第44話 出発って感じ
ちょっと長いです。
リリトの目の前には椅子に座り、腕を組みながら目を瞑り、ニヤける男が居た。
エルフの国の王女だった自分が国を出て、冒険者となり、やっとの事で再会する事が出来た男。
残念ながらあの時の事は忘れてしまっている様だが、リリトにしてみればそれは些細な事だった。
自分の近くにあの人が居る。ただそれだけで良かった。
だからか昔の事も言わないし、あれから何をしていたのか、何処に行っていたのかと聞くことはしない。
気にはなるが、それよりも一緒に居る事の方が大事だった。
そんな事を考えながら男を眺めていたら、視界の端で動く物があった。
チラリとそこに視線を向けると……。
「で?アリストはどうすんの?」
男の妹だと言うレトが、テーブルに置かれたお菓子を食べながら、向かいに座る少女に話しかけていた。
その目には「あなたも何かやるの?」と言った期待がありありと見られた。
「期待してるとこすまぬが、妾は何もせぬよ。と言うか必要ないじゃろ」
肩を竦めながら応えたアリストは、レトと同じ様にお菓子を食べる。
その視線がチラリとコチラを見たが、何を言うでも無くレトに向き直った。
このアリストと言う少女の事もリリトはあまり分かっていない。
フラリとやって来たかと思えば、マスターと同じ管理者だと言う。
レトから色々聞いては見たけど分からなかった。
マスターは一体何をするのか、そう考えながら視線をマスターに戻すと、先程とは変わって真面目な顔をしていた。
何かあったのだろうかと声を掛けようとした時、今まで閉じられていた目が開かれた。
「……っし。取り敢えず終了ー」
龍族とは和解出来たのだろうか?
大きく伸びをするマスターに声をかけた。
「上手く行ったんですか?」
「ん?いや、戦闘自体は継続中だよ。なーんかやりたいって言うから任せてきた」
「任せた?スラメブルにですか?」
「うん。後クロムに」
またしても知らない名前が出た事にリリトは複雑な気持ちになるが、何か説明が有るだろうと続きを待つ。
「クロムって誰?」
リリトに変わってそう聞いたのはレトだった。
彼女はまだお菓子を頬張りながらも問い掛ける。
「誰……と言われれば俺、としか言えないなー」
どう説明して良いのか分からないと言った様子で、頭を掻きながらそう答えた。
やはり分からない。そう思い首を傾げていると、マスターが立ち上がりながら告げた。
「さて。んじゃあ出掛けるか。リリトとアリストは一緒に行くとして、レトは……」
「行く!」
「ですよねー」
一緒に行くと言われても何処に行くのか。
マスターはわからない事だらけだ。
初めて会った時もそうだった。
多くは語らず、近い将来また会う事になるからそれまで思う様に生きると良い。と言い残して去って行った。
その後お母様となにやら話をしたと聞いたが、内容までは教えてくれなかった。
そして今回も何も言わないのかなと思いつつも目的地を聞いてみた。
「マスター?何処に出かけるんですか?」
ニールから返ってきた返事は予想外のものだった。
「リリトの家。ってか、母親に呼ばれてるみたいだからねー」
私のお家?お母様に呼ばれてる?…………え?
私が分からないと言った顔をしていたのを察したのか、ちゃんと理由も教えてくれた。
「あぁ、俺ってば世界中を見る事が出来るんよ。相手には全くバレずに…………そのはず何だけど、どういう訳かリリトのお母さんは覗きをしてる俺を見て、『見てるだけじゃなくて挨拶位にはしに来なさい』って言ってさー。もう結構焦ったよ?これ向こうにバレバレなんじゃないかって」
「うっわ。もしかして覗きまくり?」
「もちろんさー」
グッと親指を立てて笑顔になるマスターに、レトが罵声を浴びせる。
そんな事をしている二人を眺めながら、どんな顔してお母様に会えば良いのだろうと考える。
…………いや、深く考えずに出会い頭に一発かましてやれば良いか。
あの人はそんな人なんだし。うん。そうしよう。
さあ行くか。となった所で最初に出て来たクロムと言う名前が頭にチラついた。
今なら話してくれるかもと思い、ダメ元で聞いてみた。
「マスター、クロムさんは連れて行かないんですか?」
コチラを振り向いたマスターは一瞬考える様に視線を泳がせたが、すぐにこちらに視線を戻した。
「今良いとこらしいから、終わったら合流するってさ」
そうして四人で私の家、エルフの国に行く事になった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
エルフの国へはニールの居る森からだと約7日〜10日かかる。
それは馬車を使い、可能な限り急いでだ。
だがニールは転移すれば一瞬で着く事も出来る。
では既に着いたのかと言うと…………。
「うっひゃー!高ーい!!」
……遥か上空をのんびりと進んでいた。
面倒くさがりな奴が何故そんな面倒な事をしているのか。
