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神様の誕生日  作者: スマイリー
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第38話 面倒事発進!って感じ

 時は少しだけ遡る。

 ニールが拠点を完成させた辺りの時間。

 そこはドワーフ族の王国と人族の王国の国境付近のとある村。

 種族間の争いが無い為関税等も無く、国境とは言え厳重な警備が敷かれてる訳でも無く。


 それでも一応兵士が居るのは、国によって法が変わる為、その説明をする為に滞在していた。

 国境付近の村や街は人の往来が激しい場所になっており、商売をする為の馬車や商人が行き来したり、冒険者があっちへ行ったりこっちへ行ったり。


 異種族婚も一応認められてるらしく、人族とエルフ、龍族とドワーフなんて組み合わせの夫婦も居た。

 そんなに人が多いのにこの村が街へと発展しないのは理由があった。

 それは単純。何も無いからだ。

 国境は誰でもほぼ素通り出来る為、商人や冒険者、旅行者等はそそくさとそれぞれの国の都心部へと去っていく為、往来は激しいが人が留まらない為に発展せずに村のまんまだった。

 たまに留まる者が居ても、それは依頼を受けた冒険者や国境に務める兵士、田舎が好きな変わり者位だろう。


 そんな村に一組の親子……?がやって来た。

 周囲を行き交う人々は特に気にした様子もなく通り過ぎている。

 時折二度見する人が居る程度には浮いた存在なのだろう。

 だが、それでもここではありふれた光景で足を止めてまで見る者は居ない。


「ふむ。随分と離れた所に出たな。あいつ等は更に離れてる様だが、我らはまだましかもしれんな」


 背の高い父親?が国境を眺めながらそう呟く。

 その言葉に、横に居た小さな女の子はやれやれと首を振りながら応えた。


「そうまでして会いたくないのかのぅ。遅かれ早かれ会うことになるのは変わらぬと言うのにのー」


 言葉遣いがやや変わった女の子だが、その言葉には呆れや面倒と言った感じはしない。

 寧ろ楽しんでいるかの様にその顔は笑っていた。

 その笑顔に二度見する人が増えたりしたが、二人にはどうでも良い事なのだろう。周りを意に介さず会話は続く。


「さて。ではココからは競争か?」

「そうじゃの。話し合った通りに奴の所に着いた順番で話をすると言うのが良いじゃろ」

「ふ。では俺は先に行かせてもらうぞ」


 そう言うと男は()()()()()()()()()へと歩いて行った。


「…………あやつの方向音痴はもはや奇跡じゃな。今奴の方を向いて話しておったのに何故後に行くんじゃ?まぁ、妾としては邪魔者が減るし、敢えて教える事はせぬが……不憫よの」


