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ノーブルカラー  作者: ライト
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第一章 巣立ち 5

「ふぅ〜…とりあえず2人とも少し落ち着こう。僕もこの状況には混乱してるけど、君達は騒ぎすぎだ!そんなんじゃ考えは何も浮かばないし、纏まらないし、イラつくし、もし次騒いだら……わかってるよね?」



ミスティとボストフは手を口に当て、声を出さないように強制的に閉じていた。

ミゲルの話が終わるとお互いに顔を見合わせ、すぐさまミゲルに向き直り、コクコクっと何度も頭を縦に振る。


ここで素直な態度を示さなかった場合、ミゲルからの執拗な説教によって、恐らく2、3日は引きずるような精神口撃を受ける可能性がある。

実際にカルナック村の危機が迫っているだろう今の状況下で、すぐに精神口撃はしないにしても、後に必ず何かのタイミングで説教されることは確定する。

それを避けるためには素直にミゲルに従うことが唯一の手段であった。



「まぁ、とりあえずその話は置いておくとして、これからの僕たちの行動について話してもいいかな?」


「「おぅ、聞こう。」」


一瞬にして、話題を変えたミゲルの真剣な表情に、ミスティたちも真剣な顔で答える。



「じゃあまずはボストフ、今モンスターがいた場所と村の中間地点に目掛けてブライトを放ってくれ。色は危険を表す赤で!」


「わかった。」



ブライト。

それは、いわゆる狼煙を上げる魔法(スペル)のことだ。

光の球体を作り出し、それを空に打ち上げ炸裂させると、暫くの間そこに光が留まる効果がある。

光は自らの意思で色を付けることが可能であっり、また炸裂後の光の大きさも変えることができる。


また、幼少期にスペル、スキル発現を試すことに使われる初級技法ライトの応用でもある。

指先に小さな光を作ることが可能かどうかで、視覚的に発現できたかを判断する。

体内に留め置くという点で技法の才があるかを判断し、それを放出できるかで魔法の才があるかを確認する。

あくまでも簡易的な素養判断のため一概には言えないが、ライトが発現できた時点でスクールへの入学が許され、より高度な精度の高い魔法、技法を習得していく。


ブライトは、そこからの修練により、指先から離れた場所に飛ばす、次に狙った位置で炸裂させる、色を付ける、大きさを変えるなどの調整を行うことで、初めて使用できる魔法である。




ミゲルに言われ、すぐさま視線をモンスターがいた北側に向け、そこからスーっと視線を流し南側の村を確認し、そこから中間辺りに目星をつけ、右手の人差し指を前に出し狙いを定める。

腕は若干上向き気味に構えて、指先に意識を集中し、そして……放つ。



「ブライト!!」



ボストフの指先から拳ほどの赤色の光の玉が発生し、指先から射出される。

まるで花火のように、空気の層を突き破るがごとく、ヒューっという音をさせながら、目標地点に到達し、破裂する。


それから、ボストフは村の方に視線を向け、しばし待つ。


10秒ほどだろうか、村から警戒を示す黄色の光を確認し、すぐさま馬車の方に駆け出す。



「気づいてくれたようだな。」



村で警備をしている仲間に無事伝わったなと安堵し、ボストフは独り言ちた。





ボストフが馬車から離れた直後、ミスティに対してミゲルは説明を続けていた。


「ミスティ、ボストフが戻ってきたらすぐに馬車をだせるように準備してほしい。向かう先は、目の前に見えるあの1番森側に飛び出ているあの場所だ。そして、今から馬に魔法をかけるから、驚いて暴れないようになだめてほしい。いいかい?」


ミゲルが指差す先は、このまま道なりに走ればたどり着くことができる。

何もせずともたどり着けるのに、なぜ馬に魔法を?と思ったが、話の途中からすでにミゲルの手は光り始めており、荷馬車に駆け込んできたボストフから村からの反応を確認すると、すぐ様魔法を発現させた。



「いくよ、アクセラレート!」



直後、3人と2頭の足元が輝きだし、ゆっくりと光が集束して足先から膝までを光が覆い定着した。


「走るスピードを上げる魔法だよ。普段より速く走ることができるから馬たちが転ばないように、しっかり手綱で操作してあげて!たぶん登りきるまで効果はあるはずだから、そのまま下山して街まで行って助けを呼んできて欲しい。わかったかい?」


「あぁ、わかった!じゃあ、行くぞ?」


振り返ってミゲルに返事をすると、真剣な表情で頷き返された。

ミスティは正面に向き直り、しっかりと手綱を握りしめ馬を歩き出させた。

魔法の効果を確認するため、歩行から並足、並足から早足、とゆっくり速度を上げていく。そして、早足から駆け足に変わった時、荷馬車を引いているとは感じさせないほどの速度で山道を激走する。

山道に散乱する石ころで車輪が跳ね、荷馬車の揺れも大きくなってきている。

それをなんとか抑えるべく、ミスティは山道の状況と二頭の挙動、荷馬車の挙動に注意を払い、操作に集中している。



その間、ミゲルとボストフはこれからの行動について打ち合わせていた。


「ボストフ、これから僕たちはあの崖から飛び降りて、真っ直ぐ森を突っ切るよ。たぶん最短距離で豪鬼達に接近することが出来ると思う。

そしておそらく、村のみんなは狼煙を見て異変に気付いているはずだし、何人か様子見に来るはず。できれば先に合流して、状況を直接伝えたいとこだけど…そこは臨機応変に、だね。」


「ああそうだな、村からじゃ森の木が高すぎて、奥まで確認しずらいからな。できれば様子見に出した人手は多くあって欲しいとこだが…。来て三人くらいか?」


「たぶんね。だから決めたよ。とりあえず僕たち二人で時間を稼ぐ。注意を引きながら村から遠ざけるように逃げ回る。街から助けが来るまで、何とか凌ぐしかない。」



「おいミゲル、もうすぐ着くぞ!」



ミスティが指定されたポイントに近づいたことを知らせると二人は荷馬車の右後方、崖側に近づき飛び降り体制を整える。


「そのまま速度緩めないで!ボストフ、下に着いたら迷わず全速で付いてきて!そして、ミスティ助けを頼むね。」


「わかってるよ!そっちこそ、無茶するなよ!死ぬ気はないんだろ?」


「当たり前だ!」「当たり前だよ!」


ミスティは一瞬だけ振り返って二人の顔を見やる。

薄っすらと笑みを浮かべていたが、すぐに真剣な表情に変わり、三人とも頷き合う。


ミスティは正面に向き直り、左のカーブに差し掛かったところで崖に飛ばされないよう操作に集中し、二人はカーブを曲がる遠心力を利用して「行くよ」と言う合図とともに外に飛び出した。


途端、重量が軽くなり、更に速度が上がり始る。

左右に揺られ、上下に跳ね、荷馬車の挙動は激しくなるが、それをどうにか制御するためミスティは全神経を集中する。

そして、うねる山道をオートリードへ向け、全速力で駆け上がるのだった。








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