単純だ。なんとなく。
そう。ただ何となくと言う理由で大空の旅をしている。
ニールの性格は非常に厄介で、面倒くさがりなうえにかなりの気分屋、そして非常に飽きっぽい。
たとえ面倒じゃなかったとしても気分が乗らなければやらない。
逆に、果てし無く面倒だったとしても、気分さえ乗ればサクサクこなす。
地球に居る時も、時折見せるその謎のフットワークの軽さから周囲を驚かせていた。
「これはこれで楽じゃのぅ」
アリストはアリストで転移で行かずに大空を飛んで行く、という事に満更でも無い様子。
別の世界を観察出来る為、願ったり叶ったりだったりするのだが。
自身の世界についてはニールに任せる事にした為、それならば滅多に見れない地球直近の世界を見ておくのも悪く無い、と判断したから楽しむ余裕も出た訳だが。
まぁ、実際に少しだけでは有るが世界の崩壊も収まり、回復した事で安心出来たと言うのが一番だろう。
ニールが何をしたか。
この世界に居た転生待ちの魂をアリストの世界に送っただけ。
リンテンから数が多過ぎるタルい、と苦情……と言うよりは既に飽きて面倒くさくなったと話があった。
「所でニールよ。お主は何をやっているのだ?」
ボーッと下を眺めていたニールにアリストが話しかける。
何をしているのかと聞かれてもニールとしては、下を眺めていただけ。それをどう言えと?と思っていた所、ふと自分が今手に持っているのが見えた。
「ん?……これか?」
そう言って右手を見えやすい様に上げる。
「そうそう。それじゃ。それはなんじゃ?」
ニールの右手には煙草が有った。
この世界に来てから吸っていないなと思ったら急に吸いたくなり、ポケットに入っていたのを取り出して火を着けたのがついさっき。
煙は風魔法で周りに行かない様にしている為、レトも言われる迄気付かなかった。
「うげ、まだ吸ってんの?」
「当たり前じゃん。習慣みたいになってるからな」
そうは言っても、今迄忘れていたのだから習慣と呼べる程では無いが。
「これは煙草って言って、簡単に言うと毒だな」
「毒じゃと?なぜそんな物を吸っているのじゃ?」
「なんと無くだねー」
わざわざ毒を自ら摂取する事が理解できずに居るアリストを放っておいて、ニールは再度紫煙を燻らせながら下を眺める。
今4人が飛んでいるのは、ニールが風魔法と重力魔法を併用しているから。
そのおかげか、熟練度が馬鹿みたいに上がって行くと、高笑い気味に報告された。
ボーッとしていたニールだが何かを思い付いたのか、後ろに振り返り3人に聞いてみた。
「そう言えば、何で龍族が強いか知ってる?」
急にそんな話を振られても答えられる訳がなく、レトとリリトは「龍族だから?」と言った返事しか出来なかった。
唯一違う返事をしたのは同じ管理者だからか、アリストだけだ。
「人の中で龍は強いと言う思い込みや考えが根付いているからじゃろ?」
「おおー。流石管理者。正解!」
褒められて悪い気はしないのか胸を張り、ドヤ顔になるアリスト。
だが、その回答に納得がいってないのか、レトとリリトが反論する。
「え、ちょっと待って。それだと弱いと思い込めば弱くなるの?」
「そうですマスター。龍族は強いから龍族であって、弱ければ只のトカゲの魔物です」
二人の言い分に目を合わせて小さく笑うニールとアリスト。
それが気に入らないのか、頬を膨らませるレトにニールを睨むリリト。
「二人が今言った事もあってるよ。龍と言えば昔から伝説上の生物として、様々な伝承や創作物に出て来るじゃん?しかも、その殆どが最強と言われても可笑しくないぐらいの力を持って。最近になって稀に弱い龍が描かれる事も増えたからその強さに幅が出て来たけど、古来より人知では説明出来ない事は龍等架空の生物が起こしているって言われてるんよ。それが龍は強いと思い込む事で、実際に龍族は強くなってる。…………ほら」
言いながらニールが皆の後方、白樹の森方面を指差す。
説明になってない様な……とレトとリリトは思いながらも指差した先を見る。
丁度二人が視線を後ろに向けて、それを確認した瞬間。
バシッ!と激しい音がしたかと思えば、視界は強烈な光によって閉ざされた。
「うきゃあ!」
「……っ!」
小さな悲鳴と息を飲む音。
そこにはニール達を飲み込まんとする様に、極太のレーザーが放たれていた。
アリストは分かっていたのか、手で視界を覆う程度に留め、その顔色は随分と余裕が有った。
レーザーが次第に小さくなって行き、やがて消えた時には目視で分かる距離にあの龍王が居た。
「おいおい。尻尾巻いてトンズラか?負け犬にはお似合いだろうけど、もうちっと付き合えや」
獰猛な笑みを浮かべ、漆黒のドラゴンの横を飛んで来た。
更新ペースが……orz
申し訳ないです。
次はなるべく早く上げれるようにします。
……あまり期待はしないで下さい。はい。
お読み頂きありがとうございます。




