27話 威嚇中の隣国の王子様
翌日、日曜日。
礼拝のため、いつものようにクラリッサやプラムと出かける。
雪は降っていない。一昨日の大雪は嘘のように晴れ、気温も暖かかった。ハードボイルド村の雪で壊れた橋も徐々に復興しているようで、思ったよりは影響は無さそうだ。ただ、事件については何も進展がないが。プラムがこの国の暗殺者を調べているようだが謎の女もわからなかった。
礼拝には、クラウスもついてきた。教会の礼拝堂に集まる村の人達は、はじめて会うクラウスに概ね好意的だった。
「はじめまして、クラウス」
礼拝が始まる前、牧師さんはクラウスに挨拶をしていた。相変わらずおっとりと優しいそうな笑顔で迎えて居たが、クラウスは軽く睨んでいた。
「あなたが牧師さん?」
「そうです。ようこそ、このコージー村へ。いやぁ、最近は雪が凄いですね」
牧師さんは、クラウスの睨んだ表情には全く気付いていなかった。
「ふーん、はじめまして」
明らかにクラウスは不機嫌だった。その理由はだいたい想像つくが、今はあまり考えたくはなかった。
「牧師さんはマスミと仲良いの?」
クラウスは口を尖らせて言う。私は心の中でやめて欲しいと思っていた。ここで牧師さんの反応で、アウトオブ眼中なのかハッキリしそうで怖い。
「え? 普通に仲良しですよ」
この反応は、何なのか。自分の気持ちが掻き乱されているのは感じる。つくづくクラウスは早く帰って欲しいと思ったが、そういうわけにもいかない。この一部始終を見て以来クラリッサやプラムは大笑いしていたが、私はちっとも笑えない。
結局、クラウスのこんな威嚇は全く無意味だったようで、いつも通りに礼拝がスタートした。
ジャスミンのピアノ演奏から礼拝が始まった。讃美歌の演奏はジャスミンの役目で今日も生き生きと弾いて居る。マークの事件の時は、村の信徒がごっそりと減ってしまったが今は元通りである。村人のほとんどが礼拝に参加していた。
ジェイクも最前列で神妙な表情で牧師さんの説教を聞いて居た。噂ではソニアの件でまた落ち込んでいるという話だったが、私の席からは死角になりそに表情はよく見えない。
当事者のソニアは涼しい顔をしていた。村人ではないブラッドリーやヘクターの姿は見えない。ぐるりと礼拝堂を一応見てみるが謎の女も見当たらない。アナ、リリー、ローラやマリーの喧しい村の女性陣は見えるが、さすがに礼拝中はおとなしかった。
デレク、ミッキーたダニエルは相変わらず熱心の祈っていた。いつもと変わらない礼拝ではあったが、隣に座るクラウスが何となく落ち着きがなく、何故かイライラとしてくる。もっとも自分でもわからないイライラなので、別にクラウスのせいではないが。
礼拝が終わると、いつものように牧師さんお手製の料理が振る舞われた。いつもはキッシュや田舎パンのサンドイッチが多いが、今日は寒いという事で芋粥だった。何やらジェイクも一緒に芋粥を作ったそうで、材料は白米ではなくオートミールによく似た麦が使われていた。独特な匂いもして苦手だが、こう寒いと芋粥も身体に染みる。あのクラウスも完食し、おいしいと言っていた。
しかし、子供であるアビーやジーンはさっそく不機嫌になり、ギャーギャー騒いでいた。
「こら、アビーとジーン。少しは静かにしなさいよ」
「そうよ、ワガママ言うんじゃ無いわよ。また、牢屋に入れてやるんだから」
私とプラムはアビーちジーンに注意しに行く。久々に教師モードを出すと、二人ちも大袈裟に怖がって居る。
「芋粥不味い!」
「芋粥嫌い!」
しかし二人に言い分もわかる。仕方がないので、私は牧師さんに許可をとり二人を牧師館の方へ連れて行った。




