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神様の誕生日  作者: スマイリー
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第1話 あ、そんな感じ?

 皆は厨2病と言うのを知ってるだろうか?

 主に中学2年位で発症するかなり痛い病気だ。

 世の男は皆これを発症して大人になっていく。中にはその病気を拗らせながら大人になるものも居る。

 代表的な症状としては自分は特別な力があると信じ、変な技名を考えたり第3の目があるとか言ったり・・・。

 まぁ、子供のごっこ遊びを更にグレードアップした感じだと思ってくれれば良い。

 それが何年もして思い返してみたら大概が黒歴史になってたりする。

 その黒歴史を暴露されただけで死人が出るほどにヤバイものだ。

 中にはそんな黒歴史をうまくコントロールしている奴も居るが・・・それは少数だ。

 危険物をコントロール出来るとか、それだけである種の才能だろう。

 俺はコントロール出来なくて記憶の奥底に投げ捨ててドアに何重にも鍵をかけて封印してる。


 そうやって封印したとしても心に残った厨2病が再燃してしまえば新しい黒歴史が生まれてしまうから余り意味は無いのかもしれないが。

 さて。そんな危ない厨2病だが、今まさに再燃してきている。

 仕事が終わって家に帰ってきた所なんだが、夏という季節のせいか怖い話を読みたくなり。

 ネットサーフィンしてたら面白そうな話を見つけた。

 なんでも、異世界へ行く方法だとか。

 しかも読んでみたら意外と簡単。

 流石に夜にやるほど勇者じゃないから真っ昼間にやるが。

 ・・・チキンと言いたけりゃ言えばいいさ。

 今日は日が暮れてるしちょうど明日は休み。今のうちに準備しておこう。


 さってと。

「今日は一丁異世界に出掛けてみるかな」

 ……まさかこんな事を言う日が来るとはね。

 とりあえず今日の予定は昼前に異世界への行き方を試して、その後近くの定食屋で昼飯食べて、帰りがけに買い物してから家でゲームって感じかな。

 普通の休日たな。

 まぁ、そんな日も悪くないさ。

 人生のんびり。

 ~♪~♪

 ん?電話?誰だ?

 ……知らん番号。何かの業者か支払い系か?

 めんどいしシカトで。

 せっかくの休みを邪魔されたくないからねー。


 準備も出来たし行きますか。

「行ってきまー」

 誰もいない部屋に言うのも慣れたもの。自分に言ってる感じもするけどね。

「よし。今日もよろしく。」

 ヘルメットを被りながら愛車の原付にまたがる。

 車は持ってない。一人暮らしには要らないでしょ?

 そもそも原付免許しか無いし。

 中古で買ってもう6年になるけどまだまだ絶好調。

 月に一回はメンテしてるし、オイルも良い物使ってる。

 錆びてきたネジやパーツは定期的に新しいのに変えて。

 流石にエンジン部分までは手が出せないからお店に持っていくけど。


「んー、どこ周りで行こうかな?大通りはメンドイし味気ないから中道通りながらのんびり…て感じだと遠回りになるけどいっか。」

 どの辺かは寝る前に調べ済み。

 愛車に跨りエンジンをかけて…エンジンを…?

 ん?かからないんですが?

(マジか!?燃料は半分以上あるし…故障?)

 愛車を降りてキックでかけてみる。

(頼むよー。お前が動かなかったら今日の予定大幅変更じゃん。機嫌直せー。)

 後で綺麗に磨いてやると思いつつ。

 ブゥゥゥン!

(おっしゃー!ナイス!良くやった!さすが!)

 たぶんバッテリー的なもんが原因っしょ。でも次の休みにお店行って見てもらうか。


 道中全く何事も無く目的地に到着。

 目的の場所は10階建てのビル。

 中にはスナックや飲み屋などが入っており、他には何のお店なのかわからない看板が出てたり何の案内板も出てなくてやけに厳重に鍵がかけられてるドアがあったりするが、特に心霊スポットだったり変な噂がある場所ではない。

 中に入っているお店のせいか、昼間は驚くほど人気がない。

 夜間はチラホラと酔っ払いや目を合わせたくない明らかにヤバイ人が出入りしてるが。

 なぜここを選んだかはいくつか理由がある。

 まず、今回試す異世界への行き方が10階以上あるエレベーターを使うから。


 そして、心霊スポットではなく人気がない事。

 最初の理由は大前提として次の理由は単純に怖いからだ。

 誰が好き好んで昼間とは言え心霊スポットに一人で行きたがる?

