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(ケルンに会うと言っても……どうしようか……)


 現状、行動の自由は完全にはない状態だ。

 会うとしても、ケルンにその気がなければ、不可能だろう。


 向こうから来るのも待つのも、いつまで待てばいいか分からないし、自分からコンタクトを取りたいとマナは思った。


(ここに来るのは、あのメイドのシャーファだけ。彼女を魅了してから、ケルンに会わせてもらうよう頼むしかないか)


 シャーファが、ケルンに頼める立場にあるのかという疑問もあったが、これ以外の作戦がマナには浮かばなかった。


「失礼します」


 丁度シャーファがやってきた。


 扉を開けて、マナの部屋へと入ってくる。


 シャーファの手には魔道具が握られていた。

 最近シャーファが持っている謎の魔道具で、効果のほどは不明だ。

 鏡のようなものが中央に付いており、それが怪しい光を放っている。


 前世では白魔導士をやっていただけあり、ある程度魔法関連の知識はあるのだが、そのマナにもどんな魔道具なのか分からなかった。


 攻撃用の危険な魔道具ではないと、何となく思っているのだが、どうやらそうではなさそうだった。

 ただ、鏡を向けられると、悪寒をマナは感じていた。


(魔道具の事は今はいいや。シャーファを魅了しないと)


 マナはメイドの目を見つめて、情報を見る。


 名前 シャーファ・プシトマ 21歳♀

 好感度21 好きなタイプ 駄目な人 好きな物 花 趣味 料理

 性格 世話好き 尽くすタイプ


 好感度がすでに21まで上がっていた。

 駄目な人が好きだというので、ここ数日ちょっと世話をしてもらったので、それで上がったのではないかとマナは推測する。


(これなら簡単に魅了できるかも。だらけてて、世話してもらえば、それで上がるってことだろうから……でも、駄目な人好きで、お世話が好きってよく分かんないな)


 自分がだらけて他人に色々してもらうタイプなので、他人に尽くすとか世話をするのが好きだとか、そういう感覚が全く理解できないマナであった。


「シャーファさん、お菓子食べたい」


 マナは駄々をこねるように言った。


「ちょっと前に食べましたでしょ?」

「まだ食べたい、もっと食べたい!」


 子どものときに戻った気分になり、マナは駄々をこね続けた。


(これはあくまで好感度を上げるためだから……別にお菓子が食べたいではないからね)


 と心中でマナは言い訳をしていた。


「仕方ないですね。分かりました。持ってまいりますよ」


 そう言ってシャーファは部屋を出て、お菓子を運んできた。

 甘い菓子パンである。


「めっちゃおいひぃ……」


 マナは無我夢中で食べて満足する。


(って、満足している場合じゃない! 好感度を確認しないと)


 満足して大事なことを忘れそうになったが、思い出した。


 21→23に上昇。


(上がってるけど……何かしょっぱいね……どういうことなんだろ……)


 原因を考えるがマナには分からない。


 このペースでやってたらやたら時間がかかってしまう。


(そもそも、ケルンに会いたいと思っていると伝えてもらうくらい、そこまで好感度上げなくても出来るんじゃないかな?)


 そこまで重大なお願いではないので、現時点の好感度でも聞いてくれるのではないかとマナは思う。


「ねーねー、アタシ、ケルン様に会いたいんだけど、お願いしてきてくれる?」

「ケルン様に会いたいのですか? うーん、多分会ってくれないと思いますけど」

「どうしても会いたいの。お願い!」


 必死にお願いしてくるマナを見て、シャーは少し気が進まないようだったが、


「伝えるくらいなら別にいいですけど」


 承諾した。


「じゃあ、早速頼みに行ってきますね」


 そう言って、シャーファは部屋から出ていった。


 案外シャーファは、ケルンと気軽に会うことが出来るようだ。メイドなので、城主とはあまり話せないと思っていたので、マナは少し意外に思う。


 ケルンが会うと決めてくれることを祈りながら、マナは報告を待った。





「ふへへへへへ……可愛いのじゃ姫は……」


 ケルンは、シャーファの魔写具で撮影したマナの姿を眺めながら、気持ち悪い笑みを浮かべていた。


 魔写具のは、写し鏡と呼ばれるもので、被写体を写し、離れた場所にある印刷機で紙に印刷するという魔法具である。


 シャーファがリアルタイムで写しているマナの姿を、ケルンは思う存分楽しんでいた。


 そんなケルンの様子を、家臣たちが苦々しい表情で見つめていた。


「どんどん悪化してきてませんか?」

「う、うむ……このままでは……遠距離恋愛している恋人のように、会えない時間がより愛情を深めてしまっているかもしれん……これはまずいぞ……」


 サイマスは非常に不安な気持ちになってきた。

 このままでは、主ケルンが人間の姫に絶対服従してしまうかもしれない。


 魔写具で写したマナの姿を眺めるケルンは、どうも正気を失っているようにも見えた。


「可愛いのじゃあ…………ッハ!? わしは何をやっているのじゃ!?」


 ケルンは表情を引き締めながらそう言った。


 正気に戻ったとサイマスは喜ぶ。


「ケルン様! 正気に戻られましたか!」

「あ、ああ……恐ろしやマナフォース姫……完全に支配されるところであった」

「良かったです……このままでは最悪の事態になるかと……さあ、その写し絵を廃棄してください」

「そ、そうじゃな……」


 ケルンはマナの写真を見つめて、破り捨てようとする。


「ぐぬぬぬぬぬ……」


 しかし、どうしても心がブレーキをかけ、破り捨てることは出来なかった。


「だ、駄目じゃあ! 姫を破り捨てるなど出来ん! この写し絵は全て宝物庫に収めるのじゃ!!」

「……ケ、ケルン様~」


 サイマスはその命令を聞き、泣きべそをかいた。


 家臣たちが写真を全て宝物庫に収めた。

 そのあと、


「あのケルン様、報告したいことがあるんですけど、いいですか?」

 

 そんな時、メイドのシャーファがケルンの下へとやってきて、そう言った。


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