第28話 各国の対応な感じ
今回は三人称視点です。
「こんの!大馬鹿者ーーー!!!!!」
「うべらっ!」
国中に響き渡るのではないかと言う程の大声量で罵倒されながら殴り飛ばされるエルフの男。
場所はエルフの国の王城。
その一室に管理者と名乗る男に転移させられ、すぐさまこちらも転移で元の場所に戻ろうとしたが魔法が発動せず、城内の重役を集めて事の顛末を報告した所、男の妻であり、ハイエルフの女性に殴られる。
腫れ上がった頬を抑え、惨めに震えながら縮こまっている男は現国王その人である。
国王にその様な蛮行を働けば誰であろうと極刑は免れない。
…………普通なら。
周囲に居る衛兵は疎か、重役達も自分に火の粉が降り掛からないように見て見ぬふりだ。
触らぬ神に祟り無しと言わんばかりに。
「だ、だが相手は管理者と名乗り!あまつさえリリトを連れて……!」
「その愛娘のリリトを突き放したのは何処の大馬鹿だ!あ?」
「ひべっ」
国王に更に蹴りを入れるエルフの国の女王。
普段は知的で絶世の美女と言われるぐらいの女王が、今や鬼も裸足で逃げ出す修羅になっていた。
周囲に居る者は皆一様に冷や汗を流しながらこう思っていた。
(((自分は空気。空気だ)))
国王への助けは無かった。
「で、でも」
それでもめげずに弁明をする辺り、流石国王と言うべきか。
「あ゛ぁ?でも、なんだ?」
悲しきかな。今の女王に何を言っても火に油を注ぐだけとまだ理解出来ない国王はさらなる爆弾を投下していく。
…………この察しの悪さもある意味、流石国王と言うべきか。
「そ、そう!その管理者はあろう事かリリトを奴隷にしておって、あの悪神!ブルーメタルスライムを連れて居たのだ!」
周囲の者はその言葉にピクリと反応した。
(((自分は居ない!今ココには存在しない!)))
…………更に自身の存在感を消す事に。
普通なら良く見なくても分かるだろう。
女王の額に青筋が浮かび、今にもはち切れんばかりに脈打ってるのを。
女王の魔力が尋常じゃない位に高まってるのを。
女王の最後の良心で辛うじてその魔力を抑え込んでるのを。
国王も愛娘を管理者と名乗る何処の馬の骨とも分からん者に奪われ、自身の得意としている魔法が使えなかった事、更に一番の理解者である筈の女王に怒られている事に平常心を無くしていたのかも知れない。
……追加の爆弾いや、もはや核爆弾を投下してベットで目が覚めるまでそれに気付かなかったが。
「じゃから儂は各国の王とその場でそやつに宣戦布告したんじゃ!」
その発言を受けて周囲の者達は存在感を消すのを忘れて叫んだ。
「待避!!」
慌ただしく自国の国王を見捨てて我先にと逃げ出す重役、衛兵達。
そんな周囲を気にする余裕も無い国王の弁明が続く。
「リリトもそやつに着くと言いよったから」
その瞬間に国王の言葉は強制的に掻き消された。
女王の最後の良心さえも逃げ出した瞬間だ。
一気に解放される魔力。
元々エルフは高い魔力と精霊との親和性を持っていた。
そのエルフの中に、極稀に桁外れの魔力と資質を持ちながら産まれる者が居る。
それが、ハイエルフ。
エルフとは比べるのが馬鹿らしくなる程の魔力。
300年以上を生き、女王にまでなった者の精霊との親和性。
解放された魔力は渦を巻き、女王の周囲にはいつの間にか現れた多くの精霊達。
他の国と戦争をしても一人で蹂躙出来る様な存在。
そんな力を向けられて漸く王は理解した。
あ、儂、終わったかも。と。
…………ベットで目覚める前に気付けたのは彼にとって僥倖だっただろう。
ただ、その後の地獄を思えばそんな些細な幸せなど無きに等しいが……。
「あなた?言いたい事はそれで全部?」
女王は笑っていた。見る人が見れば聖母と見間違うような神々しさを纏って。
周囲の精霊達も皆、良い笑顔だった。
「あ、その…………魔獄だけは……ちょっと……」
「あなたの腐った性根をちょっと直してあげる」
