不安
上司:村瀬さん、ちょっと会議室にいいかしら?
「はい、分かりました。」
珍しく、上司がお呼びだ。
会議室の扉を2回ノックする。
その音が廊下に響いて、なぜか緊張した。
上司:どうぞ
1度、深呼吸をしてから扉を開ける。
「失礼します。どうされましたか?」
上司:貴方、この事知ってる?
早速と言わんばかりに
週刊誌に書いてあるページを開き、とある記事を見るよう渡された。
「これは…」
そこには、桐谷さんの会社の名前があった。
そして、悪口が書かれていた。
上司:そう、貴方も知らなかったのね。
「この記事は、一体?」
上司:詳しくは、私からよりホームページに書いてあるわ
そこには、ハッキリ誤報との事が書いてあった。
しかし、上司は、苦い顔をした。
それもそのはず、記事の下には、沢山の誹謗中傷が書かれていた。
しかし、事実無根なわけだ。
すると、固まっている私に上司は、口を開いた。
上司:貴方の意見を聞かせてちょうだい?
このまま、契約を続行していくのか、それとも白紙にするのか。
「私がですか?」
上司:ええ、桐谷さんと1番関係があるのは、貴方だもの。
一任、してくれてるのは、嬉しいことだが、はたして、それだけなのだろうか。
たまに彼女の糸が読めない。
私は、少し考えてから重たい口を開いた。
「私は、続行していいかと、思います。」
上司:あら、なぜ?
「誤報と言われてます。それに我社にとっても、今ここで〇社様と契約を解消すると損になるかと思われます。」
上司:分かったわ、少し考えてみる。ありがとう
「はい、では、失礼します。」
その後、桐谷さんの会社との契約が続行になった。
会社の人も数人がいい顔は、しなかったが、少しだけホッとした自分がいた。
しかし、少し嫌な予感がした。
こういう時の嫌な予感は、当たることもある。
だからこそ、その不安を消しておきたい。
私は、気がつくと、ある場所に足を向けていた。
わざわざ休日に
なぜ私は、今桐谷さんの家の前にいるのだろう。そんな事を自問自答しながら、マンションの前へ
マンションは、403号室のはず
自分ですら何故なのかと聞きたくなる。
ピンポーン
〔はぁい〕
いつもより低めのトーンで返事が聞こえた。
明るく感じたから、てっきり高い声をしてるのかと思ってたけど、違ったようだ。
「ど、どうも」
〔え?!村瀬さん!!!なんで?!〕
「あ、こんにちは」
まぁ、そのリアクションが正しいよ。私が聞きたい。
〔えーと、どうぞ〕
戸惑った彼に不安が増す。
「あ、お邪魔します。」
桐谷さんに開けられたドアから入ろうとするとひじきちゃんが玄関まで来ていた。
「ひじきちゃん、こんにちは」
ワンワンワン
〔絶好調で吠えられてんな〜〕
「あははは、」
挨拶しにきただけなのにと思っていると
桐谷さんがひじきちゃんを抱っこして
〔とりあえず、上がり?〕
そう、優しい声で言っているが、どこか疲れているみたいだった。
周りの人の噂話をたまたま聞いた時、少し疲れて見えるって言ってたけど、
いや、これは、疲れてる。
「き、桐谷さん」
〔あ、そうや、ご飯でも食べていくか?ちょっと待っててな〜〕
と私に笑顔を向ける桐谷さんだが、前のようなキラキラした笑顔では、なかった。
〔ソファーでゆっくりしとき?なんか作るわ〜〕
「あ、あの!!」
〔ん?どうした?〕
聞いては、ダメかもしれない。
でも、彼が少しでも楽になるなら聞きたい
「…なにかあったんですか?」
〔え?〕
彼がハッとした。
「お節介かもしれませんが、もし、お力になれればと思いまして、お伺いしました。」
〔…〕
「最近、お疲れのようにお見受けしました。」
〔あ、ほんま〜?そんな疲れた顔しとったか?〕
「いえ、そういう訳では、ないのですが、勘です」
〔…勘ね〕
そう、ボソッと私から視線を逸らしながら彼は、呟く
彼が話したくないなら、聞かない方がいいのかもしれない。
なかなか言える事じゃないか。
しかも、他社だ。
妙に、冷静になり始めたので、謝罪をして今日は、帰ろうと思っていたら、
〔少し話すわ、飲みもんなにがええ?〕
