10話 がっかり王都
王都は確かに地味だった
3階から4階建てのビルが機械的に並び、日本の渋谷や新宿に比べると圧倒的に地味だ。日本で言えば地方都市のような雰囲気だ。確かに日本人の目からは、石畳み道やどっしりと濃厚な雰囲気の建物は新鮮でがあるが、コージー村でもよくあるような雰囲気である。がっかりとは言わないが、期待外れと言いたい気持ちはある。歴史的な建築物なども無いようだ。この国は長年飢饉や戦争に苦しめられていたせいか、あまり文化や芸術は発展していないないらしい。
「どう? マスミ、王都の感想は」
プラムはちょっとニヤニヤしながら言う。
「そうね。日本と比べてしまうと、やっぱり地味かも…」
「あはは。もっとはっきり言って良いのよ?」
クラリッサは大笑い。
確かに王都は遊びに来たわけでもないし、それで良いのだろう。
私達は中心部にあるホテルに直行した。
五階建てのホテルだ。日本人の目からしたら、ホテルというよりペンションの方に雰囲気が似ているが、立派なホテルなのだという。王都の文化レベルは、やっぱり日本と比較しない方が良いかもしれない。この国が可哀想というより、自分の性格が悪さを自覚しそうでちょっと怖い。
しかし、会場はそこそこ広く豪華だった。天井にある大きなシャンデリアが目につく。キラキラと輝き、確かに婚約パーティーという場所にはピッタリだろう。床の絨毯もフカフカである。
立食式のパーティーのようで、豪華な料理が並ぶ。さすがに金持ちの料理は見た目も美しく美味しそうだった。肉料理ばかりのようだがこの料理だけだったら、日本人が食べても違和感が無さそうだ。
婚約パーティーの招待客達は、男の方が多かった。知った顔は一人もいないが、クラリッサはある男性を見てキャッキャと騒いでいた。
「ちょっと、舞台俳優のイアンがいるわよ!」
「誰ですか、イアンって」
舞台俳優など全く知らなかった。この国にはまだテレビもないし、芸能人と言える人は一人も知らなかった。
「かっこいいわ」
「ちょっとクラリッサ、また色ボケしないっで下さいよ」
プラムは冷静沈着で、主人の釘を刺す事は忘れない。クラリッサ騒いでいるイアンは確かに目鼻立ちが整ったイケメンではあったが、どこか作り物めいていてあまちり魅力的に見えない。どこか人形のような笑い方にも見える。
とはいえ、イケメンがいるので会場は華やかではある。他にも何人か女性が好みそうなイケメンが談笑していた。
「あら、クラウスじゃない!」
今度はプラムがはしゃぎ声をあげた。いつもクールなプラムにしては珍しい事である。クラウスと呼ばれた男はまだ少年と思うほど若い男だった。蜂蜜色の金髪に青い目をもち、御伽話に出てくるような王子様ルックだった。
「あ、プラムじゃん!」
二人は知り合いのようだった。クラウスはプラムにかなりフレンドリーである。
「こちら、隣国の王族のクラウス。私が元いた国でもお世話になったわ」
プラムはまるで弟にでも見るかのような視線だ。私たちもお互いに自己紹介を交わした。
「え! マスミって転移者なんだ!」
クラウスは上から下まで私の姿を眺めていた。ジロジロと不躾ではあるが、若い子ならこんなもんだろう。それに西洋風のルックスが多いこの国で私の容姿が目立つのは仕方ない。
「へぇ、マスミって面白いね」
「何が?」
クラウスが言う事は全く意味がわからない。
「目も髪も真っ黒なんて面白いな。歳は僕と同じぐらい?」
「こら、クラウス。女性の年齢を聞くもんじゃないわ」
かなり歳上のクラリッサの嗜められ。クラウスは少し静かになる。私はプラムと同年代である事を伝えると、顎が外れるぐらい驚かれた。
「ちょっと、クラウス? 失礼よ」
プラムにも叱られていたが、仕方がない。やっぱり日本人のルックス若くというか、幼く見えるらしい。ロマンス小説でもキティちゃんグッズをもつ日本女性を「幼い」と一刀両断されるシーンがあったのを思い出した。
そうこうしているうちに婚約パーティーが始まった。ついの会場にブラッドリーとソニアの登場だ。




