第13話 またやらかした感じ
「ね?なかなか面白いだろ?」
都心部から離れた郊外にある静かなカフェのテラス席で、男は向いに座った女へと話しかける。
その言葉通りに、面白そうに笑って。
「まぁ、確かに面白い発想してるけど。でもあれぐらいなら今の時代の子達だと当たり前じゃないの?」
男とは逆に女の方は面白くなさそうな、どこか心配している様な複雑な表情をしていた。
「発想自体はね。でも面白いのは性格だよ」
そう言って手元のコーヒーで喉を潤す。
「性格?どこにでも居そうな平凡な子じゃない?」
返事をしつつケーキを突く。
なかなか美味しいのか、既に3個目のケーキだ。
良くあるベイクドチーズケーキなのだが、このお店のは外側がパリッとしていて、中はしっとり。
更に自家製のブルーベリージャムと苺ジャム、生クリームがケーキの横に添えられて、好みのジャムを付けて食べられる。
普通は何も付けずにチーズの風味を楽しむ物だが、このジャムや生クリームがまた良く合う。
もう一つお代わりしようかと考える程に。
「……にしてもよく食べるねー。甘い物は別腹かい?」
男は見てるだけで胸焼けしそうだ、と思いながら聞いた。
それもそのはず。女が先にこのお店に来ていたのだが、男が来た時には既に11個の様々な種類のケーキを食べ終わっていた。
自分の奢りだが金銭的な事は気にしていない。
「そ、別腹よ。あなたも食べてみたら?美味しいわよ?」
最後の一口を食べて、店員にお代わりを注文しながら返事を返す。
「……やめとくよ」
若干引き気味に答えるのが精一杯だった。
それよりも。と男が運ばれて来たケーキを見ないように話し始める。
「普通だとあんな大量虐殺なんてしようものなら、精神にかなりダメージが行くはずなんだよ。それこそ殺人を何とも思わない程に心が壊れてない限り」
「元々そうなんじゃないの?もしくはそれで快感を覚える変態とか」
「いや、彼は至って普通だよ。逆に優し過ぎるぐらいに。君もそう感じたんじゃないのかい?」
「……まぁ、そうだけど」
「そんな彼が心を壊す事なく平然としている。面白くない?」
男はどう?と言わんばかりの顔で女を見る。
「そんな子もゴロゴロ居ると思うけど?」
男はニヤッと笑って続きを話す。
「普通の人ってある程度の善と悪を心に持っているんだよ。その時によって善に傾くか、悪に傾くか変わってくるけど。ただ、その振り幅はある程度決まっててね、ベースが善だと善に傾く幅が大きくなって、悪に傾く幅が小さくなる」
「その辺は知ってるわよ、以前に聞いたもの。過去に居た聖人君子は限りなく善よりで、悪側に傾く幅が殆ど無かったってやつよね?」
「そう。振れ幅は決められてるんだよ。一部例外で多重人格とかだと、各人格毎に振れ幅が有るから一人は善人、一人は悪人なんて子も居るけど」
「……もったいぶるわね、それで?」
「彼は振れ幅に限度が無い」
それを聞いて一瞬ビックリしたが、女はすぐに怪訝な表情で聞き返す。
「それって多重人格じゃなくて?」
「何回も調べたし、覗いてみたけど彼の人格は1つだったよ」
今度こそ女は驚愕で言葉を無くす。
それを見た男は満足したのか、また笑いながら話し始める。
「彼なら上手いことやりそうじゃない?」
「……………ちょっと待って。本当に?あなたが作ったんでしょう?有り得るの?」
漸く立ち直った女が真剣な顔で聞く。
「本当だよ、そして断言する。彼のケースは有り得ない。だから彼を見つけた時は僕もかなりビックリしたよ」
男がそれまでとは違って真剣な顔で言ったと思ったら、また笑顔になる。
「それって…………マジ?」
「マジもマジ、大マジだよ」
「……はぁー。……それなら彼が選ばれたのも納得だわ」
「でしょ?僕や君には無理だった、でもあいつ等には任せたくない。だから、彼だよ」
「別にあいつ等に任せても良かったんじゃない?」
「それは面白くないじゃないか。確実に滅茶苦茶にされるだろうし、この世界は僕の最高傑作だし、結構気に入ってるからね」
