第62話 魔法実験って感じ ①
そこには、何かに切り取られた様にポッカリと半円状の穴が空いていた。
元々あったであろう道が、途中で枝分かれし、その穴を迂回する様に大きく弧を描いている。
その穴を上空から眺める一人の女性。
髪は緩やかな三つ編みに纏められ背中に流されているが、風によって右に左にと振られる様は、どこか尻尾のようにも見えた。
そして、魔法使い然としたローブにとんがり帽子を被る彼女の顔も、喜びを顕にしていた。
「綺麗な円じゃないですか。大地……いえ、重力。ブラックホールですか。なかなかえげつないですねー」
のほほんと笑う彼女は自身の右手を翳し、宙空に小さなブラックホールを出現させる。
だが、その黒い玉は少々歪な形をしていた。
それを握り潰す様に、翳した右手を閉じて霧散させた。
「今の私でも綺麗な円にはならないんですから、これはやっぱり、彼の仕業かな?」
返事を求めて呟いたのでは無く、完全な独り言だったのだが……。
「正解!でも特に賞品は無いよ?」
返ってくるはずの無い言葉が来た事で彼女はビクリと肩を震わせ、恐る恐る声がした方を振り返った。
そこには自分と同じ高さに浮いている、フードを被った男が居た。
その周りには彼女の良く知る、管理者が3人。
他にも何人か居るが、おそらくは彼の仲間だろう。
彼女が声を上げるより早く、一人の女の子が声を上げた。
「あ、ニールにぃ好みの女の子だ」
「「なっ!?」」
それに反応したのは横に居たおさげの女の子と、幼女管理者の二人だ。
「変な事言うなし!間違ってないけど!」
「やっぱりー。あんな感じの子が好みだったもんねー」
言いながら手を胸元に持って行くと、その手をワキワキと動かした。
二人のやり取りを見ていた全員が、おさげの女の子と幼女管理者を見た後に、魔法使いの格好をした女の子を見てなるほどと頷く。
自身に注目が集まった事で女の子は我に返り、ニール達を……正確にはその後ろに居る管理者二人に声を上げた。
「え!?セイントにエイトじゃん!あんた達が一番乗り?」
「いや。私達は2番目だ」
「1晩乗りはそこのアリストだぜ!」
両手を振り否定するセイントに、何故かドヤ顔でアリストを指差すエイト。
そして視線を向ければ、胸を張り偉そうにしているアリスト。
「随分とノンビリだったようじゃな?遅すぎて帰ったのかと思ったのじゃ」
「あ、居たの?小さ過ぎて分からなかったよ、チビスト」
「ふん。お主みたいに無駄に贅肉だっるだるではないからの。ダルーシャ」
「私はタニーシャよ?頭まで貧相になったの?」
「先程の発言すら忘れるとは。お主は頭の栄養も身体に吸われてるみたいだのー」
啀み合う二人を見て、ニールだけが面白そうに笑っている。
他のメンバーは我関せずと言った感じだ。
暫くそんな状態が続いたが、マーサ女王が先に根を上げた。
「何時までこうしているのかしら?」
それに反応したのはニールとレトだけだったが。
「確かに。さーらない終わらして帰るか」
「さんせー」
レトは気付いて居なかったが、この時のニールは実に面白そうに笑っていた。
ニールはここに来た当初の目的、魔法の試し打ちをする為に視線を下へと向けた。
そのまま手を翳し、打ち出したのは一つの火球。
それは空中で形を変え、槍のように尖ると地面に向けて吸い込まれる様に消えていった。
「え?」
不思議に思ったのはレトだ。
わざわざ場所を移してまで魔法を打ったのだから、どんなエグい物かと思っていた所にコレなのだから仕方あるまい。
だが、そんなレトが続けて言葉を発する事は無かった。
くぐもった大きな破裂音に続いて、大地が大きく膨らみ、揺れたからだ。
その衝撃はアリスト達を黙らせるのに効果的だった。
「あー、こんな感じか。これなら色々改造出来るんじゃね?中に他の魔法埋め込めば違った感じになりそうだし」
彼等をそっちのけにして、一人ブツブツと呟くニール。
更に魔法を構築して打ち出した。
先程の魔法より太く、見た目は完全にミサイルと化したそれは、同じ様に大地に吸い込まれて消えて行く。
そして響くのは先程と同じ様な破裂音。
だが、その後が違った。
ひび割れ、盛り上がり、ボコボコになった場所だけでは無く、ニールが削り取った穴すら元の平らな大地に戻って行く。
緑が生え、小さいながら池も出来てしまっている。
「これは使えるねー」
魔法の応用力の高さに感心するニール。
「……何これ?」
呆気に取られてたタニーシャが、誰にとも無く呟いた言葉にセイント達が反応した。
「どうも魔法関係がずば抜けてるみたいでね。私とエイトもやられたよ」
その言葉を聞いていたのか聞いていないのか、タニーシャは一人ブツブツと呟きながらニールの魔法の分析をしていた。
「ニールにぃ…………何したの?」
「魔法で現代兵器を再現してみた!あ、二発目は異世界ならではのオリジナルだよー」
「いや、もっと具体的に」
「具体的って言っても、バンカーバスターってミサイル知ってる?地中や壁を貫通して、その先の地下壕なんかを破壊する為に作られたらしいんだけど、それを再現してみた!」
「いや、再現してみたって…………。無詠唱で?」
「あー、俺が詠唱すると効果が馬鹿みたいに上がるからしたくないんよ」
と、ニールとレトがそこまで話した時にタニーシャが割って入って来た。
「ちょ、ちょっと待って!詠唱したらこれより効果上がるの!?やって!やって見せて!!」
かなり食い気味で迫って来たタニーシャに引きながらも、どうするか、と考えたニールだが分かったと両手を上げた。
「んー。じゃあ……リリト、一番弱い火魔法を詠唱付きで空に打って」
話を振られたリリトは、待ってましたと言わんばかりに食い付いた。
「任せて下さい!一番弱いやつですね!」
手を目の前に翳したリリトは詠唱を始めた…………一応詠唱を。
「火よ。我が魔力を糧に顕現せよ」
酷く短い詠唱だが、この世界では一般的な詠唱だった。
その掌からは小さな赤い火が現れて、少し飛んだ後に消えて行った。
「今のが一番弱い火魔法ですよ!」
次いでニールが手を翳す。
「火よ。我が魔力を糧に顕現せよ」
詠唱や消費した魔力等は同じ。
だが、その掌からは白い火が現れ、雲を広範囲に渡って掻き消しながら遥か彼方へと消えて行った。
リリトは勿論、タニーシャとレトも驚愕に目を見開いていた。
マーサ女王やセイント達は分かっていたのか、やれやれと肩を竦めるだけだった。
「ほらな?一番弱い魔法でアレだぞ?さっきのを詠唱付きとか、この大陸が無くなるか、最悪クロムみたいなのが生まれるぞ?」
「いや……え?クロム?……は?……意味わからん」
レトは混乱し過ぎて考えるのを放棄した。
タニーシャはと言えば…………。
「火が白かった…………なぜ?詠唱や魔力は変わらなかった……。いえ、少ない様に偽装した?その上で圧縮すれば……でも……」
一人でブツブツと思考の海へと潜っていった。
そんな中、アリストだけがニールへとコソッと話しかけた。
「で?カラクリは何なのだ?」
ニヤリと笑ったニールが発した言葉は、ある意味予想通りだった。
「秘密ー」
あれですね。
病んでる時ほど書けますね。
異世界の冒険者って憧れますよねー。
ま、愚痴は程々で(;´∀`)
お読み頂きありがとうございます。




