第65話 地上での戦いって感じ
遅れますた☆(*ノω・*)テヘ
…………はい。すいません。
地上に降りたカートスの出鱈目っぷりに驚きながら、ニールは自身が発動させた防御魔法を眺めていた。
魔法が意思を持つ。そんな事があるのか?と思う反面、まぁ異世界だし。何でもありだろーなー。と、投げやりに思う気持ちがある。
防御魔法を突きながら、そんな益対もない事を考えていた時だ。
「ニールにぃ?あの人は誰?」
ニールに声を掛けたのは彼の妹、犬獣人のレトだ。
視線は地上のカートスを見ているが、その声は少しばかり緊張の色が伺えた。
ニールも視線を地上に戻し、自身の魔法に「アレは任せたよ」と、小さく呟いてからレトの隣に移動した。
「知ってるって言うか、ある意味俺自身だね」
特に気負うことも無く至って気楽に告げられた返事に、レトは驚愕に目を見開き、マーサ女王は納得したような、それでいて理解が出来ないと言った表情をしていた。
ニール自身は内心で、この先の展開を半ば予想し、それでも何方に転ぶかワクワクしながらレトを見ていた。
だが、レトが何かを言う前にマーサ女王が言葉を発した。
「私は下に行くわよ?アイツに取られそうだし」
ニールが片手を上げて返事とすれば、その場から地上に向けて勢い良く飛んだ。
先程迄の複雑な表情は鳴りを潜め、今は輝かんばかりの笑顔が咲いていた。
「あ、そう言えば……こうやって乱入する時に彼は決まって何か言ってたわよね…………。確か…………ダイナミック・エントリー!!!」
言いながらシーガン目掛けて落下するマーサ女王。
上で見ていたニールは苦笑混じりに(おぉ、リアルなメテオダイブだ。……そしてまさかの白と青のストライプ柄かよ)と、やや勘違いな感想を抱いていたが。
ちなみに。ニールがストライプ柄と言ったのは、下へ真っ逆さまに飛ぶマーサ女王の長いスカートの中を見た感想だった。
…………リリトがニールを凝視しているが、それは置いておく。
マーサ女王と入れ違いにやって来たのは、複雑な軌道で飛んでくるレーザー。
だがニールは勿論、レトや管理者達はそれを全く意識していない。
まぁ、レトの場合はそれどころじゃないと言うのが大きな理由だが。
「ニールにぃ自身?どういう事?」
ゆっくりと視線をニールに向けたレトの顔は、様々な感情がない混ぜになり、ほぼ無表情と言える顔をしていた。
それにニールが答えようとした時に、防御魔法の外で激しい音と、色とりどりの煙を背に新たな乱入者達が現れた。
「説明しばはぁ!?」
と、同時にこちらに殺到していたレーザーのいくつかが直撃した。
他のレーザーは防御魔法に阻まれて消滅する。
今度は全く破られることなく防いだのを見るに、この魔法は成長しているのだろうか。
それを見て騒ぐタニーシャは最早放置で良いだろう。
だが、レトは現れた乱入者の一人に釘付けで、ニールも呆れた顔をして彼等を見ていた。
「いってー……。いきなり何なん?」
「タイミングバッチリかと思ったらコレかよ」
「いやいや。ある意味バッチリじゃね?」
3人の内、二人は派手なピエロの格好をして、残りの一人はTシャツにGパンと、この異世界からするとかなりおかしい格好をしていた。
「えーっと。右が鈴木で左が加藤であってるよな?で、お前は何しに来たん?」
問いかけられたGパン姿の男は、気楽に答えた。
「リアル無双ゲーが見れるってなれば来るっしょ!」
その表情は場違いな程の笑顔に彩られているが、ニールの横に居るレトを見やり、そちらにも声をかけた。
「お?そっちがもーもー?随分変わったなー。ハイレベルなコスプレしてる感じか?」
気楽に声をかけた男に、レトは飛び出していた。
「こうにぃにぃ!!」
ガシッと男、鋼詞に抱き着いた。
些かニールと会った時より嬉しそうなのは仕方が無いだろう。
なにせ、あの時は既にニールの顔や背丈は作り変えられていたのだから。
それはさておき。
彼等が出て来たのなら、レトへの説明を丸投げしても問題無いだろう。
そう考え視線を地上に移し、ある物に気付いた。
(あれは……………………。いやいや、それは駄目だろ。てか隠れる気無しかよ)
ニールが見たのは、カートスやマーサ女王では無く。撤退中の部隊のその先。
そこにはニールの愛車のバイクに乗って草原を疾走する人物が居た。
風にローブをはためかせながら、ノリノリで蛇行運転をしているのはニールの本体だった。
自分の事ながら頭を抱えたくなる状況を見なかった事にして、カートスに視線を移す。
そのカートスは少しばかり苦戦していた。
相手はタダの龍族。だが、その胸にある龍玉が厄介だった。