 俺にそんな肝っ玉はない。

 世の中には真夜中に一人で行く猛者も居るが俺から見たら頭が完全にイッテルとしか思えない。

 他の理由として、帰り道に美味いラーメン屋と激安スーパーがある。

 米系か麺系で悩んだけど昼飯はラーメンで夜に米を食べた方が贅沢な感じがしたからだ。特に根拠は無く、なんとなくなんだけど。

 でも風呂上がりに映画を見ながら食べるご飯とか最高でしょ?

 そんな理由でここ選んだ訳だが。

 今俺の目にはあり得ないものが映ってる。


 別にビルが無くなって更地になってるとかパトカーが周囲を封鎖してビルに入れないとかじゃない。ましてやエレベーターが無いなんて事もない。

 エレベーターはしっかりとある。今そのエレベーターの前に居るんだから。

 ただ、普通なら上を指し示すボタンがあるはずの所に肝心のボタンが無い。

 いや、有ったとは思う。一応その名残?みたいな感じで穴が空いてるし。でも穴の中を見てもボタンの中身も見当たらず、奥に薄っすら壁が見えるだけ。


「どうやって呼ぶん?これ。」

 試しにとその穴に指を入れてみても何にもなし。指には何にも引っかからない。

 上を見てみたらエレベーターの上部に並んであるある数字は5の部分が光ってる。

 古いビルだし、酔っ払いか誰かが壊したのか。

 それでビル自体も古いし直す費用もかさむって事で放置されてるんだろう。

 ここでエレベーターが呼べないなら上の階に行ってそこからボタンを押して一度1階まで戻って来ないといけない。


 仕方ないと思いながら階段で2階に上がり、そこでエレベーターに乗り込み1階に。

 さすがに古いエレベーターだけあって狭い。大人が4人も乗れば一杯になるほどの狭さ。

 しかも所々に落書きやガムがくっつけられたり、各階へ行く為のボタンの幾つかはタバコでも押し付けられたのか若干溶けてるし。

(酔うと周りが見えなくなるのかねー。こんな所燃やしても意味無いのに。)

 そんな事を考えながら1階についたのを確認。

「よし。サクッとやっちゃいますか。」


 エレベーターを使った異世界への行き方はいたって簡単。

 まずはエレベーターに乗り込む。この時は必ず一人で。

 もう乗り込んでるから次のステップ。

(えーっと。エレベーターに乗ったまま4階……次に2階……次に6階……次が2階……んでもって10階……と。)

 冷静になって考えるといい年した大人がエレベーターで遊んでるって感じに見えるよな。

 まあその辺は誰にも見られてないから良いけど。

 無駄な事を考えてる間に10階に到着。

 注意としてこの間に誰かが乗ってくると失敗する。

(にしても大先生は便利だよなー。ネットに繋がるスマホがあれば解らないことが直ぐに解るって言うね)


 正確には色んな情報をネットに上げてる人達なのかもしれないが。それでも現代サマサマって感じで少しにんまりしつつスマホをいじり次のステップを確認。

(次はー……10階についたら降りずに5階。と)

 降りずに上に行ったり下に行ったり。ホントにエレベーターで遊んでるガキンチョだな。

 このエレベーター、ドアには窓が無いんだけどもし窓があったら通り過ぎる階に得体の知れない物があったり、同じ人が連続で見えたりと、かなりホラーな感じだよな。

 ……想像してみて怖くなったから窓が無くて良かった。

「ドア先輩あざっす。」

 そう言ってドアに向かって軽くお辞儀。


 人って誰も見てない所ではかなり痛い事を堂々とやるよねー。

 たまに心霊動画の監視カメラシリーズで奇っ怪な行動してる人が居て、幽霊よりもこの人の方が危ないんじゃね?とか思う事もあるし。

 そんな事を考えてたら5階に到着。

(さて、次のステッポはーっと。)

 怖くなった雰囲気を頭から無理矢理チラシつつスマホを確認。

(ん?)