 全く不憫とは思って無いのだろう、笑いながら小さく手を振る少女は実に楽しそうだ。

 そうして歩き出した少女だが、国境で思わぬ足止めをくらう。


「お嬢ちゃん、パパかママと逸れたのかい?」


 見た目が7、8才位に見える為、国境で保護されていた。


「じゃから違うと言うに!妾はこれでも立派な大人じゃ!」

「うんうん。その年位だと背伸びしたくなるのは分かるけどね?ちゃんとパパかママを連れて来ないとココは通れないよ?」

「何故じゃ!」

「だってお嬢ちゃん、身分証持ってないだろう?それに、通行する為には身分証の発行と合わせて銅貨1枚は必要なんだけど……持ってるのかい?」

「ぐぬぬ…………」


 この世界に来たばかりの少女には身分証はおろか、通貨さえも持っていなかった。


「銅貨1枚じゃな!待っておれ!」


 そう言って駆け出す少女を微笑ましく見送りながら兵士達は声をかける。


「あんまり親を心配させるんじゃないぞー」

「頑張れよ嬢ちゃん!」

「迷子になったらまた戻っておいでー!」


 少女は半ば涙を浮かべながらその言葉を背に走り去って行く。


「「「あ」」」


 途中、ビターン!と転んだりもしたが直ぐに起き上がりまた走り出す少女を兵士達は心の中で「頑張れ!」と応援していた。

 涙を袖で拭いながら少女は最初の村までやって来た。

 キョロキョロと辺りを見回し、一人の商人を見つける。

 その商人に駆け寄った少女はポケットからいくつか飴玉を取り出して商人につき出す。


「これを銅貨1枚で譲ってやろう!」


 一瞬キョトンとした商人だが、その手に握られた飴玉と僅かに泣き跡の残る少女の顔、そして転んだのだろう、服に着いた土を見て全てを察した?商人は泣くのを堪えて微笑んだ。


「良いよ。特別に銅貨10枚で買うよ」

「何!?そんなにか!すまんのう」


 銅貨を手渡す時にそっと手を握り「頑張るんだよ」と声を掛けてあげた。


「うむ!助かったぞ商人よ!」


 渡された銅貨をポケットに入れて走り出す少女を涙を堪えて、手を振って送り出した。

 周囲でそれを目撃した人達も涙を堪えていた。


「「「あ」」」


 またもビターン!と転び、それでも泣かずに起き上がり走り出す少女を遂に周囲の人達は大きな声で応援した。


「ガンバレ嬢ちゃん!」

「ガンバレ!」

「負けるな!」


 中には泣きながら声を上げる人も……。

 周囲をそんな空気に変えつつ少女は走り続ける。


「ふふふ……。一番乗りは妾が貰ったぞ!」


 子供と間違われ、転んだ痛みを耐えて、遂に国境を越えた少女はそう声を上げる。

 兵士達に見送られ、出来たばっかりの熱狂的なファンに陰ながら支えられ。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 時を同じく。