異様な光と脈動をするその玉が、ドラコに力を与えているのだろう。
龍玉から伸びた血管の様な物が脈打つ度に、ドラコへと力を送り込んでいるのだ。
それは少し前に鈴木が創り出した筈の龍皇玉。なぜココに有るのか上に現れた鈴木に問い詰めたくはあるが、何と無くその理由も分かるからどうでも良いかと、考えるのを止めた。
カートスが思い描いた理由は当っていた。
楽しそうだから。
只それだけの理由だ。
ドラコから繰り出される爪撃を躱し、打払い、防ぎながらどうしたものかと考える姿は余裕すら有りそうに見えるが、攻め難さでは余裕はなかった。
「悪食・走食」
確認の意味合いで放たれた神速の一閃は、ドラコの体に当たらずにすり抜けて行く。
「効かねぇのが分からんのかアホが!」
振られた爪撃を空いた手で受け、勢いに任せて後ろに飛んで距離を開ける。
そうして空いた間を利用してカートスは打開策を考える。
こちらの攻撃はすり抜ける。だが相手の攻撃は当たる。
ならばと、攻撃が当たる瞬間にこちらの攻撃を当てようとしたが、それすら無意味。
けれども相手の攻撃を切払う時は、しっかりと当たっている。
なるほど。ニールが……いや、自身が考えそうな無敵っぷりだ。
ゲームでは良くある無敵化の1つだ。
自身への当たり判定を無くしているのだろう。そうなれば如何なる攻撃も意味を成さない。
だが…………。
「次はちゃんと受けた方が良いぞ」
刀を抜き放ち、足元へと突き刺す。
ドラコを見る鬼が笑った。
「悪食・無幻食」
刀がその周囲を侵食する。
ズブズブと大地に沈む、スラメブル自身とも言える刀。
大地が喰われ、空が喰われ、空間が喰われていく。
二人の周囲は、一種異様な光景を創り出した。
だが、ドラコはそれすら意に解さず歩いて来る。
喰われた大地を踏みしめ、喰われた空を翼が掴み取り、喰われた空間をその存在で満たし。
「ヌルい」
言葉と共に放たれた一撃は、カートスを激しく打ち据え吹き飛ばす。
ドラコも共に飛び、距離を開けずに攻撃を繰り返す。
その連撃は苛烈を極め、カートスの鎧が、面が割れていく。
だが、割れた箇所は瞬時に元通りになる。
何とか受け流そうと身を捩り、新たに生み出した刀で切払うがそれも長くは続かず、その爪に薙払われていく。
カートスは苦戦していた。
シーガンは困惑していた。
自身に戦いを挑んで来たのは只のエルフ。
女王とは言え、コチラは覇者。
同じ覇者同士、もしくは、対管理者でも無い限り苦戦などしない筈。
いや、苦戦どころかまともな勝負にすらならないだろう。
そもそもこの世界の覇者は神に等しい存在になる。
そんな自身に対等いや、僅かながらに圧倒してくるこのエルフは何者なのか。
覇者仲間にはエルフも居るが、そいつは精霊魔法主体で、間違っても徒手空拳で戦うような奴じゃない。
マーサ女王から繰り出される拳や蹴りを防ぎ、躱しながらシーガンは困惑する。
その腕に響く衝撃も、躱した風圧で押される身体も理解が出来ない。
こんなにも強いエルフが居たとは。
困惑し、次いで………………笑った。
「はーっはっはっは!!良い!良い!良いじゃねぇか!」
繰り出されたマーサ女王の拳に自身の腕を当て、勢いに任せて振り払う。
そうして出来た僅かな隙きに、飛び退く事で間を開ける。
「精霊魔法を使わねぇのは手加減かと思ったが、そうじゃねぇんだな!」
シーガンのその言葉にマーサ女王はしれっと答えた。
「あの子達は置いてきたから使わないだけよ」
マーサ女王の言うあの子達とは、現在エルフの国で国王を折檻……もとい、鍛えている精霊達だ。
つまり、万全な状態では無いと言う事。
その言葉はシーガンにとって、愉快な物ではなかった。
「…………じゃあ何か?本気じゃねえと?」
その顔にはありありと怒りの感情が見えていた。
だが、次いで放たれたマーサ女王の言葉に困惑した。
「いえ?私は本気。こっちの方が性に合っているから……よ!」
一息に距離を詰め、激しく殴打するその姿と威力は、とてもでは無いが手加減している様には感じられない。
自身が本気では無いにしても、防戦一方になるなど。
訳が解らなかった。
半精霊、もしくは精霊と言われる程に精霊達と親和性が高く、精霊魔法を大の得意とするエルフ。その女王ともあろう人物が拳での肉弾戦が得意と言う。
…………シーガンは困惑していた。
次の話と少しばかり絡めようと、ストックしてたら遅れました。
いや、それだけじゃ無いんですけどね?
両眼に眼帯をして白髪の某アンドロイドのゲームをやってまして……。
クッソ可愛いですよねー(*´ω`*)
あ、次のが年内ラストになるかと。
お読み頂きありがとうございます。