国王が呟いた『魔獄』とは、ハイエルフが……と言うより、この女王が考え付いた拷問。
自身の膨大な魔力によって相手の魔法を封じ、その魔力で身動きを封じ、更に各精霊達による精霊魔法の実験台にされる。
光の精霊だけは終始治癒に当たる為、毎回不完全燃焼で終わるが……。
「今回は私の可愛いリリトを突き放したんだから、全精霊の実験台になって貰うわね。あ、治癒は私がしますから安心して良いわよ」
…………光の精霊歓喜。国王絶望。
国王にとっては安心出来る要素が全く無かった。
一方精霊達は初めて全員でヤれると知って、大盛り上がり。
それから約10日間、国王の悲鳴が途切れる事は無かった……。
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所変わってこちらは龍王の統治する龍族の国。
その王城の遥か上空、約6キロの所に龍王は居た。
…………絶賛落下中であるが。
自称管理者に未だ能力を封じられて居るのか、魔法は疎か龍に変化する事も出来ずにいる。
「あんの……クソガキがー!!!殺す!ぶっ殺してやるぞー!!」
盛大に自称管理者への呪詛を吐き散らしながら落下を続ける龍王。
なぜ彼がこんな事になっているのか。
理由は至極単純。
自称管理者からの嫌がらせである。
いの一番に殴り掛かり、常に敵意剥き出しだった彼へのささやかな仕返しだろう。
能力、魔法、その他一切を封じられて。
転移直後に聞いた自称管理者のあの言葉も龍王の怒りへの燃料となっている。
(龍だから飛べるよね?これぐらい問題無いよね?まさか、飛べませんとか言わないよねー。飛べない龍なんて只のトカゲじゃん?龍王とも在ろう御方が飛べないとか……ププッ。まさかねー。じゃあ頑張ってねー、トカゲキングちゃん)
…………龍王の堪忍袋も頭の血管と共にブチッとキレた瞬間だ。
真っ先に自称管理者を八つ裂きにする為に地上目指して頭から落下していく。
変化前でも生えている翼で風を切り裂きながら。
高度が5000メートルを過ぎた辺りで一気に翼を広げ、落下速度を緩める。
そして、人間の大人など頭からパクっとイケるほどの大口を開き……。
「来い!!!暗黒龍!!!!!」
自身の最大の友、相棒の名前を叫ぶ。
その声は国中に響き渡り、民は龍王の激怒した声に恐れ、臣下の竜騎士達は相棒のドラゴン達と共に飛び立ち直ぐ様厳戒態勢に、そして名を呼ばれた暗黒龍は周囲の木々を突き破り、弾丸の如く空へと飛翔していく。
龍王はやって来た相棒の背に降り立つやいなや、再度声を上げる。
「今すぐ戦いの準備をしろ!!神々との戦争だ!!!」
その声を聞き、言葉の意味を理解し、相棒は翼を広げ高らかに吠える。
その眼は爛々と光り、凶悪な口からはドス黒い漆黒の炎が零れ出る。
龍王の言葉と暗黒龍の声を聞いた者達も揃って声を上げた。
遥か昔に絶滅寸前まで数を減らした龍族。
その元凶である神々との戦い。
積もり積もった怨みや怒り。
それらを叩きつける事が出来る。
どの龍族も歓喜に湧いた。
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魔王の収める魔国。
その王の住まう城内には高らかな笑い声が響いていた。
「ハーッハッハッハッハ!愉快!実に愉快!!!」
急に居なくなり、また、突然戻って来た魔王を心配して駆けつけた魔王軍の将軍、バルバト・ガスタンが声をかけるも魔王は今まで見た事が無い位に笑うばかり。
呆気に取られながらも何かあった筈と思い、直ぐに主だったメンバーを集める様に近くの兵に激を飛ばす。
「ククククッ……ガスタンよ、皆を集めよ」
漸くまともになった……いや、笑いを堪えながらもやって来た忠臣に指示をだす。
「はっ!既に集めております。すぐにでも揃うでしょう」
「ククッ……そうか。ならば皆に伝えよ、最高の宴が始まるとな。クァーッハッハッハッ!!」
その言葉を聞き、ガスタンは我が耳を疑った。
最高の宴。
