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完成品の僕は感情が欲しい  作者: もももんが
1/1

感情を教えてください


 「ルビウス爺さん、いる?」 


腰まである長い銀色の髪をひとつに纏めた青年が、店の奥に居るであろう店主にむかって呼びかける。


 「ん?おぅ!ここにいるぜ!今日はルデオの実が たくさん入ったんだ!買ってくか?スペース」


店の奥から店主が顔を覗かせて、スペースと呼ばれる青年に応えた。店主は爺さんと呼ばれているが、応えた声ははきはきしていて若々しい。


 「いいや、残念だけど、遠慮しとくよ。今日はブロコの花だけ買おうと思ってそんなにお金持ってきてないんだ。」


青年は申し訳なさそうに商品棚から一房とったブロコの花をルビウス爺さんに渡す。


 「そうか、また次来た時に買ってくれよ!ブロコの花一房だな、15リルだ。夕飯のスープにでもすんのか?」


 「そうなんだ。この時期のブロコはおいしいからスープに入れようと思ってたんだけど、家に全然なくて。はい、15リル。」


スペースは手に持った巾着袋から言われた額を払う。


 「まいどありー!いいな!ブロコのスープ、俺もカミさんに言って作ってもらうとするか。よし、家に帰ったら話すよ。」


ルビウス爺さんは、ブロコのスープを思い浮かべてジュルリと涎を吸った。もう夕方だ。皆、お腹が空いて今夜の夕食に思いを馳せているのではないだろうか。


 「!待って待って!ルビウス爺さん、ダメだよ‼︎帰ってすぐに言っても怒られると思うよ!」


スペースは慌てて、ルビウス爺さんを止める。


 「ん?なんでダメなんだ?」


 「だって、ルビウス爺さんが家に帰り着く頃ってかなり夜ごはんの準備進んでるでしょ。いきなり言っても準備に困るし、大変だと思う。明日作ってもらえるようにお願いしたほうがいいよ!」


 「なるほど、そうだな。カレラが怒るのは避けたい・・・明日作ってもらえるように頼むよ。」


ルビウス爺さんは,少し肩を落としてはぁと小さく溜息を吐く。スペースはそんな様子を見て苦笑した。


 「じゃあ,僕帰らなきゃ。レグルスおじさん待ってるし。またね!」


スペースはそういうと,店に背を向けて早歩きをして家路を急ぐ。スペースの家は,この市場からそう遠くはないが途中森を抜けなければならないため,まだ日が登っているうちに抜ける必要があるのだ。いくつか人通りの多い道を過ぎて,しばらくすると周りが静かになる。森が近づくにつれて、ひと気がなくなっていく。森の入り口に着くと,スペースは慣れた様子で草や花をかき分けながら進んでいく。5分ほど歩いた頃突然視界が開けた。目の前には煙突から煙を出している小さな家が建っていた。それを見ると、


 「感情追跡魔法及び表情筋運動の一時解除を行いました。只今よりフリーモードへ切り替えます。」


発せられた言葉に反応して、目から円の形をした緑色と赤色の魔法陣が現れて、一瞬金色に淡く光った後、さぁっと砂のようになって消えていった。

 言葉を発したのは、今は人形のように表情の無くなったスペースだった。



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