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13.ワーカーホリック

「じゃあまずはどこから案内しよっかなーっ!」

「さ、アリナ、行こうぜ」

「ええ、そうね。ヒソラさん、ミカゲツさん、失礼します」


 食事を終え、アリナはヒソラとミカゲツに軽く頭を下げ、先に行ったキリカとカヨウを追いかけて慌てて食堂を出ていった。

 ミカゲツは、静かになったヒソラに目を向け、声をかける。


「キリカにはお見通しでしたね。ヒソラがアリナさんを敵視していたのは、アリナさんにキリカを取られたような感じがしていたからだって」

「え、ミカゲツ兄さん何言ってんだよ。俺はただあいつが怪しかったから...」

「まあヒソラにとってはキリカは唯一の下のきょうだいですから、分からなくはないですが」

「あれおかしいな、会話が噛み合ってないぞ?」

「こういう時は何て言うべきなんでしょうか...どんまい?」

「何かうぜえ!!」

「何はともあれ、言いたいことが言えて良かったですね、ヒソラ」


 ヒソラは首をぐるんぐるんと回しつつ、腕を組む。


「でもさ、何でレイシン兄さんはあんなにあっさりあいつを受け入れてたんだ?いつもなら怪しい奴には警戒心ばりばりなのに」

「レイシン兄さんは甘いんですよ」

「うぇえ、レイシン兄さんが甘いとか何の冗談だよ」

「いえ、本当にそうですよ。...危機感を持つ程度には」


 ミカゲツの最後の呟きは、小さ過ぎてヒソラには聞こえなかった。





 一方こちらは屋敷を案内されているアリナである。

 書庫や武器庫など、アリナも予想出来ていた場所を案内される内に、ふとあの場所のことを思い出した。

 

「ねえキリカ、カヨウ。あたし、中庭に行きたいんだけど、いい?」

「ええー?中庭?」

「あんな荒れ放題のとこにか?止めといた方がいいぜ?草はぼーぼー、虫もいっぱいだ」

「えっ?」


 アリナは驚く。中庭では、スイ(この世ならざる者?)から紅茶をご馳走になったが、決して荒れてなどいなかったからだ。むしろ、きちんと整えられていた記憶がある。


「...あたし、そこでスイと会ったのよ」

「スイ?...あ、さっきアリナが言ってた人?」

「中庭に出たのかそいつは!?やべえって、正にじゃねえか!!あんな荒れたとこに、知らない奴が...正にゆー...うわあっ、止めろーっ!!」

「...でも、スイは本当に人間だったと思うの。だってあたし、スイのいれた紅茶を飲んだもの。あれは本物よ」

「じゃあ、確かめる為にも中庭に行ってみよー!ほらカヨウお兄ちゃん行くよ!」

「うわあーっ!!死にたくない!逝きたくなーい!!」

「つべこべ言わないのー!」


 「やべえ、逃げようぜ、死ぬって、絶対触れちゃ駄目なやつだって!誰かこいつら何とかしろー」と喚くカヨウを引きずり、アリナとキリカは中庭へのドアの前にやって来た。


「いくよ、アリナ!覚悟は、いい!?」

「え、ええ」

「止めろ、キリカ、止めろーっ!」

「そりゃーっ!悪霊退散!!」


 バーン!!とダイナミックにドアを開け放った先には、


「...誰もいない、わね」

「わあ、変なの!この前見た時は大草原だったのに!」

「...綺麗になってやがる。どうなってんだ?」


 短い芝生が生えているばかりの地面を、アリナとキリカはずんずんと踏み出し、カヨウはおそるおそる歩みを進める。

 辺りを見回していたキリカは不意にぱんっと手を叩き、声を上げる。


「そっか、分かった!スイって人は、昔、庭師だったんだよ!荒れ放題の中庭が気掛かりで、化けて出たんだよ!!」

「そ、そうだったのか...霊となってまで、気にかけるなんざ...庭師っつー仕事が大好きだったんだな...」

「死んでなお仕事をせずにはいられない...立派な人だったんだね、カヨウお兄ちゃん達とは正反対だよ...」


 アリナは、やっぱりスイは生きている人間なのではないか、と思ったが、キリカとカヨウが何やら感動しているので賢明にも口には出さなかった。

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