「だからって、遊び回るからあいつ等が目を付けてくるんでしょうが」
恨みがましい目で睨んでも男は気にせずに話を続ける。
「まぁ、見てなよ。絶対面白いからさ。だから何か聞かれたら全部言っちゃって良いよ」
「本当に全部?あいつ等の事も?あなたの事も?」
「うん、全部。例え全てを知っても彼は続けると思うよ。前回は駄目だったけど」
「はぁー……あなたに目を付けられたのがあの子の不運ね。分かったわ聞かれたら、教える。聞かれたら」
女は話は終わったと更にケーキのお代わりを頼む。
「……まだ食べるのかい?」
「当たり前じゃない。あ、これとこれを3個づつ持ち帰りで」
やって来た店員も若干引き気味だ。
「…………まぁよろしく」
男はもはや見なかった事にしてコーヒーを飲む。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「単刀直入に聞く、一体何者だ?」
厳つい顔した衛兵さんに睨まれてる。
周囲には明らかに警戒している兵士に囲まれて。
うん。やっちゃった。
初めは当たり障りの無い様に答えて、さっさと街に入ろうとしたのに、何やら特殊な板?に手を置けと言われて無警戒に置いたらこうなった。
いや、マリール村を消したのはバレて無いけど空を飛んでるのを見られたらしくて。遠くを見る魔道具が有るらしい。
で、手を置いた板も魔道具で効果は対象のステータスを見る事。
見られても問題ない様にと改竄していたら裏目に出た。
空を飛んでいたのにステータスは平凡。寧ろ何のスキルも魔法適性も無いし、ALL10は弱過ぎた。
そんな旅人居てたまるかと言われたが平均が分からないんだからしゃあない。
そして極めつけは、焦って再度ステータスを改竄してスキルに飛行を加えた。この場で、目の前で、魔道具に手を置いたままで。
当然皆に見えるステータスも急にスキルが現れる。
その時の皆の動きは凄かった。
ムチャクチャ恐かった。多分、リアルで特殊部隊とかにいきなり囲まれたらこんな感じだろう。
暇人連中は知っていた筈なのに教えてこなかった。
まぁ、俺だからな。確実に面白そうだからって理由だろう。
……俺もマップを見るようにしよう。
そんな事を考えてたら目の前の机が思いっきり叩かれた。
「何者だと聞いている!」
かなりビックリした。そして衛兵さん恐ぇー。
これは早く何か答えないと。
(完全犯罪使えば良いんじゃね?)
いや、それを使ってこんな状況になってるんだよ?分からないの?バカなの?
(それ、特大のブーメランな?)
(そうそう。完全犯罪はあらゆる物を隠蔽・改竄出来るんだよ?)
んー………この人達を隠すとか、俺自身を隠して逃げるとか?
(もっとスマートに行こうぜ)
(逃げたら指名手配されるぞー)
(余計めんどいぞー)
(もっと考えろー)
何かムカついてきたな。こいつ等消してやろうかな?
…………消す?
(あ、やっと気付いた?)
何となく分かったわ。アレだろ?衛兵さん達の記憶消す的な。
(まぁ、正解で良いか)
(及第点だねー)
(正確には消す事は出来ないから記憶を改竄するんだけどねー)
(うんうん。何も問題無かったって感じにねー)
まだ何かムカつくけど、そういう事か。
でも記憶を弄れるのか、なんでもありだな。
(根本的な記憶は弄らないよ?)
(記憶の表面?一部?を改竄するだけ)
(そこまで何でもありじゃなかったわー)
(根本的な所を変えると別人になっちゃうからねー)
(そっからバレるかも知れないしー)
(それだとスマートじゃないからねー)
まぁ、何でもいいや。やっちゃってー。
((((アイサー))))
次の瞬間、スキルを発動したらこの部屋にいる衛兵さん達が一瞬ビクッとした。これはこれで恐い。
そして雰囲気が変わった。
「大変失礼した。今は新たな脅威が現れたと国から通達があった為、少しでも怪しい奴がいたら連れて来いと部下に言ってるんだ」
え?なんの事?何を改竄したん?