 コチラはエルフの国の端っこ。

 人族の国からはかなり離れた森の奥深く。

 そこで一人の男がエルフと対峙していた。


「だから!炎を使うなって言ってんのが分からんのか!」

「使ってねぇーよ!これが標準なんだよ!」

「じゃあその熱波を抑えろ!」

「これ以上抑えたら髪が無くなるだろーが!」

「こっちは森が無くなるんだよ!!」


 男の周囲に居るエルフの内半数以上が、水の魔法や水の精霊術を使い周囲に燃え広がる炎を消してる。残りの数人で男の周囲に氷の結界を張っていた。

 男が何かした訳ではない。

 ただ普通に歩いていただけだ。


 だが、男から発せられる熱気で近くの木々が燃え始め、その炎が更に燃え移り……と、大惨事になる前にエルフが駆け付け鎮火作業をしているだけ。

 駆け付けたエルフが見たのは燃え広がる炎の中で、一つだけどんなに水をかけても消えない炎があり、周囲を氷の結界で囲って漸く、その炎が男の頭だと気付いた。

 そこから押し問答が続いているが…………。


「髪ぐらい森を抜けてから生やしたら良いだろ!」

「その間ハゲになるじゃねぇか!」

「頭のハゲ位なんだ!周囲がハゲになるよりマシだろうが!こっちは家が燃やされてる様なもんだそ!」

「うっせー!たかが家位何だってんだ!頭がハゲたらダッセーだろうが!」

「お前なんぞダサくなっても誰も何とも思わん!」

「はぁ?!俺がダサいのが嫌だと思うんだよ!」

「一時的なもんだろハゲ!木々が育つのに何年かかると思ってるんだ!」

「アホか!ハゲた記憶は一生残るだろうが!たかが数年ハゲる位良いじゃねぇか!」


 ………………と、下らない争いは続いている。

 周囲の炎も鎮火して、男とエルフがしびれを切らしそうな時に救世主が現れた。


「…………なんだ。騒がしいと思って来てみればやはりお前か」


 違った。

 救世主では無く、新たな混沌だった。


「あ?何でてめぇがここにいんだ?先に行くとかぬかしてなかったか?」

「貴様は!?魔族か!」


 二人にそう言われた男……いや、女?性別は分からないが全身鎧の人物は首を傾げる。

 …………その首は手に持たれているが、中々器用な事をする。


「いやなに、少し道に迷ってな。こう木々が多いと何処に進んでいいか分からなくてな」


 恐らく照れ臭そうにしているのだろう。そんな雰囲気が漂う。

 そんな二人を後目にエルフ達が周囲を囲む。

 剣呑な雰囲気を出しながら、先程言い合いをしていた隊長が二人に改めて誰何する。


「貴様らは何者だ?魔族がエルフの国に何用だ?返答によっては生かしておかんぞ!」


 周囲のエルフも魔力を高めていく中、鎧の魔族と思われる者が口を開いた。


「あぁ、すまんな。別にそちらをどうこうする気は無いのだよ。ただ人族の国に行きたいんだが道に迷ってしまってな」

「んな事言っても無駄だぞ?俺がさっきから同じ事言ってんのに、こいつ等頭が硬いから全く聞く耳もたねぇのよ」

「それはそうだ。お前が相手なら誰でもそうなる」

「あ゛?喧嘩売ってんなら買うぞ?」


 男から発せられる熱波が一段と勢いを増す。

 周囲に張られた氷の結界は徐々に溶けてひび割れていく。

 エルフ達も結界を2重3重にと張っていくがいつまで持つか。


「……やれやれ。そんなだから自分の世界すらろくに管理できないし、脳筋とか単細胞だとか言われるんだよ」

「…………おし。その喧嘩買ったぜ!!」


 男の髪が長くなり体も赤熱していく。

 いつしか全員で張ってた結界も呆気なく破れた。

 その熱気に周囲が焼け野原になる事を幻視した隊長だがそうはならなかった。

 いつの間にか周囲は氷の世界の様に全てが凍り付いていた。

 二人の魔族の周りには更に強固な結界が張られると言うおまけ付で。


「精霊が騒がしいと思ったら何だ、この状況は」


 そこに居たのは間違い無く救世主だった。

 エルフの部隊の者はその姿を見て歓喜した。


「女王様!」


 周囲を一瞬にして氷の世界に変える程の力を使ったにも関わらず、女王は涼しい顔だ。

 だが、この状況で他にも涼しい顔をしてる者が居た。


「こんな事をしにここまで来たのかお前は?」

「るっせー!テメェから売ってきた喧嘩だろうが!」

「はて?事実を言ったまでだが?」

「〜〜〜!!テメェのそんなとこがムカつくんだよ!消し炭になれや!!」


 ……バカ二人であった。

 結界の中では炎が荒れ狂い、微動だにせず剣一つでそれを防ぐ鎧の魔族。

 次第に結界に綻びが出始める。

 エルフ達は驚愕の眼差しでそれを見るが、一人、女王だけは笑っていた。


「面白い!たかが魔族如きには破れはせぬ結界を破るとは!何者かは分からぬが………私も混ぜろー!!」


 嬉々として自ら乱入していった。

 その状況に置いていかれた周囲のエルフは…………。


(((え?……どうすんのこれ?)))


 皆呆然と立ち尽くすしかなかった。

 その様を遥か上空から呆れたように溜息を吐きながら通過する、箒に跨った魔女。


「はぁー。何やってんだか。ま、アタシには関係ないし。アホはホッといて先に行こ」


 今日もエルフの国は荒れていた。




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



(何これ…………超面白いんですけど!)


 そんな一部始終をストーキング……もとい、偵察していた索敵君は満面の笑みでスムーズにこちらに来れる様に誘導していく。


(先ずはあの幼女だな!)


 そう思いながら。

年内にあと1.2話更新しときたいですねー。


お読み頂きありがとうございます。

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