウスが買えるとグッタリと疲れてしまった。


 ちょいどそこのジェイクがやってきた。もっているお盆の上には、芋粥が二つ載っていた。独特な麦の匂いもする。今日の昼、教会で食べた事もあり、正直なところゲンナリとしてしまうが、やっぱり人に作って貰った料理にとやかく言うのは性格が悪いと感じる。


「さあ、マスミ。一緒に芋粥を食べましょう」

「ええ」


 それにイケメンなジェイクと食べるとちょっとは美味しく感じる。女の趣味の悪いジェイクにはもう全く興味はないが、顔は良い。リリーやアナのようにジェイクファンになるつもりはないが、観賞していたい気持ちはわかる。


「ところで何でジェイクは芋粥作るの上手なの?芋粥マニア?」


 芋粥はやっぱりそんなに美味しくはないが、身体は温まる。はじめてこの芋粥を食べた時は、あんなに不味いと思ったのに、今はそうでもない。慣れてしまったのかもしれないし、やっぱり人の料理について悪く言う事は性格がいい事では無いと気づいたからかもしれない。


「違いますよ。母親がよく作ってくれてね」

「思い出の味なのね」


 思い出と一緒になっているものは、確かに味以上の何かがある。寿司やステーキももちろん美味しいが、母親の味噌汁やおにぎりを美味しいと思う気持ちは全く別次元の理由なのかもしれない。そう思うと、味や見た目だけで人の料理を悪く言う事は出来ない。


「うん。ソニアも美味しいって言ってくれたしね」


 自分からソニアの話題を出したのに、ジェイクは意外と落ち着いていた。


「もうソニアについては、落ち着いた?」

「まあ、仕方ないよね…」


 ジェイクは深いため息をつき、芋粥を啜った。


「そうね。仕方ないわよね」

「うん。まあ、そうだね」


 ソニアがいわゆる枕営業でブラッドリーと結婚したかもしれないという噂は黙っていた方が良さそうだ。


「今はとにかく、ソニアの幸福を願うしかないだろうね。絵についても順調みたいでさ、やっぱり僕が入る隙はないよ」

「あなたもこの村の誰かと付き合えばいいじゃない?」

「マスミが付き合ってくれればいいのに」

「は?」


 マークの事件の時も冗談でそんなような事を言われた事もあったが、今も素直に喜べない。私はソニアの代用品か?そう思うとイライラとしてしまうう。味に慣れてきた芋粥だったが、あまり美味しく感じなってきた。やっぱり不味い。杏奈先生は性格悪かったが、彼女が作っていたマリトッツォは美味しかったとどうでもいい事を思い出す。


「クラウスまで君の事が好きだなんて、何だかイラつくよ!」

「そんな理由? こっちがイラつくわ」


 今度は私が不深いため息をついた。


「残念だけど、私は牧師さんがいいのよね」

「知ってるよ。でも別の彼とは進展していないんだろう?」


 そう言われてしまうとぐうの音も出ない。


「あの人は敬虔だよ。そもそも女性に興味があるかどうか。それにクリスチャンはクリスチャン同士じゃないと結婚できないはずだったよ。彼は神父ではないから結婚自体は出来るはずだけどね」

「私は宗教は何でもいいわ。元いた世界の国はとっても適当だったからね」

「おぉ、結構強いな、マスミ…」


 ジェイクに何を言われても意見を変えない私に、彼は苦笑していた。イケメンに好かれて、夢見たいな状況なのにちっとも嬉しくない。モテているのに馬鹿にされているように思えるし、肝心な男性が手に入らないなら意味が無い。


 ふと、元いた世界で読んだ「芋粥」という小説を思いだす。簡単に夢が叶ってもたいして嬉しくないという話だ。似たような立場の立ち、共感しか無い。苦労すれば良いというものではないが、何もしないで棚ぼたのように夢が叶ってもあまり嬉しくない。宝くじ当選者が不幸になってしまうという統計を見た事もあるが、意味がわかるような気がした。


「ところで、事件の調査をまたやっているんだってね? 順調かい?」


「それが全くわからないわ。こうして怪我も負ったし。犯人がこの村にいるのかしらね?」

「それは大変だ! 僕がボディガードをしてあげよう」

「いえ、必要ないわ」


 それは大袈裟な気がする。確かにカーラやマークの事件でも危ない目にあったが、その事でかえって犯人がわかった。自分はろくに推理は出来ないが、犯人を炙り出す存在としてはよく機能しているかもそれない。もちろん、危険な事はわかってはいるが、プラムも居るし大丈夫だろうとどこかで思っていた。


「何だぁ。でも、必要になったら言ってよ」

「うーん、ないと思うけどね。ジェイクは、事件について何か知らない? 謎の女についてもサッパリよ」

「僕は知らないよ。そもそも王都で起きた事件なんだろう?コージー村に関係あるかい?」

「でも容疑者は何故かこっちに揃っているのよね。ブラッドリーも動機だけは考えられる」


 ブラッドリーの名前を出すと、さすがのジェイクも不機嫌そうに眉を動かす。どうやらソニアよりもその婚約者のほうに複雑な感情を抱えているらしい。こんな恋愛脳だとは知らなかった。昔のように、職業意識の高い男に戻って欲しいものだ。今のジェイクのイケメン度はかなり下がっている。


「ブラッドリーは嫌いなの?」

「まあ、いい感情はないよ」

「意外。嫉妬なんてするなて」

「するよ! 男だって恋のライバルに良い感情持つわけないじゃん」


 ジェイクのその言葉に何かが引っかかる。ちなみに英語で女々しいは「sissy」「cream puff 」と表現される。J-popで「女々しくて」という曲があったが、そのメロディが頭に流れる。この曲は英語でカバーされていたが、サビは「I'm like a girl」と表現したされているのを見た事がある。別に「女々しい」なんて語彙を知らなくても、中学生レベルの文法力でも伝えられる事は伝えられる。語彙力の高さが英語力とは一概には言えない。


「男だって、意外と女々しいんだよ」


 ジェイクは湿っぽく呟き、残りの芋粥を口にかき込む。


 何かが頭に引っかるが、それが何かがわからない。男でも持つような嫉妬心が動機と関係ある?


 考えてみたが、まだ何も閃きはなかった。


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