(衛兵さん達が見たステータスは至って普通で)
(空を飛んでた奴とは無関係って事にしといた)
(で、怪しまれたのはフードで顔を隠してたから)
(そして衛兵さんが早とちりして話が大きくなった的な)
はー、なるほど。
「いえ、こちらも変に誤解を招く様な格好ですいません」
「そう言って貰えると助かる。あと、街に入るならフードは取っといたほうがいい」
「わかりました」
そして色々話をして無事に街に入れた。
いやー、一時はどうなるかと思ったけど良かった。
これで飯が食えるぜ。
(あいつ等食べなくて良かったのか?)
ん?スラメブルか。
(お前と違って俺は人なんか食べれないからな。食べたくも無いし)
(でも敵だろ?)
(んー、まだ敵ってわけじゃないな。何もされてないし)
(そうなのか?)
いまいち納得してない様だけど、そこは慣れてもらうしかない。
絡んできた奴を片っ端から消していったらいずれ誰も居なくなるんじゃないかと思うし。
(俺にとっての敵もいつか現れるだろうからその時に教えるよ)
だからスラメブルにも俺の考える敵ってのが何なのか覚えて欲しい。
仲間だからな!
(超ドヤ顔で変な事言うなよ恥ずかしい)
(仲間だからな!だって。ププッ)
(俺等までそんな奴だと思われるじゃん)
(マジ勘弁ー)
(ねぇ今どんな気持ち?ねぇどんな気持ち?)
(カッコつけて言ったセリフを馬鹿にされてどんな気持ち?)
よし。NDKした奴デリート。
お前らくだらん事言ったらガンガン消して新しい奴作るからな?
((((下らないことは言いません!サー!!))))
暇なら周囲の索敵でもしてろアホ。
((((サー!イェッサー!!))))
俺ってこんなにウザい奴だったか?…………ちょっと気をつけよう。
そんな事より飯だ。
街の中はガヤガヤしてて活気がある。
建物は木造が多い感じだが、チラホラと石造の物もある。
街の人達はパッと見ただけでかなりカラフルだった。
…………いや、お祭りとかじゃなくてね?髪の色がメッチャカラフル。
赤やら青やら緑やら黄色に金、銀、黒に白、これを見てるだけで、ああ、異世界だな。と感じてしまう。
そして人種も様々。
頭に犬耳やウサ耳を生やした獣人?も居るし、耳の尖ったエルフ?も居るし、小さくてズングリしてるドワーフ?も居るし。
キョロキョロしてしまうのは仕方ないと思う。
そして衛兵さんに教えてもらった酒場に行く。
この街で美味い飯が食べれる、お勧めのお店はある?と聞いたら教えてくれた。
値段も安く、量もある。しかも美味い。
現代でそんなお店があれば確実に大繁盛間違い無しだな。
ん?お金はどうするのかだって?
はっはっはっ!金なんてその辺にあるではないか!
……まぁ、早い話が得意のチートスキルを作って周囲の人達からパク……少し借りようと言う感じよ。
(返すとは言ってない。的な?)
いつかは返すよ?いつかはね。
て事で、久し振りに自分でスキル作成。
出来上がったのがこれ。
お金を拝借
・拝借する金額と範囲を設定、発動後に範囲内で設定金額の10倍以上の金額を所有している人物や建物から拝借する。
貯金箱
・お金を無限に入れる事が可能。入れてる金額も表示され、出し入れ自由。
これならバレないでしょ。
早速使用。
金額は銅貨1枚、範囲はこの街全体。
使用した途端貯金箱の金額がアホみたいに増えた。
……街全体はやりすぎたな。
ちなみに、この世界の通貨は上から、白金貨・金貨・銀貨・銅貨・鉄貨。
鉄貨10枚で銅貨1枚、銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚、金貨10枚で白金貨1枚となる。
円換算すると、鉄貨100円、銅貨1000円、銀貨1万円、金貨10万円、白金貨100万円になる。
で、街全体から銅貨1枚を拝借した今の所持金、銅貨9489枚。円換算9,489,000円。
…………一瞬で大金持ち。自分でも思う、ちょっとヤバイと。
これはアレだな、貧しい人に分け与える義賊的な事をして減らすか。うん、そうしよう。こんな大金生まれて一度も見たこと無いから超ビクビクしてる。
早く使ってしまおう。
また読んでばっかりだったのとリアルが忙しくて遅れました。
はい。言い訳です。すいません。
一応ヒロインポジの子は次に出て来る予定です。
次こそは金曜に更新したいです。




