プロローグ
血が流れている。
都内の裏通りに30代後半の男が腹から血を流している。
その血は色鮮やかな紅だった。
そこにいるのは血を流している男ともう一人、血が付いているナイフを持った20代の少年だった。
少年の名前は紅、もちろん本名ではない、紅は見ためは普通の少年で、ロングコートを羽織っていた。
ヴィーッヴィーッヴィーッ!
彼のケータイが鳴った、依頼人だった。
「依頼は終わった、死体はこっちで始末しとく」
そう、言い終わると一方的に紅はケータイを閉じた。
彼の仕事は殺し屋だ。
殺し屋。
裏の世界では頻繁に使われる言葉だ、表で起きている殺人事件の2割が殺し屋の仕業と言われている、まぁ、そんことを真面目に調べる命知らずはいないが。
そんな事を考えていると向こうの方から男が来た、男は30代前半で全身を黒い衣服で纏っていた、そして背中には大きな仏壇を背負っていた。
「よぉ、どうも毎度あり!」
男は低い声でそう、言い放った。
男の名前は佐藤という、本名か偽名かは知らない。
佐藤は処理屋と呼ばれている、遺体や人殺しをした時に返り血を浴びた衣服等、普通では処理できない物を処理するのを生業としていた。
「遅かったじゃねーか、何してたんだ」
紅は殺した男の衣服で血の付いたナイフを拭きながら言った。
「いや、前の仕事でアシッドがなくなっち待てな、商人から買ってたんだよ」
アシッドスプレー……特殊な弱い酸を撒いて、指紋や血液等のDNA情報を溶かすスプレーの事だ。
「そうか、それなら仕方がねーな」
紅はタバコをつけながら言った。
「じゃあ、オレはコレで」
佐藤は仏壇に死体を入れて言った。
「あぁ、またな」
佐藤は後姿で手を振りながら、いていった。
「さてと、そろそろオレも行くか」
そう思った瞬間、何かが、耳に入ってきた。
「二ャーー」
ニャーと確かにそう聞こえた。
見ると裏通りと表通りに接している部分に捨て猫がダンボールに入って置かれていた、最初は4〜5匹、いた跡があったがそこにもう、一匹しかいなかった。
そしてその横には高校生くらい女の子が倒れていた。
「はぁ?」
それと、同時にタバコが落ちた。
「はぁーー」
紅はため息をついた。
最近、20代になったばっかりだというのに苦労が絶えない今日この頃また、苦労の種ができた。
「どぉーすんべ、この状況」
紅は横目でベットに猫を抱えて寝ている少女を見る。
少女は16、17歳ぐらいで、今時の高校生とは少し違い化粧はまったくといっていいほどしていなくしかし、ショートヘアーの似合う美少女だった。
「しかし、何で猫なんて抱いてしかもあんなところに倒れていたんだ」
そんな独り言を呟いた瞬間に少女は起き上がった。
「おなかへった」
少女はオレの方を向いて言った。
「いろいろ、ツッコミてぇーがまぁ、いい」
そういってオレは台所に向かった。