 視線をやや下に向けてスマホを見ていると視界の上の方、丁度開いたドアの向こうに黒いスニーカーを履いた足が見えた。


( !!?? )


 頭の片隅に残ってた恐怖心に一気に火が付いて一瞬ビクッと身体を震わせ、顔を上げてよく確認。怖い物見たさから来るのか、意外とビックリするとそれが何なのか確認してしまう人は多いはず。

 勢いに任せて視線を足から一気にその人の顔に。

(あ。ただの女の人じゃん)

 幽霊じゃないと分かれば今までの恐怖心はどこへやら。

一人じゃないって事から来る安心感か。はたまたそれが美人だったからか。

 エレベーターの隅に後退しつつその人を流し見る。

 髪は今まで染めた事が無いようなツヤツヤした黒色で、少し胸元に届くぐらい伸ばしたストレート。目元はちょっとつり目。化粧をしていないのか唇や肌は自然な感じ。ナチュラルメイク?

服装はただのTシャツにGパンという凄くラフな格好。胸もデカ過ぎるわけでも無く普通。


 前に垂れてきてた髪をサッとかき上げながら乗ってくる。

(あ、いい臭い・・・じゃなくて!これって失敗?)

 女の人が1階を押すのを横目で見ながら冷静にスマホを確認。


[5階に着いたら若い女の人が乗ってくる。その人には話しかけないように。]


(え?)

 まさかの正規ルート。


[乗ってきたら1階を押す。]


(マジで?)

 美人に見とれて狭いエレベーター内でいい匂いをバレないようにクンカクンカしてたから失敗したと思ってたのに手順通り。

(て事は次は……)

 少しドキドキしつつ次のステップを確認。


[1階を押したらエレベーターは1階に降りずに10階に上がって行きます]


 身体を襲う僅かに下に抑えられる感覚。

(あ、マジで上がってるん?でもちゃんと1階押してるよな?ヤバくない?)

 内心焦り気味にボタンを見てもちゃんと1階が押されてる。

 上部の数字も5階から6階、7階と上がってる。

(……あぁ。これはアレか。上の階で誰かがエレベーターを呼んだんだな。きっとそうだ。そうに違いないさ)

 望んでやった事なのに怖くなってくると現実逃避に走る小心者。

 全身に鳥肌が立っているのを半ば無理矢理誤魔化すように有り得そうな可能性を考え、本来成功して喜ぶ所をそれ以上の恐怖心が塗り潰す。


 この時その恐怖心から既に失敗したもんだと楽観的に考え、スマホで次を確認するのを止めていた。

 確認していれば10階につく前に他の階を押して辞める事が出来たはず。

(にしても美人だよなー)

 その恐怖心から逃げるように全く関係ない事を考え出す。


 そしてエレベーターは10階に到着。

 ドアが開いて迷う事なく先に出て行く女の人。

 1階に行きたかったはずなのに10階で降りていく。

 ちょっと不思議に思いながらもそれに続いて自分も出てみる。

 普通だとここで女の人が急に振り返ってあり得ない顔でケタケタ笑い出すってのがありきたりなんだろうけど、そんな事も無く普通に前を歩いて行って道路に出ると右に曲がっていく。

(・・・道路?)

 おかしいと思いつつ今来たエレベーターを振り返って見る。

(は?おかしくね?)

 そこには相変わらずボロいエレベーターがあるんだが上部の階を示す数字は1階を表示している。


 上に上がる独特の抑えられる感じと中にいた時は明らかに上がっていった数字を考えても1階に降りたことは考えられない。

 更におかしな事にエレベーターの横にはちゃんとボタンがある。

(ボタン……無かったよな?まさか俺が乗ってる間に修理した?)

 それこそまさかで、そのボタンは修理仕立てのキレイな物じゃなく、ボロく色あせた物だ。

 試しにボタンを押してみたら問題なくエレベーターのドアが開く。

 後ろからは時折聞こえる道路を車が横切る音。

 前には無かったはずのボタン。

 10階に来たはずなのに1階に来てる。


(あ、……もしかして……)

 ここに来てようやく現実に気づく。それと同時に襲ってくる言い様のない恐怖心や不安。それと少しばかりの成功した事への期待感。

 一気に全身を悪寒が駆け抜け、鳥肌が立つ。

 そして恐る恐るスマホを確認。


[成功を確かめる方法は1つだけあるそうです。その世界には貴方しか人は居ないそうです]


(あれ?でもさっき女の人が出ていったし、今も車がチラホラ通ってるし。やっぱ失敗?)

