事件の概容
「それで、お前の父親はどういう風に殺されたんだ」
「紅さんは最近ニュースで話題になってる通り魔って知っていますか?」
「アレだろ、後ろから刃物で刺して殺して逃げる」
「そうです、私の父はその通り魔の八人目の被害者です」
「なるほど。って、ちょっと待て、それじゃあ犯人の見当も分からないってことか?」
紅は呆れるような声で聞いた。
「いえ、これが」
そういって蒼はA4のノートを出した。
「これは?」
「父の日記です、どうぞ読んでください」
ノートは5、6ページのところに付箋が貼っていた。
10月25日
最近誰かに見られている気がする。
私は人に恨みを買うような事はしていないが……
10月30日
やはり見られているようだ。
いったい誰が……
11月2日
今日、私の携帯に脅迫電話があった……
ノイローゼになってしまいそうだ。
日記はここで終わっていた。
「つまり、お前は自分の父が誰かに狙われていたと言いたいんだな」
「はい」
「この日記は警察に見せたのか?」
「警察に言ったて、犯人が殺せるわけじゃありませんから」
蒼は首を振りながら言った。
「そうか、よし、じゃあ、もっと詳しい情報を手に入れるか」
立ちながらオレは言った。
「えっ、どうやって」
「付いて来ればわかる」
紅はそう言って、部屋から出て行った。
「待ってください」
蒼は紅の後を足早に追った。
ガチャッ
部屋には猫だけが残っていた。