第42話 自宅会議?って感じ
家に移動して、レトやリリトと会わせ、自己紹介も終わった所でパーティーの一人、レーヤルが口を開く。
「あの、貴女はエルフの国の王女では?」
その言葉を聞いてニールとリリト、アリスト以外が驚いた様にリリトを見る。
なるほど。最初に顔を見た時から妙に驚いた雰囲気をしていたと思ったらそういう事か。と、ニールは落ち着いて四人を見ていた。
ニールは最初から知っていたし、ストークにも調べさせたので別段驚くような事では無かった。
アリストに関しては、自分の世界の事だけで一杯なのでこの世界の王族等どうでも良かった。
「いえ、元王女です。今はマスターの奴隷です」
そう言えば最初の頃から大分印象違ってるよなー。と思っていたニールだが、心の声を見てみてその理由を知る。
(ここで出来る女っぷりをアピールしてマスターに更に好印象をもって貰います!このキャラ作りもしんどいですけど仕方ないです!必要経費ってやつですね!じゃないとお母様の所に連れ戻されかねません!あんなバトルジャンキーの所に行ったら命が幾つ有っても足りないですし!大体、私が煉獄の王女とか言われてるのも、国を追い出されたのも、お母様が放った精霊魔法に対抗しようとイフリートで森を焼き払ったからですよ!あわよくばお母様諸共と思って力を入れ過ぎたのも全てはあのバトルジャンキーのせいです!マジ神様はクソッタレです!)
そっと視線を外したニールの心情を知る者はこの中には居なかった。
これもストークに調べて貰った事だが、リリトのステータスが高いのもスパルタンの戦士の如き訓練を受けたかららしい。
実の娘に何をしてるんだ?と思うが、それには女王の思惑があり。
その女王は幼い頃からお転婆で、事強さに関しては並々ならぬ執着を見せていた。
強者と知れば相手が誰であろうと戦いを挑み、強力な魔物が現れたと知れば単身挑みに行き。
死にかけた事も両の手では足りないぐらい。
戦争に発展した事もあり、厄介だと思った自分の国に消されそうになった事もあったが、その全てを力で捻じ伏せてきた。
女王になってからはそれも少しは落ち着いたが、それは単純に女王が強くなり過ぎたせいだった。相手が居ない。ただそれだけ。
そして、周知の事実として周囲の国家はアイツに逆らうな。と、一致した意見を持っている。
覇者はどうなんだ?と思うかもしれないが、そっちはそっちで厄介な存在で、いかな女王と言えど勝負を挑む事は難しい。
勝負を挑めば確実に世界の敵認定されて、一人で全世界を相手に戦争する事になる。
それに、覇者には勝負を挑む事すら難しい。
覇者になった時点でこの世界の神になり、居場所が分からなくなる。
ニールでも未だに覇者の所在は特定出来ていない。
それでも女王としては戦争歓迎みたいだが、寿命が長いからか、強者を自分で育てると言う事に至り、手始めに実の娘を鍛えた。
女王はそんなに強いのか?と思い、ストークに聞いたところ、文字通り桁が違うらしい。
詳しくは実際に会うまでお楽しみだと言われれば、ニールとしてはそれ以上聞くことはなかった。
と、そんな事を考えている間にパーティーも落ち着いて来たようだ。
代表として、リーダーのゼルファーと言う冒険者が口を開く。
「ま、まぁ、何故王女が奴隷なのかとか聞きたい事はあるけど、先ずは、俺達を呼んだ理由を聞いても良いか?」
苦笑気味に聞いたゼルファーを、待ってましたと言わんばかりに頷いてニールを見つめるレト。
秘密主義とまではいかないが、ニールは肝心な所は聞かなければ言わないタイプなのだ。
むしろ、聞かれれば全て答えるバカ正直な方だ。
ただし、あくまでも聞かれれば話す。と言うだけで、聞かなかったら話さないか、大事な所だけ話さない。
良くも悪くも嘘は言わないのだ。…………ただ、言葉足らずなだけで。
そんなニールが話したのは、やはり大事な所を端折った理由だった。
「理由は単純。俺から依頼を受けて欲しいんだ」
「依頼……ですか?」
それならギルドに出せばいいじゃないか?と考えたゼルファー達四人。
「そ。誰でも良いってんじゃなくて、いくつか条件が有ったんよ。その中の一つが『日本を知っている事。もしくは日本人の血筋』やっぱ頼むなら同郷の奴が良いじゃん?」
その言葉に納得の顔をする二人と、分からないと言った顔をする三人。
分からない顔をしていたレトがニールに尋ねる。
「日本をって、この人達は転生者なの?」
「いや、二人は転生者で、二人は転生者の子孫だな」
そう言いながら、ゼルファーとタロムの二人を先に指差し、次いでララとレーヤルの二人を指差した。
「…………あんたも転生者か?」
タロムがそう聞くのも仕方無い事だろう。
この世界には、転生者や転移者と言った迷い人が結構居るからだ。
たが日本、と言ってくるのは同じ迷い人だけだ。
地球には様々な国があり、その中の特定の国を言ってくるのは、それを知らないと聞けないからだ。
それにさっきニールはこう言った『同郷の奴』と。
だからタロムは転生者かと聞いたが、続くニールの言葉は想像していたどれとも違っていた。
「いや?違うぞ。俺は新しい管理者だ」
その言葉を聞き、いち早く反応したのは未だに一言も話していなかったスラメブルだった。
ゼルファー達四人の眉間に、薄皮を切るぐらいの距離に鋭く尖らせた体を伸ばしていた。
余りに一瞬の出来事にその場の全員が驚く。
ニールは予想出来てたのか、余り驚いては居ないが。
そんな中、スラメブルが全員に聞こえる様に念話を飛ばした。
『ニール。こいつ等食べて良いか?』
「駄目に決まってんだろ」
『でも攻撃しようとしたから敵じゃないのか?』
「違う違う。問題無いから元に戻りなさい」
ニールがそう言うと、スルスルとスラメブルが鞘に戻って行く。
スラメブルから開放された四人は冷や汗を流しながらも、コチラを注意深く探っている。
魔法使いの二人に至っては、バレないようにと静かに魔法の準備をしている。
魔力の流れからそう判断したニールは特に何をする訳でも無く話を続ける。
「紹介してなかったけど、コイツはブルーメタルスライムのスラメブル。俺の相棒」
刀を鞘ごとテーブルの上に置くと、カチっと少しだけ鞘からひとりでに出て来た刃が手を振るように、細い体をフリフリしている。
「さて。取り敢えず聞いておきたいんだけど、管理者って聞いただけで過剰に反応するのは、前任者がやりたい放題だったからで良い?…………それとも、覇者からそう言われてるから?」
そう問われた四人は一瞬体を硬直させたが、諦めたかの様に力を抜いて脱力する。
「両方だ」
その後、ゼルファーが理由を説明すると、リリトやレトまでもが僅かにその顔に怒りを滲ませた。
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「ん?…………おぉ、結構早いね。もうここまで来たのか」
男が空を見上げながら呟いた言葉は、誰に聞かれる事も無く消えていった。
「こりゃ、かなり前倒しにしても良いかもねー。あっと、まだ見つかるのは早いからソレはキャンセルっと」
楽しそうに笑う男はそう言いながら雑踏の中に消えて行く。
日本は今日も平和な時間が流ていた。
次は早めに上げれるかも?
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