第63話 覇者との邂逅!って感じ
「それで、アレの対処は任せて良いのかしら?」
魔法で盛り上がっているニール達に、マーサ女王が南の方角を指しながら確認する。
いや、この場合は『どうせアレも織り込み済みなんでしょ?』と言った意味合いが含まれている為、確認と言うよりは他の者達への周知だろう。
皆がその言葉を受けて視線を向けると、そこには人と龍族の混成大部隊が向かって来ている所だった。
獣人や魔人、エルフにドワーフが居ない所を見るに、各国で足並みは揃えられなかったようだ。
まぁ、エルフはトップがここに居る為敵対する事は無いし、ドワーフについては中立を宣言していたから分かるが。
「あー、やっとか。あの人数だと時間も掛かるか」
「ニールにぃ知ってたの!?どうすんのアレ!」
「マスター、私が焼き払いますか?」
「妾達は傍観させて貰おうかの」
「つか、いらねーだろ。明らかに過剰戦力だって」
レトは慌て、リリトはやる気満々。
アリスト達管理者組は見物する気。
マーサ女王は…………。
「私はやらせてもらおうかしらね」
分かっていた事だ。バトルジャンキーの考える事など。
おそらくリリトも多少似てる所が有るのだろう。
腐っても母娘と言う事だ。
と、そうしていると進軍中の部隊から魔力の高まりを察知。
「最初は小手調べかな?……んじゃあ、ちょい詠唱で。城壁」
ニールが呪文名のみを唱えると、周囲に光る壁が現れた。
それは正に城を護る城壁。
堅牢な城壁を穿つのは地上から放たれた無数の魔法にブレス。
数万以上の大部隊から放たれたそれを、光る壁が防ぐ。
「次は厳しいかもよ?」
マーサ女王が好戦的に笑うと、地上の一画から凄まじい光弾が放たれた。
それはニールのキャッスルウォールと相殺して消えた。
「おー!中々やるねー。今の誰だか分かる?」
自身で調べれば直ぐに分かるが、あえてマーサ女王に聞いてみるニール。
「今のは覇者の一人、昂凰殱天のシーガン・グリガルドね。あ、私の獲物だから手を出したらだめよ?」
聞くやいなや、ニールはその場所に視線を移しブツブツと呟いた。
「ストーク、索敵が妨害されてたエリアは?」
(一箇所無くなってるね)
「て事は、他の場所も覇者が居るって事か」
(そんなとこだね。あ、結構強いから気を付けてねー)
と、そんな事をしている間に覇者が動いた。
「ニールにぃ!何かヤバイのが飛んで来るんですけど!?」
「大丈夫。次はかなり強めに行くよー。マナジは何もすんなよ?…………某は我等を守護する者也。何人たりとも汝の守護を抜く事能わず。王国の守護防壁」
短めではあるが、詠唱付きのニールの防壁。
効果は凄まじく、先程の城を護る城壁よりも堅牢な国を護る防壁が空中に居る彼等を包む様に幾重にも展開された。
「あら?以前見た時と少し違うわね?」
マーサ女王が呟くが、その声はもう一人の声で掻き消された。
「何なんですかこれ!?アホですか!アホなんですね!?意味が分かりません!弟子にして下さい!!」
タニーシャが暴走気味だった。
その防壁に斬り掛かる覇者。
斬馬刀よりも少しばかり大きい剣を叩き付ける様に振り下ろした。
「おぉー。セイントと良い勝負じゃね?」
「バカは休み休み言え。私はもっとスマートだ。お前の方が力押しで似てるんじゃないか?」
エイトとセイントが感想を言うが、その様はかなり落ち着いている。
覇者の攻撃が防壁に当たり、激しく火花を散らすが破れる気配は無かった。
「……硬ぇな。硬ぇじゃねえか。良いじゃねぇか!」
覇者は獰猛に笑い、更に力を入れた。
一応人族なのだろうその身体は、はち切れんばかりに筋骨隆々としており、顔には至る所に傷痕があった。
一際目を引くその頭は、スキンヘッドではあったが半分が焼けた様に変色していた。
「ニールにぃ、大丈夫なの?」
心配そうにニールの近くに来たレトが呟いたその時。
防壁の第一層が砕けた。
「くははは!!まだまだ行くぞオラッ!!」
覇者のシーガンが全てを叩き割ろうとしたが、予想外の事態が起こった。
まるで、割られた事に激怒する様に防壁が激しく回転を始めた。
「あーあ。やっぱ詠唱付きだとこうなるかー」
「そうそう、こんな感じ。大分近くなったわね」
「マスター何したんすか!?」
驚くリリトやレトを余所に、防壁の回転は激しさを増していき。
「クッ……んだよコレ、最高に良いじゃねぇか!!」
勢い良く弾き飛ばされながらも、その顔に笑みを湛えるシーガン。
そのまま地上部隊の前方へ叩き付けられた。
防壁は緩やかな回転を続け、破られた第一層を自己修復。
たった一層とは言え、破られた事を申し訳ないと判断したのか、弱く光が明滅していた。
「…………何なんですかコレ……。魔法が自我を持ってる?……意味分かんない」
タニーシャは既に考えるのを半ば放棄していた。
「無事守れたんだから気にしない気にしない」
自身が行使した魔法に話し掛けると言う、珍妙な光景もそれに拍車をかけているのだろう。
防壁は回転を止め、元の形態に戻った。
「貴方ってホント規格外よね。今までの管理者でもこうはならなかったのに」
「マスターマジパネェッス」
素が出ている事を忘れているのか、リリトも呆然としていた。
「じゃが、下の連中はどうするのじゃ?」
地上部隊を指差しながらアリストが問うが、ニールが答えるよりも早く、マーサ女王が答えた。
「暇だったから仕込みは終わってるわよ?」
なんて事は無いと言う雰囲気を出しているが、それに反論したのはニール自身だった。
「その仕込みはキャンセルで。対大部隊戦とか憧れるじゃん!アレは俺のだからな」
言いながらニールは腰に挿してあった刀を抜き、その名を呼ぶ。
「カートス」
刀から手を話すと、そのまま地上へと落ちて行く。
途中で形を変え、巨大な土煙と共に大地へと落ちたそれが立ち上がる。
その出で立ちは、メタリックカラーの青い甲冑を纏い、顔には鬼の面を被り、日本の創作や昔話に出てくる鬼武者だった。
スラメブルと融合し、本来の姿となったカートスは、ただ一言だけを呟いた。
「御意」
上空に居るニール以外には聞こえなかったであろうその呟き。
それが聞こえたのか、聞こえなかったのか。マーサ女王とリリト、レトと敵大部隊が驚愕に染まる。
「アレは!?……いえ、あの人は」
「まさか…………でもあの姿は見間違えません!」
「なんで……ニールにぃがあの人を……?」
この世界に居る者には少なく無い因縁がある人物像だった。
地上では更成混乱が巻き起こっていた。
話が動いた感じかな?
次は地上部隊視点です。
お読み頂きありがとうございます。
あ、評価とかしてくれても………………いえ、何でもないです。はい。




