第41話 ファーストコンタクトって感じ
「流れからして、その物語が忘れ去られようとしてるって事か?」
項垂れるアリストに尋ねるニールだが、当のアリストは小さく頷くだけだった。
それを見て考え込むニール。
暫くしてアリストにこう告げた。
「なら、いくつか聞いておきたいんだけど良いか?」
「……なんじゃ」
「例えばだ。アリストの世界と地球とを自由に行き来する事は可能か?」
「可能じゃが……それがどうしたのじゃ」
「もう一つ。アリストの世界にある物資等を地球に持ち込む事は?」
「それも問題無い。じゃが、それがどうしたと言うのだ?」
ニールはニヤリと笑いながら顔を上げたアリストに告げる。
「なら簡単だ。お前の世界と地球をゲートで繋いで行き来出来る様にしてやれば良い。そうしたら下手に物語を広めるよりも、より多くの人に認識されるだろう?」
ホントに?と、淡い期待を込めた目で見上げるアリスト。
それに横に居たレトが待ったをかける。
「ちょ、ちょっと待った!簡単に言ってるけどかなり大混乱になるんじゃないの?」
「その辺は大丈夫っしょ。地球に冒険者ギルドを新しく作ってランクによって持ち帰れる物資に制限をかけたり、難易度を設定して低難易度なら死なない様にしたら、ゲーム感覚でやる人も増えるでしょ。それに、難易度によってアリストの世界に行ってられる時間も制限したら下手にやり過ぎる人も減るから大丈夫じゃない?」
「それでも、長い間人が居なくなったらヤバイんじゃない?」
「全く問題無いよ。さっき言ったじゃん?時間何て有って無い様なもんだって。ま、なんくるないさー」
そう言って立ち上がりながら手をヒラヒラして、外に向かうニール。
「え?どこ行くの?」
そんな軽い調子のニールをキョトンと見つめるレトは、まだまだ話し足りないのか慌ててニールの後を追う。
アリストやリリトもそれに続き外に出る。
レトの言葉には「ちょっとね」と言うだけで多くは話さない。
外に出たニール達を遠目に見る村人達は、また何かやるのかと期待半分、不安半分といった好奇心の籠もった目をしている。
そんな村人達だが、一人だけ近付いてくる男が居た。
「ボス、お出かけですか?」
「ボスは止めろって言ってんだろ。普通に名前で呼べって」
「ボスはボスです」
「はぁー。……いっちん聞かんやなわらばーが」
最後は男に聞こえない様に呟く。
クソガキとは言うが、男はニールよりも年上で35歳だ。
それでもクソガキと言うのは只の愚痴みたいなものだ。
レトやリリトと合わせて五人でゾロゾロと歩く。
「だぁー!ウッゼー!いちいちついて来んな!どうせ村から出ないし直ぐに戻って来るから家で待ってろ!」
「いえ、私はマスターの「却下」……わかりました」
「俺もボスが「黙れ、却下」…………」
「また何かするんでしょ?面白そうじゃん!」
「戻ったら説明するから家に行け。アリスト、何も言うな。お前もだ」
他のメンバーを尽く家に帰す。
ニールは誰かと連れ立って歩くと言うのが苦手だった。
特に先頭に立つのが。
だから友人等と出掛けるときは決まって後ろを歩いていた。
その方が楽だし、皆を見ていられるから。
そうして一人になったニールは村の入り口まで来て、そこでストークと話をする。
(で?もうすぐ来るん?)
(丁度森に入った所だから直ぐに来るよー)
(どっちの方?)
(中堅どこだねー)
(無敵と最強は?)
(最強は見つかったけど無敵はまだやねー。居なかったら新しく転生させてやれば良いんじゃね?)
ふむ、と話をしていると村の入り口が僅かに歪み、そこから男2人、女2人の冒険者と思われるパーティーが現れた。
急に開けた所に出たからか、はたまた周囲がガラリと変わったからか。その四人は警戒しながら辺りを見回していた。
そんな四人の内、軽装の男とニールの視線が交わる。
「……あんたか?」
警戒心アリアリで尋ねた男。その声に他のメンバーもニールに視線を合わせる。
一方、尋ねられたニールは…………。
「ハイサイ!」
何とも軽い感じで手を上げて挨拶した。
例え相手が日本人だろうと、下手したら通じないであろう挨拶で持って。
まぁ、沖縄は有名だしその挨拶ならとあるお笑いコンビのお陰で広く知れ渡っていると、ニールは思っているのだが。
そして、なにやら期待した眼差しで冒険者パーティーを見つめるニール。
その眼差しの意味が分からず困惑するパーティー。
「……ねぇ、なんて言ってたの?それに、あの視線は何?」
「……さっきのは只の挨拶だ。田舎の方言だがな。あの視線は……知らん」
「ならこちらも挨拶をした方が良いのでは?もしかしたら、それを待っているかも知れませんし」
ニールから視線を外さずに小さな声で相談するパーティー。
その間、ニールは片手を上げたまま相変わらず期待の眼差しで見つめる。
漸く相談が終わったのか、最初に話しかけて来た男が応える。
「どうも、こんに「ちげーよ!」……は?」
挨拶で返そうとしたのにそれを遮られた男はわけが分からなかった。
遮ったニールは手を下ろし、パーティーに近付きながら話す。
「こっちがハイサイ!って言ったら、そっちはグスーヨ!って返さないと続かないじゃん!もしくはそっちがチューウガナビラまで言わないとダメじゃん!」
何を言ってんだコイツ?と、四人の顔を見れば、その心は一つになっているのが分かるだろう。……ただ、何を言ってんだ?の意味が違っているが。
女二人は、本当に言っている意味が分からなくて。
男二人は、そんなの分かるかボケ!と言う意味で。
…………この挨拶自体、ニールが勝手にやってるだけで地球でもちゃんと返せるのは家族位だろうか……。
そんな四人の近くまでやってきたニールは徐ろに手を差し出し「まぁ、よろしく」と、笑いかけた。
戸惑いながらもその手を握り返していく四人は、世界一の疫病神に絡まれた事を後で知る事になる。
「さて。積もる話もあると思うけど、お茶でも飲みながら話そうか」
そう言って背を向けて歩き出すニールを見つめる四人は、しばらくどうしたものかと違いの顔を見るが、ゼルファーが意を決した様に頷くと後を追って歩き出した。
次の話はこれから書き始めるので次回は未定です。
因みに。
話の中にあるハイサイ、グスーヨ、チューウガナビラは『よっ!最近どうよ?』みたいな軽い感じで使っても問題無いかと。
…………問題無いですよね?
お読み頂きありがとうございます。




