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第四話 息子の言い分。(キイチ視点)


 黒髪に黒目。自分の異質さを常に感じる。


 十六(成人)を過ぎたのに、未だに子どもに間違われ知らないおばちゃんから飴を渡される。


 よくあること。


 サラガ公国からくる女性は飴好きが多いのだろう。母親に似たデカイ目が良くない。まつ毛が多いと羨ましがられても全く嬉しくない。


 父親のような切れ長で鋭い目に憧れて、目を細めたりすると「ぼくぅ、怒ってんの? 飴ちゃんあげるから早く機嫌直してね!」とまた飴を貰う。悪循環だ。


 自分は童顔ではない。

 目がデカイだけ。

 背は、これから俺は伸びるのだ。牛乳も毎日必ず飲んでる。必ず伸びる!


「ちっくしょおおーーー!!!」


「何、叫んでんの? 受付、無意味に叩かないでよ。お、飴発見! もーらい!」


 母親がのんきに話しかけてきた。


「そーいえば、全ギルドのギルマス達に登城しろってゆー招待状王宮から出たんだって? いいの? 父さんが行くって返事出してて」


「お城はちょっと鬼門でねー。会いたくないとゆうか。なんとゆうか」


「伯爵令嬢だったんだろ、母さん。何したんだよ」


「えー。爵位に目が眩んだ成金親父の連れ子だよ。デビューすらしてないし何も……って、なんで知ってんの!?」


「トレジャーハンターですから」


 少し伸びてきた前髪をかき上げる。最近知った絶縁している母親の実家。いや、祖父の婿入り先のお貴族様と言った方が早い。祖父の事業も危ういし、それなのに散財してるから今のところ没落必須だけど。母親の驚いた顔が面白くて口元が緩む。


「理由になってないっ!」


「まぁ、俺なりに情報網があるわけでぇ。例えば、父さんが娼館に行ったこととか」


 母親が息を飲み込む。

 知らなかったのだろう。


「昨日だよ。セルバさんとトゥルニエの高級娼館に……って母さん? マスター?」


「受付お願いねっ!!」


 メチカ王国では良くいる茶色の目を煌めかせながら母親は去って行った。口元が笑っていた。自分が嘘つき呼ばわりされるか、父親に対して怒るかあるいは嘆くかすると思ってた。予想外の反応に少したじろぐ。


「め、命運を祈る」


 父親に少し同情した。



☆☆☆



「教えて貰えなかった」


 母親はすぐ帰ってきた。心なしか暗い。


「守秘義務があるんだって。女の人買いに行ったわけじゃないんだって。デボラにもロザリーにも会ってないって。知らなかったんだよ! 信じられる? 超有名売れっ子妓女なのに!! 私も会ーいーたーいぃ!!」


 怒っている観点が違うと思う。


「エントランスのシャンデリアは噂通り王宮同等のレベルらしいよ! 白くって、天井高くて赤い絨毯で、大きく曲がった階段がどでーんとあって!! そこに侍る美女美女美女っ!!」


 はふぅ、と母親が右手を頬に当てて息を吐く。


 母親は父親を信頼している、浮気を疑ってないと良い方向に考えてみた。


「だから、女将に頭下げられただけです。誰もいませんでした。自分はセルバとしか話してません」


 父親がため息まじりで階段からこちらに降りてきた。


「キイチ君。大人には大人の事情が、あるのですよ?」


 心なしか寒い。首が軋む気がする。

 ぎこちなく目線を依頼書がある掲示板に向けて、撤退を試みる。キケン。ココ、キケン。


「マ、マスター。僕、この依頼の薬草取りに行ってくる。受付よろしくね?」



「あぁ。また、その薬草の依頼があったのですね。それよりこの外堀清掃の依頼に行きなさい。その方が人の為になるでしょう。キイチ君、行ってらっしゃい。……それと、仕入れた情報を鑑みず、口からこぼすのは良くないと思いますよ?」



 最後は小声で耳打ちされた。

 耳元での低音はゾクっとする。

 顔は笑ってるのに、目線だけで怒っているのがよく分かる。


「き、気をつけます」


 忠告、耳に入りました。ホント許して下さい。ごめんなさいぃ。


「気をつけてね〜」


 母親が片手を軽く振って笑う。ささっと口角だけ上げてその場を去る。勇気ある撤退だ!


 母さんは何故、のほほんとしているのだろう。薬草依頼も何かいわくありそうだし。調べてみるか。


 外堀清掃はサラガ公国から亡命してきた女性が多く受ける依頼だ。また子ども扱いされるな、と少し気持ちが沈む。

 両手で自分の頬を叩き気合を入れる。気持ちを切り替えて、集合場所である門前に向かって軽く走り出した。

アンナさんは身長150センチ前半くらいで、ジローも身長170センチくらいです。この辺の国の平均が女性160後半、男性190前後くらいなので、キイチ君は童顔(ジローは年齢が低く見える民族出身)と背の低い遺伝子しかありません。現在は150後半くらい。足も小さく靴に悩まされる日々。……がんばれ。


ジローが酒場に行ったのは夕方。それから娼館に急遽連れていかれギルド(仕事場)ではなくお屋敷に帰ってきたのは二十時過ぎ。


アンナさんがジローが娼館行ったことに怒らなかったのは、その娼館が一見さんお断りで、すぐにヤレる所じゃないと知っているから。ジローが女性を買ってまで手に入れる、ヤろうとすると思えないから 。ケチなのは知ってます。あと、彼のR18的に時間が足りないのでは、と考えてます。


娼館は煌びやかで遊女妓女が美女揃いなのは諸外国にも伝わっていて戯曲もあるくらい。悲恋ものだけど。アンナさんはミーハー。ジローの浮気の心配より、娼館そのものや妓女達の方が気になります。

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