第59話 レトの冒険 ⑥
場所を移して、さあ話を。と思っていたら、先を歩いていた女王が振り返って話しかけてきた。
「要件は私自身、で良いのよね?」
その話ぶりからして、全て分かってるんだろうなー。
「えーっと。はい」
「そう。それも予定外の事ね…………。やっぱり前回とは違うわね」
何の事を言っているのか分からなかったから、クロムの方をチラリと見ると……何やら嫌な笑い方をしている。
コレはあれだ。絶対何か考えてる。しかも良くない事を。
「それじゃあ、改めて自己紹介した方が良いわね。エルフの国の女王で、グリーンメタルスライムを宿すマサリリ・エーテル・マギステル三世よ」
女王が挨拶すると、肩が不自然に盛り上がっていく。
その肩には、メタルカラーのスライムが乗っていた。
「よっす!俺がグリーンだ。ゆたしく!」
軽快に挨拶するスライムを見て私は……。
(うわぁー。かなり面倒な事になったじゃん。てか、今方言喋った?)
呆れた。それはもう盛大に。
だってにぃにぃは、ちょっと面倒としか言ってなかったもん。
しかも、スライムが沖縄の方言を喋るとか聞いてないし…………私が聞かなかったからか。
「それで、何と言われたのかしら?」
「あー…………。そのスライムを仲間にしろって」
私がそういった途端、盛大に笑い出したのが二人。
クロムとスライムだ。
「あははははは!マジか!あいつ最高だな!」
「なっはっはっは!俺を仲間にか!面白いな!」
そんな二人とは対象的に、複雑な表情を浮かべるマーサ女王。
…………アリスト?あの子は何か不貞腐れてる。後ろでブツブツ言ってるから大丈夫でしょ。
「レトちゃん?それは良いんだけど、色々条件があるわよ?」
「条件……ですか?」
「おう!そんな難しい条件じゃないから、身構えなくても大丈夫だって」
相変わらず爆笑中のクロムはホッといて話を進めよう。
「至って簡単よ。この子が入る器を用意するだけ」
女王がそう言うと、クロムが更に大声で笑い出した。
地面をバンバン叩き、涙を浮かべてヒーヒー言いながら笑っている姿は……凄くムカつく。
「クロム?何か知ってるんでしょ?だからそんなに爆笑してるんだよね?ん?」
私はクロムの目線に合わせる様にして屈んで話しかけた。
「はー……はー……死ぬ……笑い死ぬ。腹筋鍛えられるわー。ブフッ!」
私を見たクロムはまたも笑い出した。
…………うん。にぃにぃと同じならこの後の事も知っているのだろう。それを考えて笑ってるな。
このアホは無視しよう。
「それで、器って具体的に何ですか?」
女王もクロムを変な目で見てるけど、視線を私に戻して教えてくれた。
「えー、オホン。今は私に宿ってるけど、その理由が大量の魔力を食べれるからなのよ。だから大量の魔力を持つ何かが有ればそれで良いんだけど…………」
「あー、笑ったー。試しにどれぐらいか見せてあげたら?」
横から笑い終わったスライムが女王にアドバイスをする。
「……それをやると、うちの国とか他の国に変な緊張感を与えるから無し。レトちゃんは魔法は使えるかしら?」
「一応使えますけど……」
「じゃあ、簡単な魔法を使ってみて」
私が空に向かって火球を放ったのを見て、女王は頷いた。
「なるほど。今の魔法に込められた魔力を1としたら、グリーンに与える魔力は大体1万位ね。それでも最低限って位低く見て」
うん。私には無理だわ。にぃにぃには自分でやれって言っとこう。
「じゃあ無理ですね。それじゃ、部屋に戻っときますね」
にぃにぃに貸しが作れなくなるけど、別に無くても困らないし。
私が部屋に向かって歩き出すと、矢印が私の前に回り込んで光り出した。
光が収まると、そこには…………。
「呼ばれてないけどジャジャジャジャーン!!」
何か決めポーズしてるにぃにぃが居たから、取り敢えず一発殴っといた。
「ふんっ!」
「うっ!……レトさんや、久し振りに会ったのに酷くない?」
「うっさい!あんなの無理に決まってるじゃん!」
「ちゃんと言ったじゃん、めんどいって」
「めんどいって言うか不可能じゃん!」
私がにぃにぃと言い合いしてると、笑いが収まったクロムが話しかけてきた。
「いやー、クソ笑ったわ。それで?どうすんの?」
「もちろん、俺がグリーンを貰うさ!」
にぃにぃの言葉にマーサ女王がどんな反応するかと、見てみたんだけど。
既にグリーンを両手に載せて差し出していた。
「貴方が受け取るのが正しいからね。それよりも……はじめまして、が良いかしら?」
「あー、いや。久し振り……が良いかな」
「そう…………」
懐かしむ様な顔になるマーサ女王だけど、久し振りって何?
え?ここに来るのって初めてじゃないの?
わけが分からなくて二人を交互に見たり首を傾げていたら、女王の掌からグリーンスライムがピョン!とにぃにぃに向かって飛んだ。
「て事は、俺も久し振りで良いんだよな!」
「だな。随分ニート生活を謳歌してたんだな」
グリーンを受け止めたにぃにぃは、親しげに話しながら笑顔になっていた。
…………あんな風に笑うの久し振りに見たかも。
大分遅れました。
カクヨムにも加筆、修正した物を上げております。
同じスローペース更新ですが、良ければ読んでみて下さい。
次回も遅れます。すいません。
お読み頂きありがとうございます。




