プロローグ
日本にいた頃、ロマンス小説ばかり読んでいたが、日本の小説も読む事もあった。高校の授業の国語のテキストに使われていた芥川龍之介の「芋粥」がなぜか好きだった。
生徒がこの話を話題にしていたので、興味本位に読んでみたが、なかなか主題も伝わってきて興味深い。
主人公の五位は平安時代の侍だ。当時のご馳走であった芋粥を腹いっぱい食べる事が夢だった。しかしいざ夢が叶ってしまうと、芋粥の匂いだけで吐き気を出たというストーリー。
ロマンス小説を読んで現実の恋愛に憧れたりもしたが、彼氏や夫のいる友達は浮気されたりお金や子供の問題を抱えていた。やっぱりロマンス小説のような女性に都合の良いだけの男は居ないようだ。
夢は夢のままの方がいいのかも知れない。
そんな事を思いながら、月日が流れ恋人はできなかった。バーナード・ショーという劇作家もこう言っている。
「There are two tragedies in life.
One is to lose your heart’s desire. The other is to gain it.」
意味は、「人生には二つの悲劇がある。一つは夢がかなわないことであり、もう一つは夢がかなってしまうことだ」とある。
「芋粥」やこの言葉を見る限り、夢は夢のままで置いた方が幸せなのかも知れない。
だからなのか、コージー村に来て何も変化が無いどころか三件の殺人事件が起こっても、あまり不幸に感じずに済んだ。
それに身分に相応しくない夢を叶えても、きっと幸せではない。
私の身の上のは夢のようなシンデレラストーリーは起きそう無いが、それでも別によかった。
ある日突然、パイロットやイケメン医師やホテル王などのハイスペヒーローに求愛されても私はどうしたら良いかわからないだろう。