表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Easy Go  作者: あいぽ
6/6

第6話 「対決 青山カンパニー! ①」

「な、なんやここ……」


北新地の飲食店の店主たちを取り返すべく、青山カンパニーが主催するパーティに足を運んだオレと田中だったが、そのラグジュアリーな雰囲気にいきなりド肝を抜かれてしまった。


華やかなEDMのリズムが会場を覆い、天井から放たれるレーザービームはクラブの中で幾重にも乱反射して、ド派手な光が彩り豊かにクラブを包んでいた。

そして、中央にあるステージでは、艶やかな衣装をまとった女性たちがセクシーなダンスを披露しており、その端では天井まで美しく伸びる煌めくポールに、水着姿の女性が手足を絡め妖艶なショーを繰り広げている。

また、会場のいたるところに、一度はテレビや雑誌で見たことあるようなグラビアアイドルたちが、来場者たちにシャンパンを配る姿があった。


ここの太融寺町のクラブは、もともとは梅田に古くからあった映画館やった。

それを、何年か前に改装して出来たクラブなんやけど、オレが昔オヤジに連れられて来た映画館のイメージは跡形もなく消えていた。

こんな風に、古き良きキタの街は、新しい時代の流れに飲み込まれてしまうんやろうか。


オレの心は、なんとも言えないもの悲しさと悔しさに溢れてきた。

あかん、あかん、やっぱ青山なんかにこの街取られたら、エライことなってまう。

オレは唇を噛み締め、近くにいた飲食店の店主にオレらの夏祭りのビラを渡そうとした時だった。


「まいど〜、俺、田中っちゅうねん。あ、あああああ、お姉ちゃん、あの大原優子ちゃいます。うっわぁ、めっちゃ可愛い〜。いや、ホンマべっぴんやで。テレビちゅうのはあかんな、こない可愛い大原ちゃんの魅力、テレビやったら全然伝われへん、いや、ホンマめっちゃ可愛いわ」

「ちょっと、もう、お兄さんそんなにじろじろ見て褒めないでよ、照れるじゃん」


……。


「いやいや、大原ちゃん、オンマ可愛いわ〜。ほんで、胸デカーっ! ほんで、オレはバカーってか!」

「きゃぁ、もう、お兄さん、扇子で胸ツンツンとかしないで下さい〜」


オレが、真剣にこの街取り戻さなと思ってんのに、田中のヤツ、グラビアアイドルと戯れてやがる。

しかも、相変わらず何が面白いんか分からんシャレとか飛ばしやがって。

オレは、怒りで田中を睨みつける。


「おい、田中、お前何しにここに来てんねん! ふざけてる場合かっ」

「ん!? なんや、お前、オレここ来たんグラビアのネェちゃんと遊ぶためやで。いや、だってアレやろ。お前、あんな暑いとこおったら死んでまうやん。まぁ、あの場は『青山から取り返す』ちゅうこと言うたけど、ああ言わなここに来られへんやん」


な、なんやてぇ!!

コイツのサイテーさは知ってたけど、ここまでとは思わんかった。

腹わた煮えくりかえったオレは、田中の胸ぐらを掴み睨みつける。


「おい、田中、ふざけんのもたいがいにしとけよ、コラ」

「……ったく、コレやからアホはどうしようもないわ」

「あぁーー!」


田中は、呆れたようにオレの腕を取り払い、さっきのグラビアアイドルからシャンパングラスをもらい、オレに差し出す。


「飲んでみぃ!」

「はぁ、お前っ……!」

「ええから、飲んでみぃ言うとんじゃ!」


オレは田中の迫力におされ、シャンパンを一口だけ口に入れ舌で転がす。


「なんや、このシャンパンがどないしてん?」

「……ったく、このアホまだ分からんのか」


オレは、田中が何を言わんとするか全くわからず、もう一度シャンパンを口に入れていると、さっきのグラビアアイドルがオレたちの前に何やら持って来た。


「お兄さん、コレでいいの?」

「あぁ、サンキューな、大原ちゃん」


田中は、おどけたようにグラビアアイドルの頭を撫でたかと思うと、いつになく真剣な表情で彼女がさっき持って来たものを、オレに手渡す。


「……これは」

「ああ、ここで配ってるシャンパンのコルクたちや。匂ってみ?」

「ーー!!」

「ほう、ようやくアホも気づいたか」

「こ、コレは……」


ーーブジョネ!!


ブジョネとは、出庫されたシャンパンやワインのコルクがごく稀に腐食してしまい、それにより風味や質が変わってしまうことである。

コルクは自然からできたものなので、そこには目に見えない菌が存在している。

そして、ブジョネはそのコルクの汚染とカビが原因になるのだが、これは防ぎようがない。

実際、フランスワインの全生産量の5~8%、また全世界のワイン生産量の3~7%がブショネであると言われている。

もちろん、ブジョネだと言っても飲んで害がある訳でもなく、そのまま知らずに飲まれている場合も多く、コルクを開けた瞬間にカビくさい香りがして素人でも分かるもの、そしてプロでさえもなかなか分からないものまである。


しかし、問題なのはここで配られているシャンパンのコルク全てが、カビ臭い匂いがすることだ。

ブジョネは、流通しているワインにごく稀に混じるもなので、こんなにもブジョネが集まる事はまずない。


まさか……!?


「なぁ、本宮、お前このコルクよう見てみぃ。全てに黒いヒビ割れが入ってるやろ」

「ーー!!」

「ブジョネはなぁ、どうしようも防ぎようがない、コルク開けてみな分からんもんや。でも、なぁ、こうも全てのコルクにはっきりとカビに侵されてる黒いキズが入ってるっておかしいと思わんか?」

「ま、まさか、青山はコルクを開けなくてもブジョネが見た目で分かるものばかりを、意図的に集めてるって言うのか?」

「さぁな……。普通やったら、一目でキズもんのコルクって分かるようなシャンパンは、絶対買い付けへんわなぁ。青山のヤツら……なんかきな臭いなぁ、本宮」


色んな考えを巡らすように静かに語る田中は、目を細め黒いキズがついたコルクをじっと見つめていた。


ーーーー次回予告ーーーー


「よっ、青山〜っ。お前んとこ、ブジョネのシャンパンばっか使うて、恥ずかしないんか!」


田中は、いきなりおちゃらけた声をあげ、ステージ上の滝沢に向かってコルクを投げつけた。


青山カンパニーの滝沢に反撃する田中!

いよいよ、物語はクライマックスへ突入。

北新地の店主たちが最後に選ぶのは、たいら商店か、青山カンパニーか!?


第7話「対決 青山カンパニー! ②」

大阪人、ナメくさったらあかんど、コラぁ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=983195569&s
次話に期待して頂けましたら
クリックお願い致します
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