第54話 龍王の終わりと始まりって感じ
「で?まずコレから処分しね?」
言いながらフードの男、ニールは龍王の死に体を指差した。
その先には既に息絶えた龍王だった物が横たわっていた。
ニールのその言葉に待ったを掛けたのは、先程までそれを弄くり回していたピエロの仮面を被った鈴木だった。
「ちょい待ち。コレで作りたいのが有るからもうちょい待ってー」
そう言うと鈴木は、先程と同じ様に手をわちゃわちゃ動かし始めた。
その動きに併せて辺りの血や肉片等、龍王の体が一箇所に集まり始める。
グネグネと蠢きながら集まる肉片は、それだけでかなりグロいのだが、鈴木の前まで来ると空中に浮かび始める。浮かんだソレは元の大きさから考えると明らかに小さかった。
辺りには時折ゴキッ!バキッ!と聞こえる事から圧縮しているのか分かる。
ニールとストークはその音と見た目にかなり引きながらも、その作業を見守っていた。
圧縮されたソレは次第に球状になり、大きさがバスケットボールの半分ぐらいになった所で鈴木は手を止めた。
「ほい、龍皇玉の完成ー!いい感じじゃね?」
おそらく、いや確実に笑っているだろうその声に引き攣った笑いを浮かべながらも二人は聞いた。
「……そうやって作るもんなの?」
「お前完全にサイコパスだわ」
「いやいやいや。本当は体のどっかに有るかなーと思って探してたんだけど、見つからなかったからさー。酷くね?龍に龍玉は付き物じゃん?それが無いとかありえんでしょ。だから無いなら作ってやれと思ってさー。しかも掃除も出来るし、コレを使って面白い事も出来るしで良い事尽くしじゃん」
「「まぁ、お前が良いならいいや」」
そう言って出来たばかりの龍皇玉を見る二人。
ソレは一目見ただけでヤバイ物と分かるぐらいには禍々しく、時折脈打っている様にも見える。
ピエロの鈴木は、そんな物をいたって軽い動作で掴み取ると、そのまま空間収納に入れた。
「で?次は何する?」
「…………まぁ、良いか」
ニールはその行動に特に言及することは無く、問題があればその時にどうにかすれば良いやと軽い考えで流した。
まぁ、アレに触れたくないと言うのも多分に含まれているが。
コホンと咳払いをしたニールは鈴木とストークを見やり。
「一応ストークには引続き初代を探してもらうとして、俺はもう一つの方に行ってみようかと。俺が居ない間はカートスに色々聞いて。マークスを使えばいつでも連絡取れるから問題無いと思うけど」
「もう一つの方って?」
鈴木が首を傾げ、聞いてないよ?と言わんばかりに二人を見る。
それに説明したのはストークだった。
「他の管理者の事は知ってるよな?アイツらは地球にある物語が舞台の世界を管理してる訳じゃん?ならこの世界の元もある筈って思ってね」
「この世界?パラディソスの事?」
「いやいや、そうなんだけどそうじゃなくて。物語ならそれを考えてる奴がいる訳じゃん?そっちの方」
「あーね。つまり、俺達の物語を考えている言わば運命の女神的な所って事?」
「そうゆう事」
そうして説明を終えたニールは二人を眺め「じゃ、行ってくるわ」と、片手を上げて言うとその場から消える様に居なくなった。
「俺等も行きますかね」
「だねー」
ストークと鈴木の二人も互いに手を上げて消えていく。
…………その後には何も残らなかった。何も。
時は遡りニールに転移させられた冒険者パーティー【守銭の魔狼】の四人。
彼らが今居るのはゴツゴツとした岩場が広がる、一見すると不毛な場所だった。
だが、そこはそれでいて正常だった。
少し先には町と思われる場所があり、遠目からでも分かるぐらいには賑わっていた。
町の至る所からは黒煙が上がっているがそれも正常。
ここはドワーフ領の人族との国境付近。
ドワーフは鍛冶を生業とする為、小さな町や村にも必ず火事場は存在する。
大きな街になると誰でも使える様にと、いくつもの火事場があったりする。所謂、公共施設だ。
そんな所に居る四人が後ろを振り向けばそこには関所がある。
丁度人族とドワーフ領で分ける形なのだが、デカイ壁がズラッと並んでいる訳では無く、砦のような建物があるだけだった。
その砦は石造りなのだが、地球で知っている砦の様に岩を積み重ねて作った物じゃなく、どちらかと言うとコンクリで立てたような感じがした。
簡単に言うと継ぎ目が見当らなかった。
その砦には2つの旗が掲げられていた。
人族とドワーフの旗だ。
「……これは、かなり厄介な依頼かもなぁー」
ぼんやりと辺りを見渡しながら呟く守銭の魔狼のリーダーゼルファー。
ガリガリと頭を掻いた彼は、そのまま視線を自身の右手に向けた。
その手には至ってシンプルな、銀色の腕輪が付けられている。
凝った細工も無く、宝石があしらわれている訳でも無く。
「でも危険は無いんじゃない?」
「そうね。タロムが慌ててないんだし大丈夫でしょ」
ゼルファーの呟きに反応したのはララとレーヤルの二人だった。
守銭の魔狼のパーティーでは、リーダーのゼルファーが報酬や財宝の匂いを嗅ぎ分け、タロムが危機察知をすると言う役割が出来上がっている。
ゼルファーとタロムの二人には固有能力があり、ゼルファーが【金銭嗅】で、タロムが【危険嗅】を持つ。
この能力のコンボで、安全かつ高報酬の依頼を受け続け、その能力を頑なに秘匿していた事から何時しか守銭の魔狼と呼ばれた。
危険なダンジョンや秘境に行こうとも、数多の罠を無傷でスルーし、確実に高額な報酬や財宝を獲得していく様は見ている者からしたら地獄の猟犬の様に映ったのだろう。
勿論仲間のララとレーヤルの二人には話してある。
「危険は無いだろうが……今迄で一番厄介な依頼だぞ?」
「それならノンビリこなしたら良いじゃない」
「そうだぞゼルファー。なんたって依頼内容は……」
タロムがニヤリと笑いながらララとレーヤルの二人を見ると、同じ様に笑いながら頷き。
「「「テキトーに世界を見て回る!」」」
三人揃って声を上げた。そうして笑い合う仲間を見てゼルファーは一人呟いた。
「…………それは何時終わるんだよ」
その呟きは誰にも届かず、静かに消えていった。
やはり遅れました。
次も遅れます。
大体一ヶ月位かと。
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