表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/50

14話 容疑者・パイロット

 クラリッサとプラムは王都で起きたモニカ殺人事件で盛り上がっていたが、さすがに私は笑えない。三件の殺人事件に巻き込まれたとはいえ、やっぱり全く慣れない。


 それにジミーの家でも仕事がある。今日も昼ごろにジミーの家に行き、ご飯を作って一緒に食べる予定だった。


 私はクラリッサの屋敷を出ると、ジミーの家に直行した。


 今日は雪が降っていないし、天気も良いが冬の冷たい風が頬を刺す。この寒さで老人であるジミーはすっかり参っているようで、病院に行く以外はほとんど外出して居ないと聞く。ありがたい事に私がこうして家に通う事を楽しもにして貰っているようだ。


「ジミー、こんにちは!」

「ああ、マスミか」


 ジミーの家につくと笑顔で迎えられた。しかし家の中がちょっと騒がしい。誰か客でもいるのだろうか。ジミーと同じく老人で引きこもり体質のネルは時々、ジミーと一緒にお茶をしているようだが。


「実は、今日は甥が遊びに来ているんだよ」

「甥?」


 ちょうど玄関に一人の男が現れた。


「え!」


 思わずそんな声が出てしまう。あの婚約パーティーでヤジを飛ばしていたヘクターだった。今日はラフなセーターのジーパン姿で、髪もセットされて居ないがすぐにわかった。


 何故、この村に?


「あんた、珍しい顔してんな」


 ヘクターは不躾だった。私の顔をじろじろ見ている。おそらくあのパーティーに居た事は気づいていないだろう。


「こら、ヘクター。失礼だぞ。こちらはマスミ。転移者だよ」


 驚きでものが言えなくなった私の代わりのジミーが紹介する。


 何がおかしいのかヘクターはニヤニヤしていた。思わずムッとしそうだが、ジミーの手前そんな顔も出来ない。仕方がないので、営業用スマイルを作る。


「ジミー、甥御さんなの?」

「うん。王都でパイロットしてるんだが、数日休暇でやってきたんだよ」


 ヘクターがパイロットというのには何故か納得してしまう。頭の中で彼の制服姿をイメージするとピッタリだった。同時にかなり女達にモテそうな雰囲気もして、ちょっと警戒心も生まれる。


「都会にいるのもなかなか疲れるんだよな。たまには田舎もいいだろう」


 ちょっと上から目線というか、俺様風だ。ロマンス小説に出てきそうな男だが、現実にこんな男を目の前にすると、別にときめかなかった。どうもこの男も作り物めいた印象を受ける。


「まあ、立ち話もあれだし、リビングに行こうか」


 ジミーがそう提案し、みんなぞろぞろとリビングに向かう。石油ストーブのあるリビングはとても暖かい。


 私は仕事で来たので、くつろぐわけにもいかない。すぐにキッチンに行ってご飯の準備に取り掛かる事にした。


 今日もジミーからはパンケーキを所望されている。甘いパンケーキではなく、目玉焼きやベーコンと一緒に食べるお食事系のパンケーキだ。材料を測り、混ぜて焼くだけに料理であるが、ミルクと卵や砂糖を先に混ぜてから小麦粉を混ぜたり、混ぜ過ぎないようにしたり、記事がフワフワになるコツも忘れずに焼く。


 何枚か焼き上げキッチンはすっかり良い匂いの包まれる。日本で売っている市販のホットケーキミックスで作ったものより香りは劣るとはいえ、焼き色も綺麗なキツネ色で概ね出来も満足だ。


 まるでそんな匂いに惹かれたかのようにキッチンにヘクターがやってきた。


「おぉ、いい匂いじゃないか」


 大袈裟に思えるぐらいリアクションを取り、ホットケーキを褒めていた。どうも不自然な男だ。なぜかぶりっ子している時のソニアを連想させる。


「ふぅん、パンケーキか?」

「ええ、何か問題でも?」

「気に入った」

「何が? パンケーキが?」

「違う。お前だ」


 ヘクターは上から目線で私を見下ろす。背が高いので仕方ないが、何となく気分が悪い。それに何か気持ち悪い台詞も呟いているのだが。


「お前は、結婚しれるのか?」

「してませんよ」

「だったら良いだろう。俺と付き合え」

「は?」


 命令形で有無を言わせぬ勢いだ。こういう俺様男はロマンス小説でも人気だったが、いざ目の前にすると不快でたまらなくなる。


「良いじゃんか。俺と付き合え」

「叔父の仕事相手先にこんな事を言うのは、不公平ではないですかね?」


 私は軽く睨み、毅然と言う。ロマンス小説のヒロインだったら無いて喜ぶシチュエーションではあるが、仕事中のこんな恋愛話を持ちかけられるのが、こんなに不快だとは知らなかった。明らかに私を見下しているのが伝わってくる。同じ人間としてこの男は私に敬意を払っているとは思えなかった。それにソニアの婚約パーティーをぶち壊した男なんて、いい印象もない。


「チッ」


 舌打ちまでしている。村の男性陣だって癖のある連中が多いが、性根の悪さを感じるものは少ない。一方この男は、それを全く隠さず、まだ上から目線を続けて居た。


「そんな不機嫌そうにしていたらパンケーキを作ってあげませんよ」

「わかったよ。悪かったさ」


 意外とすぐ少ない素直に謝るのは好印象であったが、今までの印象が悪すぎてしまう為、素直に喜べない。


 お食事系パンケーキを作り上げ、ジミーとヘクターで三人で食べたが、この男のせいで全く美味しくなかった。ジミーに言おうかと思ったが、あまり身体に調子が良くない彼にそんな負担になるような事は言えない。


「美味しいな、マスミ」

「ええ」


 それにパンケーキを喜んでいるジミーに何て言ったら良いのかも不明である。ヘクターは外面だけは良いようで、ジミーの前では営業用スマイルを崩さない。


 全く、何て日だろう。


 モニカの死の知らせから、ヘクターが出現。この事は、何か事件と関係ある?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