第48話 初めての……って感じ。
ブレスを避けながら大きく後退して距離を開ける。
利用すると決めたからには殺すのはダメだ。
生かさず殺さず、自分の手駒にする。
その方法にニールは心当たりが有った。
だがそれを試すのは最後。一応説得してみようと思い口を開く。
「なあ。勝てないのは分かったじゃん?ならこっちの仲間にならない?別に滅ぼすつもりは無いんだし」
(今んとこは、ねー)
ストークが言うが、ニールはそれをスルーして龍王の反応を見る。
それを聞いた龍王に、望んだ変化は……無かった。
ただ、火に油を注いでしまったのか、カッ!と目を開くと凄まじい勢いで攻め立ててきた。
「貴様の、仲間にだと!?滅ぼすつもりは無いだと!?どの口が!ほざくか!!」
一気呵成に攻め立てる龍王だが、その攻撃は依然としてニールには届かない。
魔法はスライムに食われ、爪や尾はかわされ、時には反撃を喰らい腕がスライムに食われる。尾が食われる。
それでも次の瞬間には食われた腕や尻尾が元通りになっている。
これはニールのリジェネが龍王に作用している為だ。
もちろんこのままじゃニールも勝つ事が出来ずに、拮抗した状態が続くだけ。
だが、当のニールには焦り等は無い。それどころか余裕があるのか、時折明後日の方を眺めたり、周囲をボーッと眺めている。
ニールは考えていた。
完全に同じ力を持つ者同士が争うとどちらが勝つか。
単純に考えると、勝負は着かずに力尽きる。
それがコピーとオリジナルだったら?
オリジナルが勝つだろう。そんな話を幾つも見てきた……アニメで。
ただ、その手の話にはもっと根本的な所で勝敗が決まってたりする。
それは、『主人公かどうか』と言う物が。
ニールが見てきた多くの物語は主人公が危機に陥る事もかなりあった。
それでも最終的には『主人公』が勝つ。ほぼ確実に。
…………中には最後の最後で主人公が死んだりする物語もあるが。
じゃあそれがリアルだったらどうか?
皆がそれぞれ自分の物語の『主人公』だとしたら、果たして勝負は着くのか。
恐らくは、それこそ神のみぞ知る……と言う事なのだろう。
そこまで考えてか、ニールは静かに笑う。
「まぁ……今は俺がその神なんだけどね」
今迄躱していた龍王の攻撃を弾き返し、無理矢理距離を開けて告げる。
「んじゃあ、説得は無駄って事で。ストーク君、やっちゃいなさい!」
(りょ)
何をするのか分からないが、それが良くない事だとは理解した。
だから龍王は攻める、憎き神に届かせようと。
「させると思うか!!」
再度ブレスを吐く。今度は更に細く成り、親指程度のレーザーが放たれる。
それが正真正銘全力なのか、龍王は目や耳、口からドス黒い血を流す。
それをニールは、レーザーの進路上に小さなブラックホールを発生させてそれを飲み込む。
「バカな…………グッ!」
あっさりと防がれた事に驚き、それでもリジェネで傷は回復しているだろうが、体は動かずに隙きをさらす。
だが、いくら時間が経とうとニールはそこに居るだけで何もしなかった。
漸く龍王が隙きを晒している事に気付き、慌てて構えを取ろうとするが…………。
「……?動かぬ……!?貴様!何をした!」
その問い掛けに対してもニールは笑うだけで何も答えない。
(60%てとこだねー。後1分位で書換え完了するよー)
(オッケー。じゃあ完了したら……ゴルドにお願いしようかな)
(了解)
脳内では淡々と事が進められていた。
ニールはクロムとの戦いも知っている。
その上でゴルド達が戦っている間、サチだけは戦闘に参加させずに、遠巻きに龍王を観察させるだけにした。
それは、サチを経由して龍王に忙し君を数名送り込む為。
見えてる人物に送り込むのは簡単だった。
龍王の中には既に数名の忙し君が居て、龍王の乗っ取りを行っている。
先程60%と言ったのは、その侵食率。
生きる者全てに言える事だが、その人物を形作ってるのは『記憶』だ。産まれてから様々な経験をして、性格が形成され、それにより心ができる。
だから『記憶』を消してしまえばその人物は事実上死ぬ事になる。残るのは只の『入れ物』。
龍王を龍王たらしめている『記憶』や『経験』、そして『心』。それを一度まっさらな白紙にする。
そこに暇人君が入れば…………。
見た目は龍王で中身が別人の出来上がりだ。
意識がある時に記憶を消されて行くのはかなり……エグい。
どんなに痛みに慣れた人物でも、少しずつ心が削られ、抉られ、砕かれ、潰され、消されるのは耐え難い絶望と苦痛を受ける。
「な、何だ?……よせっ!…………止メテくれっ!!……ワレガ……キエ…………グッ…………ガッ!…………タノ……厶…………ア、アァ………………ァ?」
もがき、苦しみ、その痛みから逃れようとし、必死に抗っていた龍王は遂に動かなくなった。
(ほい、完了ー。意外と粘ったねー)
「よっし。じゃあ早速、ゴルドよろしくー」
心が無くなり、もはや本能だけになった龍王にニールが手を差し出して、ゴルドを送り込もうとした時。
……ドクン!と脈打つ音を聞いた。
その瞬間に、今迄感じた事の無い悪寒がニールを襲い、全身の肌が粟立つ。
カートスが咄嗟に指示をだす。
(レトやリリトを村に飛ばせ!!)
その声に反応して鈴木や加藤がニール以外を村に飛ばす。
そうしてニールだけになった瞬間。
「ーーーーーーー!!!!!」
声にならない声が響き渡る。
龍王が動き、その姿を変える。
ボコボコと肉が盛り上がり、巨大になっていく。
その姿は果たして、まさに『龍』と呼ぶに相応しいまでになる。
西洋の竜では無く、東洋の龍。全長は長く、頭には2本の角が生え、前足には宝玉の様な物を持った龍。
その龍が徐に口を開け、ブレスを吐く。
次の瞬間には、ニールは異世界館のベットで目を覚ました。
少しは早く上げれたかと。
次の話の最後に現在のステータス書いときますね。
遅れますが。
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