 後ろを確認して聞こえてくるエンジン音。

 人が自分だけなら聞こえるはずが無い音。

(あ!バイク!)

 異世界云々の事はそっちのけで真っ先にバイクがあるか確認しに行く。

「あったー、危ねー。無くなってたら歩いて帰るしかなかったじゃん」

 適当に電柱の横に止めたバイクに近寄りつつ周囲をそれとなく観察。


 全く変わった所も無く、チラホラ人も見えるし文字が左右逆になってるなんてことも無い。

(これってどうなんだろ?成功?でもそれにしては普通だしスマホもちゃんと使えるし。ホラー的な感じは全くしないし)

 さっきまでの悪寒や鳥肌は嘘のように無くなって、逆になんとも言えない不思議な感じだけが残る。

 もう一度確認と思い、さっきのエレベーターに向かう。

(……やっぱボタンあるよな。それ以外は何も変わってないし。見間違えてたか?)

 そして1階のフロアを適当に見回してたら違いを見つけた。

 このビルにあるお店はどれも夜中に開くお店ばかりで、今みたいな昼間に営業しているお店はない。

 その筈なのにそのドアの前には営業中の看板。

(こんな店あったか?つうか昼間っから飲み屋とか誰が来るん?ブルジョアか?ブルジョアなのか?!爆ぜろ畜生!)

 世の中のお金持ちな人達に暴言を吐きつつお店の名前を見る。


[異世界館]


 そんな店の名前。

(直球すぎない?あからさまに狙ってるだろ?)

 異世界に行く為の方法を試したら異世界の名前があるお店を見つけた。

 そんなネタにもならないような現実。

 そんな現実に呆れつつ、ちょっと馬鹿にされてる?と思いつつお店に入ろうか悩む。

(こんだけわかりやすいとなんか誘われてる感じがするけど、普通に考えてこんな所にある店に入る?………………無いな)

 そうと決まれば後は帰ってゲームするだけ。

 そのまま店の前から離れてバイクのある所に。

「あら?お客さん?」


 少し歩いた時に後ろから声をかけられた。

 振り返って見たらさっきのお店から女の人が出て来てた。

 パッと見は飲み屋の人って感じじゃなくてどちらかと言えばOLみたいな感じ。

 髪もありがちなちょっと茶髪で軽くウェーブがかかってる。

 長さも肩より少し長いぐらい。

「お店なら開いてるわよ?」

「あ、いえ。ちょっと探検してただけですから。」

 知らない人には関わらない。めんどくさいから。

 そう思って返事をしたんだけど。

「今時探検て珍しいわね。良かったら中も見ていく?」

 少し笑いながらそんな事を言われた。

(笑うと意外と可愛いな。)

 男はアホ。すぐにそんな事を考える。


(そのまま帰るのも感じ悪いし可愛いから少し話し聞いてみようか。)

 男は猿。ちょっとでも可愛いと分かればホイホイついていく。

「変わった名前のお店ですね。どんなお店なんですか?」

 少し女の人に近寄りながら飲み屋なのかちょっといかがわしいお店なのか確認してみる。

 どんなに可愛くてもそっち系だったら適当に切上げて帰るかと思ってたら。

「普通のカフェよ?周りがそんなお店ばかりだから勘違いされやすいけど」

 こっちが疑ってるのがわかったのか苦笑しながら教えてくれた。

「まあ、周りが飲み屋ばっかりですからね。ちなみに安かったりします?今あんまり持ち合わせ無いんで」

 自分からボラれる物は無いと先に言っておく。

 予防線だな。


「大丈夫。一般的な値段よ。なんなら見て行くだけでもどお?あ、お店に入ったからって入場料とか取らないから安心して」

 笑いながら今度は先に言われた。

 さすがにこんなに失礼な事を聞いたんだから多少高くても良いかと思い、お店に行く事にする。

「じゃあ、少しお邪魔します」

「はい。いらっしゃい」

 ニコニコ微笑みながら入って行く女の人の後に続いて部屋の中へ入って行く。

タイトルに深い意味は無いかも。


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