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ノーブルカラー  作者: ライト
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第一章 巣立ち 2


「オートリード」。


カルナック村から馬車の移動でおよそ3時間ほどの距離にある。

人口はおよそ30,000人の商業、農業、林業を中心にして栄え、特に農業においては様々な方法を積極的に取り入れ、国内生産の50パーセントを超える麦、根菜類の生産量を可能とし、品質にもこだわっており、多くの人々から称賛を受けている。


また、いわゆる特産品が多種多様にあることや、ある程度保存が利く玉ねぎや芋類は、国中のみならず、他国に輸出されているものもある。

ミスティ達の荷馬車の中にも、カルナック村特有の特産品があり、数も少ないため、かなり高価な値段で取引されているものもあったりする。


そして、国の事業として、他国への輸出なども行っていることから、多大な利益を生み出す、一大産業となっている。

ミスティ達が暮らすこの国はそれほどまでに農業に力を入れて発展してきた。





現在、ミスティ達は荷馬車で移動し、かれこれ30分ほど進んだ頃。

道は舗装されておらず、小石が所々に転がっているが、凹凸はそれほど酷くないため、荷馬車はガタガタ音を鳴らしてはいるが、軽快に進んでる。

間も無く森を抜け、少し開けた場所が見えてくる。

その先にはこれから越える山道があり、岩壁を右上がりに登るように道は続いている。

一行はいつものように山の登り口付近で10分ほど休憩を入れ、山を越えるつもりをしている。


ミスティは馬を止め、荷馬車に異常がないか確認を始めると、ミゲルが近づいて話しかけてきた。



「どうだい?、これから一気に山越えだけど、馬達の様子は大丈夫かい?」


「あぁ、いつものことだし、問題ないな。むしろ、ボストフと久しぶりだからか、こいつら機嫌がいいみたいだ。」



横で聞いていたボストフは「本当か?」と嬉しそうな顔をして、荷馬車の自分の荷物から果物を取り出し、馬達に与え始めた。



「用意のいいことで。」



ミゲルは苦笑いしながら肩を竦め、ボストフからミスティに視線を移した。

そして、少し突っ込んだ話があると切り出した。

ミスティはわかったと言い、2人はボストフから少し離れた木陰に腰を落とし話し始めた。



「君は、このままでいいのかい?」


「このままで、って言うと?」


「君は、このままこの村でこんな生活を続けていくのかい?って聞いているだ。今から向かうオートリードや、他の街で暮らしたいとか、違う仕事に就きたいとか、そんなことは考えていないのかい?」


「ん〜考えたことないなぁ、はははっ」



あっけらかんと迷うことなく返すミスティにミゲルは「そうだよね…」俯き加減に言う。

そして、少し力無く言葉を続ける。



「ミスティには、この村の、いや、この国の呪縛がかけられているように思えるんだ。土の国ヴィグラントの…。」


「いや、おいおい、そんな大層なことはないだろう。何を突然…。」



ミゲルの言葉に驚き、即座に言いかえしたミスティ。

ただ、ミゲルの表情はどこか申し訳なさそうな表情をしている。




――――――――――――――――――――――――――




ミゲルが言ったこの国の名。

「土の国 ヴィグラント王国」。



この世界における、魔法(スペル)技法(スキル)が持つ五属性、火、水、風、雷、そして土。

その五属性の名を冠した五代大国が存在し、互いに同盟を結び世界を納めている。

同盟とはいえ、各国同士の主義主張の違いや昔からの因縁もあり、水面下では様々な問題が起こっている。

また、各国が抱える従属国や、どこにも属さない少数民族など、人の抱える問題は多く、争いは絶えない。



そんな中、同盟を結ぶに至った明確な一つの理由がある。



それは、人が生きる上で最大の脅威「怪物(モンスター)」の存在。


怪物(モンスター)の存在に対抗するため、人は協力し合い、助け合って生きてきた。

怪物(モンスター)の出自もはっきりした理由は不明だが、怪物(モンスター)が現れたのは今から1000年以上前の事だと言われている。

怪物(モンスター)が姿を現した当初、抗える者などおらず、人の歴史は潰えると思われていた。

しかし、それから間も無く、人間の中にも突然変異した者が現れる。



後に、十賢者と呼ばれた十人の人間。



それは、一つの村で生まれ育った十人の若者たち。

彼らは自分達の変化に気付き、皆で悩み、鍛え、脅威に抗うことを誓ったと言われいる。

彼らは魔法(スペル)技法(スキル)の元となる「原始の力(プロトフォース)」を行使して、人間の脅威と戦い、絶滅の危機を回避することができた。



その際、多くの同胞を救うため、十賢者は散り散りに分かれた。

各々が孤軍奮闘し、それが切っ掛けとなって村が街が、国ができあがった。

結果、現在の五代大国の礎を築くことになったと言われている。

同時に、十賢者の血は長い年月を掛けて広まり、世界各地に魔法(スペル)技法(スキル)が行使できる者達も増えていった。



そして、ミスティの生まれ育ったカルナック村は、その十賢者の1人が作った、始祖の地と言われている。




――――――――――――――――――――――――――



ミゲルは少しの沈黙の後、ミスティに自分の考えを話し始めた。



「僕たちの村は隣町からそんなに離れてはいないかもしれないけど、こんな山々に囲まれた、ある意味辺境にある。始祖の地と言われているけど、先代達はもっと開けた世界に場所を移して、発展を続けている。僕自身、魔法(スペル)の力に目覚めて、スクールで学ぶことができたから、いろんな景色をみて、いろんな経験ができたと思ってもいるよ。」



そこで、ミゲルは顔を上げ、ミスティの眼を見て話しを続ける。



「でもミスティ、君は魔法(スペル)の発現が遅かったと言うだけで、僕たちが見た光景を見ることができなかった。スクールでは、世界の人々の7割が魔法(スペル)技法(スキル)を発現できるようになったと言ってたけど、実際にはちゃんとした教育も受けられていない人が大勢いて、今も怪物(モンスター)の脅威に震えている。カルナック村はそれが顕著に表れていると思うんだ。」



「まぁ…そうかもしれないな…。」



ミゲルに同意したミスティは、自分を含めて魔法(スペル)うまく行使できない、または全く素養のない村人の顔がよぎり、下を向いて答えた。






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