例え新たな魔王が誕生しようが、国の領土が広がろうが、大きな戦に勝とうがそれは魔王から言われることは無い。
そもそも、魔族が求めるのは混沌。魔族が絶対的な頂点に立つことでもなく、敗者になる事も無く、只々世が混沌としている事を望む。
今の平和な世は誰も望んではいない。
そんな魔族の王が口にした最高の宴。
それは魔族が望む最高の混沌がやってくる事。
暫しボーッとしていたガストンはそれが理解できるやいなや、その場から転移した。
行く先は皆が集まる広間だろう。
それから暫くして、城を、大地を揺らす程の歓声が湧き上がる。
魔国もまた、大きく動いていく。
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「……畏れながら王よ、それは真か?」
国王アークにより集められた重鎮達は、国王からもたらされた情報に未だ半信半疑だった。
城内より姿を消し、捜索隊を出そうとしていた所にいきなり現れた。消息不明だった王子と共に。
その王が有無を言わさず皆を集め、事の顛末を話した所でその場には重苦しい空気が漂っていた。
おそらく王が言ったことは事実であろう。
だが、信じたく無い、認めたく無いと言う想いから先程の発言。
皆がそう思うのは仕方ない事、王もいきなりそんな事を言われれば一笑に付すだろう。
だが、これは紛れも無い事実。
「夢や偽りだと信じたいのは解る。だが現実なのだ。管理者と名乗る男はブルーメタルスライムを連れ、得体の知れない力を使い、各国の王の能力を封じ、詠唱も無しに転移魔法を使用した」
重い空気の中発せられる王の言葉は、周囲の者を更に絶望の淵に追いやる。
そんな重苦しい空気を破るようにドアがノックされる。
「入れ」
王によって招き入れられたのは国軍の諜報部を纏めるリーダー、目の所に穴が空いただけの仮面を被る男。
名前や素性は王しか知らず、王妃や王子も顔を見た事は無く、その男に指示を出せるのも王ただ一人。
部屋に入り王へ跪く。
「ご報告を。先程龍族の国は戦争準備を開始しました。また、時を同じくして魔族の国からは『国が活気づいた』と。更にエルフの国からは今までに無い程の魔力を観測しました。恐らく女王かと」
「そうか。獣族とドワーフの方はどうなっている?」
「は。ドワーフは変わらず。獣族は既に此方に向かっていると。後1月程で国境に到達します」
「……管理者は?」
「足取りは掴めておりません」
「……ご苦労。引き続き捜索を続けよ」
「はっ」
報告が終わり、部屋から退出する男。
その報告を聞き、更に沈む空気。
暫く沈黙が続いた。
「……ドワーフは恐らく動かぬだろう。他の国と連携を取り、攻める。良いな、決して功を焦って仕掛けぬ様に。そして、魔族は今後一切信用するな。…………神々との戦争だ。世界が動くぞ」
皆静かに頷く。
こうして人族も戦争へと動き出す。
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その頃、元凶となった管理者は……。
「おぉ!メッチャふかふかのベットじゃん!…………で?何で枕を抱えてココに居るのかな?お二人さん?」
「私はマスターの奴隷なので一緒に寝るのは当たり前かと」
「漸く会えた家族じゃん!一緒に寝るに決まってるでしょ!」
「いやいや、俺は一応男だからね?」
「私は気にしませんが?」
「妹を襲う気なんて無いでしょ?ロリコンでも無いし、昔はたまに寝てたから大丈夫じゃん?それに!初日から変な声響かせるとかさせないからね!」
「しねえっつってんじゃん!」
「「じゃあ問題無いね」」
そう言っていそいそと管理者が寝るはずのベットに潜り込む2人。
それを見て諦めたのか、管理者は盛大な溜息を漏らしながら同じベットに入っていく。
こっちの方が書きやすいような?
次はまだ書いてないのでいつもの如く遅れます。
もしかしたら次も三人称視点で書くかも。
お読み頂きありがとうございます。




