『全部君と同じ。』
男女の別れシリーズ3作目です。
投稿期間が空いてしまいました。
久々に見かけた君は、何もかもが変わっていた。
見たことのない服。
厳つい指輪。
新しいピアス穴。
君は好きな人の好きな物を好きになるタイプだったよね。
好きな人に染まってしまうんだよね。
メガネやめたんだ、
髪伸びたね、
少し痩せた?
そんなふうに笑ってたっけ、
歩くの早かったんだね、
タバコも変えたんだ、
香水なんて付けてなかったのに。
メガネ割と似合ってたよ。
短髪も好きだったな。
ちゃんと食べてる?
その笑い方好きじゃないな。
歩くスピード合わせてくれてたのかな。
あのタバコの匂いがまだ忘れられないよ。
君の匂いが遠くなってく。
今は誰に染まってんの?
君と目が合い、君に気づかれてしまう。
目が合った瞬間のその表情が、別れ際に見た表情のままで、そんな顔しかさせてあげられない不甲斐なさと、そんな顔しか見れない自分が嫌だ。
『久しぶり。』
君が話しかけてくる。
『香水変えたんだ。』
やっぱりわかっちゃうか。
『少し痩せた?』
痩せたよ。君がいなくなってから。
『髪、短く切ったんだね。』
長い方が好きって言ってくれる人がいなくなっちゃったから。
『別れてからさ、なんか変わったね。』
お互い様だよ。
「それはそっちもでしょ?」
『たしかに、お互い様か。』
今同じこと思ってた。
「そうだね。」
『ちゃんと食べてる?』
心配してくれてるのかな。
「前より食べなくなったけど、ちゃんと食べてるよ。」
『元気そうでよかったよ。』
そう見えるのかな。
「君も元気そうでよかった。」
君との会話に昔のような安心感があって、昔なかった壁ができてて、少し寂しくなった。
「じゃあ、またどこかで会えたら。」
『そうだねまたどこかで。』
お互い、連絡先の交換をしない“またね”は、また会えることを期待しているのか、それともまた会えても昔に戻ることはもう無いというものなのか。
手を振り、お互い背中を向けて歩き出す。
少しは前に進めた気がした。
君に“ありがとう”と伝えたいけれど、伝えたら君は振り返るだろうし、自分も振り返るだろうね。
こんな顔見られたくない。
こんな顔見たら君はまた心配してくれるだろうから。もうバイバイ。
心の中で、心の底から“ありがとう”だけは伝えさせてね。
“ありがとう。さよなら”
いつも誰かの共感を得たいなと言う気持ちで書いています。
短い文に誰かの気持ちが伝わっていたらいいなと思います。