「あ、えーと、なんでも大丈夫です。」
〔分かった、ソファーで待っててな〜〕
「あ、はい」
あ、いいんだ。
彼の何がそうさせたのだろう。
分からないけど、それで彼が楽になるならいい。
〔コーヒーでよかった?〕
「はい、コーヒー好きなので、」
〔そうなんや〜〕
とソファーに座っていた私にコップを差し出した。
彼に貰ったコーヒーをひと口飲み、彼が話すのをゆっくり待った。
〔村瀬さんは、もしかしたら聞いてるかも知らんけど、〕
「はい」
〔前に出張行ってたやん?俺〕
「あ、はい、福岡の方でしたよね?」
〔うん、そう、そこの会社さんと仲良くさせてもらってたんよ〕
「はい」
〔元々、上司が当たってたんやけど、俺と一緒になったんよ〕
「はい」
〔んで、2人で仲良くさせて貰って、その後、俺がそこの会社さんとの契約になったんよ〕
「なるほど」
〔まぁ、関西出身って事もあって、良くしてもらったんやけど〕
「…」
〔全てが無くなったんよ〕
「え、」
〔契約の件は、白紙にってなった〕
「本当ですか?!」
〔俺が上司からの降りてきた契約やから、一任させてもらっててん〕
彼も私と同じなんだ。
〔それが、こないだの出張に行ったらな〕
桐谷さんになにがあったんだ。
それは、数日前の出来事だった。
取引先:白紙に戻していただきたい。
〔何故ですか?!御社に取っても損は、ないはずです。〕
取引先:しかしねぇ、
その人は、桐谷と合わせていた目を逸らした。
〔…あの記事のことですか?〕
取引先:あぁ
〔その件に致しましては、誤報と
取引先:誤報だけでは、片付けられないのだよ。
〔えっ〕
取引先:世間もニュースや記事で名前は、聞くだろう。
今もまだその話をしているメディアだってある。
〔まだですか?!?!〕
取引先:あぁ、君たちと契約をすれば我社にも、影響がでる。
〔しかし、白紙というのは、延期するのは、いかがですか?今すぐにという訳では、ありません。〕
取引先:残念だか、上の決定なんだ
そういい桐谷の肩を2回叩いて会議室から出ていった。
「そんな事が…」
私は、その時、何も言えなかった。
〔噂ってだけで契約なしになったんよ?俺も真摯にあの人達とは、話してた。案件の話をさせて貰ったら、意見交流だって沢山した。その時にでた議題に俺ちゃんと勉強したし、優しい言葉だって掛けて頂いた、なのにただの嘘の噂を信じた、それで上司にもお偉いさんも大変やって、後になってちゃんと違いますって公式にゆーたけど、こないだ出張とか外回りしたら、真偽は、半々くらいやった〕
「…」
〔それで俺もまさかでな、ちょっと自信なくなってもーたんよ、まぁ、しゃーないよ終わった話やから〕
明るく話す彼に対して、私は、自然と言葉が出ていた。
「腹が立つ」
〔え?〕
「なんですか?!その会社?!本当に分かってない!!桐谷さんがそんな事するような人じゃないって分かるでしょ?!ただでさえ今大変だって時期に、なんでそんな考えに至るかな〜。腹立つ、訳分からない、本当ありえない、関わってて分からないってどういう事よ。あ〜!!もーイライラしてきた!!」
〔え?村瀬さん?〕
「人対人の話をしてるのに、なんでそういうのが分からないのかな〜!!!」
〔…フッハッハッハッハッハッ〕
「なっ?!笑いますか?!」
〔笑うよ〜、そこまで怒る村瀬さん初めて見たわ〜〕
「わたしは!」
〔ありがとう、村瀬さん〕
その言葉が本心から出てるのが、私には、なぜか分かった。
それから暫く彼の話を聞いた。
渡されたコーヒーも飲み終える頃、
ワンワンワン
急に吠え出したひじきちゃんにびっくりした。
〔あぁ、ご飯の時間やな〕
「長居してしまい、すみません。」
〔こっちこそ、沢山聞いてくれてありがとうな〕
玄関を出ようとした時
「お邪魔しました。」
〔送っていこうか?〕
「いえ、夜じゃないので、大丈夫です。」
疲れているのに、休みの日まで付き合わせてしまった。
「ゆっくり休んで下さい。では、失礼します。」
〔ほな、また会社でな〕
と言葉は、言ったが、彼の表情は、少し寂しそうにしていた。




