S とある冒険者の話 2
大分遅れました。
探索に必要な物を買い込んで白樹の森に到着した守銭の魔狼の4人。
「さって。先ずはコレを読んでおくか」
そう言ってゼルファーが取り出したのは、ギルドのスタッフから貰った紙切れだ。
皆で囲んでいざ紙を広げる。
「「…………は?」」
2人の女性メンバーはそれを見て声を上げる。
それもそのハズ。
紙にはこう書かれていた。
『森に入ったら適当に探索しながら
中心に向かって来ると楽に来れる
よ。その際、適当にレベル上げもし
ておくと良いんじゃないかな?
じゃ、村で待ってるよー。』
丁寧に日本語で書かれた紙を前に2人は無理解を表す。
「何て書いてんの?古代文字とも違うし……読める?」
「いえ、私も読めないですね。神聖文字とも違いますし」
そんな2人とは対象的に、ゼルファーとタロムの2人は驚愕、といった顔をしていた。
「…………タロム。どう思う?」
「いや……分からねぇ」
その言葉を女性2人は同じく読めないと思ったのか、肩をすくめる。
「なによ、あんた達も分からないの?」
「何かの暗号ですかね?」
だが、それに続くゼルファーの言葉に2人は更に分からなくなる。
「読めるぞ。と言うか、コレを読めるのは極一部じゃないか?」
「え?……それって……」
どういう事なのか聞こうとしたが、それはこの場に似つかわしくない大声によって遮られた。
「だぁーーー!!まった外に出ちまったじゃねぇか!」
その声に視線を向けて見れば、森から出て来た冒険者パーティーが居た。
身なりと声から察するに『紅の風』のメンバーだろう。
「お前が大丈夫だとか言うから突っ込んだのに駄目だったじゃねぇか!」
「そんなもん俺にも分からないですよ!」
「今迄とは別の道だったから大丈夫って言ったんですよ」
「じゃあ森に入る事すら出来ねぇのかよ!」
何やら言い合いをする紅の風。
そのおかげか、白樹の森周囲を見回してみて漸く気づく。
あちらこちらに冒険者パーティーが居ることに。
あるパーティーはキャンプを張り、またあるパーティーは森の木を伐採して森自体を無くそうとしたり、別の場所では爆炎が上がっている。
恐らく森を焼き払おうとしているのだろう。
だが、その尽くが無駄に終わっている。
木は確かに焼けたり伐採されているのだが、目の錯覚なのか幻覚なのか、一向に減る気配が無い。
「どうなってんの……これ」
そんな状況を見て、ゼルファーの横に居た仲間が呟く。
その顔には呆れが多分に含まれていた。
そのまま周囲を見ていたゼルファー達に紅の風が気付いた。
「ゼルファー!今回はお前の鼻も外れたんじゃねぇか?」
言いながら近付いて来た紅の風のリーダー、フリクトは言葉とは裏腹に、守銭奴と名高いゼルファーならこの状況をどうにかするんじゃないかと、期待の籠もった視線を向ける。
「そうでも無いぞ?俺達は稼がせて貰うさ。行くぞ」
森に向かって歩き出したゼルファーの後を、タロム達が不安な顔をしながら付いていく。
「……良いのか?罠とかあるんじゃないか?」
「いや……恐らくスムーズに中心部に行ける。お前もそう感じてるんじゃないか?」
「まぁ、な」
「ちょっと、大丈夫なの?」
「問題ないさ。ララとレーヤルは付いて来るだけで良いぞ」
そう言われた気の強そうな黒髪の女性ララ。
そのララの横を歩くのはもう一人の女性メンバーで、ボーイッシュなショートヘアーの、こちらも黒髪のレーヤル。
役割としては、ララが攻撃タイプの魔法使いで、レーヤルが援護タイプの魔法使いだ。
そんな二人は不安に思いつつも、ゼルファーとタロムが堂々と歩いて行くのだから、お互い顔を見合わせて頷くと後に続いて行く。
計四人で森に向かって行くが、周囲の冒険者達は無駄だと思ってるのが三割。残りは何かするのかと注視するのが五割、後に続いて入ろうとするのが二割だ。
だが、そんな周囲の冒険者達の思いは只の1つも叶わなかった。
ゼルファー達守銭の魔狼が森に入って行き、続けて他の冒険者パーティーが入るが、次の瞬間には守銭の魔狼以外のパーティーが入った所とは別の場所から出て来た。
「え?……ちょ、どうなってんだ!?」
「魔狼の連中は!?」
「どうやって入った?誰か見てたか!?」
周囲で見ていた者達も全く分からないのか、右往左往するばかり。
そんな中、複数の冒険者パーティーは諦めが早いのか、こうなる事を知っていたのか元の作業に戻って行く。
紅の風のリーダー、フリクトもやれやれと首を振り呟く。
「あいつ等のお零れは無理だったか。しゃあない、ある程度自力でやってダメなら帰るか」
守銭の魔狼はかなり有名だった。
メンバーは特筆して秀でた能力の無い、中堅を絵に書いたような連中。ただ、メンバー全員が黒髪で、リーダーゼルファーの儲け話に異常に鋭い嗅覚だけが特徴。
昔から確実に儲かる依頼しかこなさない事からいつからか守銭奴と呼ばれるようになり、その鋭い嗅覚から守銭の魔狼と呼ばれる様になった。
そんな彼等の周りにはお零れを貰おうといつも複数のパーティーが居た。
紅の風もその1つだ。
長年周りをうろちょろしてたが一度もお零れを貰う事は出来なかったが。
ゼルファー達の入って行った場所を眺めながら、今回も駄目かと諦めつつ、最後の悪あがきとでも言うのか、再度森への侵入を試みるフリクトだった。
次はニールの話になります。
まだ半分しか出来てないのと、やる気スイッチが中々オンにならない為進まないです。
難しいですねー。
お読み頂きありがとうございます。




