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 ――――数分前。


「ここがルルット城か……」


 ちょうどルルット城に、ジェードランとハピーが到着していた。


 バルスト城より小規模な城であるが、中々立派な城であった。

 城壁を高く、塔も高い。


「まあ、空の飛べる俺には関係のない話だがな」


 どの城も、世界に数十人程度しかいない三対六枚の翼を持つ者を考慮した作りにはなっていない。ルルット城でもジェードランの場合は、侵入可能だった。


「あの私は侵入できないのですが……」

「そうだな。お前はここで待機していろ。俺が助け出して来てやる」

「一緒に行きましょう! 一人くらい背負っても飛べるでしょう!」


 自分だけ待ちぼうけになることは、嫌であるハピーはそう懇願した。


「確かに俺くらいになると、一人乗せようが飛ぶことは可能だが、かなり疲れる。安心しろ。俺一人でも助け出して来てやる」

「そ、そんなわけには……私がマナ様の危機に颯爽と助けに入れば、私の評価もうなぎ上りになるはずです。そうすればマナ様にあんなことやこんなことをお願いできるはず……」

「欲望が駄々洩れだぞ……全くこんな奴じゃなかったと思うんだがな」


 ハピーは非常にまじめな女だというイメージを持っていただけに、最近のこの変わりようには、馴染めていなかった。


「とにかくここは俺一人で行く」


 ジェードランは翼を広げて空に飛び立とうとする。


「さ、させません!!」


 それを見て、瞬時にジャンプして、背中にしがみついた。


「お、おい! 降りろ!」

「死んでも離しません!」

「ク、クソ、とんでもねーことをする奴だ!」


 ハピーの執念を感じたジェードランは、仕方なくこのまま飛び続けた。一人乗せて飛ぶのは、中々難しいのだが、何とか城壁を飛び越えることが出来た。


「さて、マナはどこに……」

「あそこにおられます!」


 ハピーは窓を指さした。

 確かにそれっぽい子供が部屋の中でくつろいでいる。


「何か凄い快適そうだな……」

「良かったです。酷い目に遭われていないようで……」

「待て……これは助けに行かない方が良かったパターンでは? 助けに行ったら、逆に迷惑そうな顔して追い出されたりするんじゃないのか?」

「え?」


 ジェードランがかなり不吉な事を口にする。


「そ、そんな馬鹿な……」

「でもな……とりあえず様子を見るか」


 数秒間部屋の様子を見続ける。


「はぁはぁ……やはりマナ様は愛らしいです……」

「お前、至近距離で気持ち悪い息遣いをするんじゃねぇ。というより、流石に重い。疲れた。落っことしていいか」

「だ、駄目ですよ……! 死にますよ!」

「お前も翼族なら滑空くらい出来るだろ。マナは俺が見ておいてやる」

「い、嫌です! 離れませんよ!」


 空中でごたごたしていると、マナの下に男が。

 その男の手には剣が握られていた。


「こ、これやばくないですか……? 早く行ってください!!」

「言われるまでもない!!」


 ジェードランは急いで、マナのいる部屋まで飛んでいく、そしてガラスを破壊して突入。


 寸でのところでハピーが妨害することに成功した。





「ハピー! ジェードラン!」


 なぜここにいるのか。なぜジェードランはへばっているのか疑問はあったが、とにかく二人が駆けつけてくれて、何とか窮地を脱し、マナは歓喜した。


「くっ……何だお前らは……」


 ハピーに突き飛ばされたサイマスが、ゆっくりと立ち上がり剣を構える。


「下がっていてください。マナ様」


 そう注意しながら、ハピーは剣を抜く。


 ハピーを乗せて飛び続け、その後、全速力でマナの下に駆けつけたので、へばりにへばっていたジェードランも、ゆっくり息を整えて立ち上がり、剣を構えた


「勝ち目は薄いぞ。観念しろ」


 ハピーがサイマスを睨み付けながらそう言った。

 実際、ハピー、それからばてているとはいえジェードランを同時に相手にして勝利するのは、サイマスの力量では不可能に近かった。


「分かっている……しかしそれでも……あの姫は討たねばならない!」


 命を賭してでも、マナを討つ覚悟はとうにサイマスは決めていた・


 何があろうと絶対に討つと覚悟を決めて、ジェードランとハピーではなく、マナだけに狙いを定めて、剣を振るおうとした。


「させるか!」


 ジェードランは疲れた体を何とか動かして、サイマスの剣を弾き飛ばした。


 武器を失ったサイマスをハピーが、斬りつける。


「殺さないで!!」


 マナがそう命令し、ハピーは寸でのところで剣を止めた。


「その人、ルルット城の家臣の人かもしれないし、殺しちゃったら色々まずいかもしれないから、とりあえず生け捕りにして」

「か、かしこまりました」


 マナはサイマスが何者かこの時点では知らなかったが、身なりや翼が四枚あることから、それなりに立場のある者である可能性が高いと思っていた。


 それを殺してしまうと、ケルンの怒りを買う可能性があるうえ、サイマスから色々情報を引き出すなどの目的も考えると、ここは殺すべきでないと判断した。


 ハピーはサイマスをうつぶせにさせ、動けないように上からジェードランと二人がかりで抑え込む。


(この人を魅了してみようか)


 そう思ったとき、


「サ、サイマス!? あとは誰じゃ!? な、何が起こっているのじゃ!?」


 戸惑うケルンの声が聞こえてきた。


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